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20. 再会②
しおりを挟む「ちょ、ちょっとウィル!」
「悪い、少しだけこうさせてくれ」
ウィルの肩口に顔を押し付けられ、真新しいシャツの向こうから嗅ぎ慣れたウィルの匂いを感じて……すごく安心する。何もかも目新しい環境の中で、あまつさえ人質だなどと言われて、知らないうちに張り詰めていた気持ちがゆっくり解けていくのが分かった。
腕の中で、ふとある考えが過ぎる。ウィルは昔からこういうボディータッチが多いし距離が近いと思っていたけど……もしかしてこれって魔力を増幅させて回復しているのか……?
「あのさ、ウィル。こういうハグってどういう意味でやってんの」
少しだけウィルの胸を押し返しながら尋ねる。
「意味って……嫌だったか?」
「嫌じゃないけどさ。何でだろうって」
「じゃあなんで急にそんなこと聞くんだよ」
珍しく、ウィルが慌てた様子で俺の顔を覗き込んできた。
「ちょ、顔近い……」
「わ、悪い」
「さっきフィリさん……あ、俺の教育係の人なんだけど、その人に言われたんだ。俺に特殊能力があるって」
ぎくりと肩を跳ねさせたウィルがあからさまに俺から目を逸らした。
「俺に触れたりすると魔力が増幅するって教えてもらった。お前、気付いてただろ?」
「あー、まあ……そうだな」
ウィルにしては珍しく随分歯切れが悪い。
「もしかして、最近そうなった? それともずっとそうだったの?」
「……最近ではないな。結構、ずっと前から」
「お前、昔から距離近いもんな。というか、何で黙ってたんだよ」
俺が能力に目覚めたのが最近で、伝える前にこうして攫われてしまったのか? と思いもしたけど、よく考えたらウィルのボディータッチが多いのは昔からだ。
「すまない……言いづらかったんだ。お前を利用してると思われたくなくて」
「そんなこと思うわけないだろ。言ってくれれば、もっとお前のために何かしてやれたかもしれないのに」
とは言っても、村で生活している中でウィルが魔力不足で困るようなことはほとんどなかったけれど。
「なあ、前からってことは魔力みたいに生まれつきなのかな?」
「生まれつきかどうかは知らないが、俺と出会った時にはもうこの能力はあったと思う」
「そんなに前から?」
「最初のうちは俺もよく分からなかった。お前といると元気が出る、くらいにしか思ってなかったんだ。俺自身が自分の魔力のことを理解しはじめてから、初めて魔力が増幅していることに気付いた」
ウィルの手の中から脱出して、うーんと考えるポーズをとる。
「お前ほどではないが、お前の兄貴からも同じ力を感じていた」
「兄さんも?」
「ああ。けどお前たち兄弟ふたり以外にこの能力を持ってる人間は知らない」
兄さんも、となるとやっぱり遺伝的な能力なんだろうか? 両親には力がないみたいだけど。一度兄さんにも話を聞いてみる必要がありそうだ。
「なあ、ルカ」
ウィルの指が俺の顔にかかった髪を耳に掛ける。あらわになった頬を親指で撫でながらウィルが言葉を続けた。
「お前のこの力は魔力を持った人間を惹きつける。強い魔力を持つ者ほど強く」
「うん、フィリさんにも同じようなこと言われたよ」
「王立騎士団には魔力の強い魔術師が大勢いる。本当に、本当に気をつけてほしい」
希うような顔を見せるウィルに向け、俺は大きく頷いた。
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