37 / 100
第2章 夢からさめても
2-13.攻略の開始 ダイダロス・タイター
しおりを挟む
「おい、どうした? 聞いてるか? おい!?」
ダイダロスを現実に戻したのは店長の声だった。
「何でもない、ちょっとボーっとしていただけだ」
「そうか、ならいいけどよ。それよりも本当にいいのか? この情報をこっちのもんにしちまっても」
「いいって言ったろ」
もはやダイダロスの興味はそんなものにはなかった。
あるのは目の前の”祝福者”宛に送られたメールのリスト。
これは過去へは持って行けない、記憶の中に持って行かなければ。
リストを何度も見て、その全てを記憶した所でダイダロスは出口に向かう。
「ダイダロス、いい情報をあんがとよ。また儲かるネタを仕入れたら頼むぜ」
「ああ、あんたがその情報で大金持ちになることを祈っているぜ」
そんなことはありえないけどな。
心の中でそう投げかけ、ダイダロスは初の『タイムリープ』に挑む。
戻りたいと思うのは昨日の晩の留置所の中。
無論、発動しない。
よし、リミッターは正常に作動しているようだな。
ひと呼吸おいて、ダイダロスは今度こそ初の『タイムリープ』に挑んだ。
今朝、留置所の前でティターニアと会った時へ。
◇◇◇◇
フワッと身体が浮かぶような感覚が起こり、朝の空気が鼻腔を満たす。
遠くからコーン、コーンと8時を告げる鐘の音が聞こえた。
「兄さん!」
留置所の前、妹のティターニアの出迎えの時にダイダロスは降り立つ。
「やあ、ティア。気持ちのいい朝だな」
「バカなこと言わないで、とっても心配したのよ」
「その心配なら、もう必要ないぜ」
「心配もするわよ。あれからふたつ、ほら今もひとつ誰かが願いを叶えたわ。キングのような変な願いじゃないといいけど」
ティアが左手の甲を見せる。
その数字は12。
ダイダロスの記憶からひとつ減っているのは彼自身が”祝福”を消費したから。
「心配いらねぇよ。お前は必ず願いを叶えられるようになる。他の”祝福者”に後出しで消されることもなくな」
「それってあたしが最後のひとりになるってこと?」
「ああ、俺がそうさせてみせるさ。まかせとけ」
ダイダロスはそう言うとティターニアに手を振って駅への道を歩き出した。
「ちょっと、どこいくの?」
「ちょっとな。お前は何も心配せずに家でビデオでも見てな。いいか、絶対に”祝福”は使うなよ」
「言われなくても使わないわよ」
その返事にダイダロスは満足すると、再び足を進める。
「兄さん」
「なんだ?」
「無茶しないでね」
「わかってるさ。俺だって自分の命が可愛い」
俺がするのは無理なことだがな。
心の中でそう呟いて、ダイダロスは進む。
彼の第1の攻略目標へと。
ローマに住む”祝福者”の下へと。
ダイダロスを現実に戻したのは店長の声だった。
「何でもない、ちょっとボーっとしていただけだ」
「そうか、ならいいけどよ。それよりも本当にいいのか? この情報をこっちのもんにしちまっても」
「いいって言ったろ」
もはやダイダロスの興味はそんなものにはなかった。
あるのは目の前の”祝福者”宛に送られたメールのリスト。
これは過去へは持って行けない、記憶の中に持って行かなければ。
リストを何度も見て、その全てを記憶した所でダイダロスは出口に向かう。
「ダイダロス、いい情報をあんがとよ。また儲かるネタを仕入れたら頼むぜ」
「ああ、あんたがその情報で大金持ちになることを祈っているぜ」
そんなことはありえないけどな。
心の中でそう投げかけ、ダイダロスは初の『タイムリープ』に挑む。
戻りたいと思うのは昨日の晩の留置所の中。
無論、発動しない。
よし、リミッターは正常に作動しているようだな。
ひと呼吸おいて、ダイダロスは今度こそ初の『タイムリープ』に挑んだ。
今朝、留置所の前でティターニアと会った時へ。
◇◇◇◇
フワッと身体が浮かぶような感覚が起こり、朝の空気が鼻腔を満たす。
遠くからコーン、コーンと8時を告げる鐘の音が聞こえた。
「兄さん!」
留置所の前、妹のティターニアの出迎えの時にダイダロスは降り立つ。
「やあ、ティア。気持ちのいい朝だな」
「バカなこと言わないで、とっても心配したのよ」
「その心配なら、もう必要ないぜ」
「心配もするわよ。あれからふたつ、ほら今もひとつ誰かが願いを叶えたわ。キングのような変な願いじゃないといいけど」
ティアが左手の甲を見せる。
その数字は12。
ダイダロスの記憶からひとつ減っているのは彼自身が”祝福”を消費したから。
「心配いらねぇよ。お前は必ず願いを叶えられるようになる。他の”祝福者”に後出しで消されることもなくな」
「それってあたしが最後のひとりになるってこと?」
「ああ、俺がそうさせてみせるさ。まかせとけ」
ダイダロスはそう言うとティターニアに手を振って駅への道を歩き出した。
「ちょっと、どこいくの?」
「ちょっとな。お前は何も心配せずに家でビデオでも見てな。いいか、絶対に”祝福”は使うなよ」
「言われなくても使わないわよ」
その返事にダイダロスは満足すると、再び足を進める。
「兄さん」
「なんだ?」
「無茶しないでね」
「わかってるさ。俺だって自分の命が可愛い」
俺がするのは無理なことだがな。
心の中でそう呟いて、ダイダロスは進む。
彼の第1の攻略目標へと。
ローマに住む”祝福者”の下へと。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
『量子の檻 -永遠の観測者-』
葉羽
ミステリー
【あらすじ】 天才高校生の神藤葉羽は、ある日、量子物理学者・霧島誠一教授の不可解な死亡事件に巻き込まれる。完全密室で発見された教授の遺体。そして、研究所に残された謎めいた研究ノート。
幼なじみの望月彩由美とともに真相を追う葉羽だが、事態は予想外の展開を見せ始める。二人の体に浮かび上がる不思議な模様。そして、現実世界に重なる別次元の存在。
やがて明らかになる衝撃的な真実―霧島教授の研究は、人類の存在を脅かす異次元生命体から世界を守るための「量子の檻」プロジェクトだった。
教授の死は自作自演。それは、次世代の守護者を選出するための壮大な実験だったのだ。
葉羽と彩由美は、互いへの想いと強い絆によって、人類と異次元存在の境界を守る「永遠の観測者」として選ばれる。二人の純粋な感情が、最強の量子バリアとなったのだ。
現代物理学の限界に挑戦する本格ミステリーでありながら、壮大なSFファンタジー、そしてピュアな青春ラブストーリーの要素も併せ持つ。「観測」と「愛」をテーマに、科学と感情の境界を探る新しい形の本格推理小説。
闘争魔法少女~魔法少女達のデスゲーム~
東風谷 六花
ミステリー
魔法少女たちがデスゲームをするお話。
それぞれ違う能力を持っているが、自分以外の能力はわからない。
自分達のなかに、運営側の魔法少女が1人紛れ込んでいる。
果たして誰が運営側なのか。
人狼ゲームみたいなやつです。
ざっくり登場人物紹介
晴樹美玖
真面目な優等生。赤色。眼鏡。
風見綾音
お嬢様。大食い。おっとり。オレンジ。
雷田日菜
陽キャ。黄色。元気早起き。
霧矢渚
冷静。緑。ジト目。
雲城湊
青。かっこいい。男装。僕っ娘。
稲田雪月
おっちょこちょい。藍色。
時雨小夜
紫。アニメ、ゲーム好き。おとなしい。
月虹愛
白色。器用。どちらかといえばおっとり。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる