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第2章 夢からさめても
2-2.勧誘の席 エゴルト・エボルト
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世界中から愛されるキングが生まれ、前代未聞のパレードの中、太古から復活した恐竜が人々を襲う。
そんな体験をしたと思ったら、いつもの日常の中で目を覚ます。
夢だと思う者が大半だろう。
だが、”祝福者”であり、エボルトテック社のCEOであるエゴルト・エボルトはそれが夢ではないことをすぐに理解した。
神に選ばれ、”祝福”を宿し、勝ち残る策を練り、最後は恐竜に襲われる人々を上階のオフィスから見下ろす夢。
彼が見たのはそんな夢だ。
荒唐無稽で全く論理的でない。
普通の人物なら一蹴に伏す所だが、彼は違った。
目覚めてすぐに彼は検証を行った。
左手の聖痕を確認し、夢の中のニュースや入国管理から割り出した”祝福者”のリストを夢の記憶から書き出す。
エボルトテック社は総合型IT企業である。
官公庁へのシステム構築から商店の決済サービス、世界的なSNSサービスまで幅広く手掛けている。
彼の会社のサービスを利用したことがない人類はアマゾンの奥地くらいにしか生息していないだろう。
CEO権限でエボルトテック社の各種サービスから、彼は照会する。
夢の記憶から書き出した人物は本当に存在するのかを。
やはり、実在の人物だったか。ならば、あれは夢ではない。誰かが夢にしたのだ。”祝福”で。
目覚めてから数時間後、エゴルトはその結論に至った。
ならば、彼の次の行動は決まっていた。
夢の中の計画を継続するのだ。
リストの人物で連絡可能と判明した者にメールを送り、エゴルトは秘書のレイニィに電話をかける。
優秀な秘書はワンコールで出た。
『CEO,何か御用でしょうか?』
「おはよう。体調はどうだい?」
『夢見が悪かったこと以外は問題ありません』
「そうか、ならオフィスに来てくれ。君だけの仕事を頼みたい」
設立からわずか20年程度で、ただのソフト会社を世界有数のIT企業にのし上げることは、清廉潔白では成し得ない。
君だけの仕事は彼が彼女に非合法な仕事を頼む時の隠語だ。
『かしこまりました。先ほど送られてきたリストがそうですか?』
「察しがよくて助かる。だが実行は僕の合図でだ」
『わかりました。いつでもできるよう準備致します』
「ああ、いつもどおり綺麗に頼むよ。君は僕の特別な存在だからね」
エゴルトはそう言って通話を切ると、引き続き”祝福者”の割り出しに取り掛かった。
夢で一度やったことだ、なんということはない。
そう思いながらタスクをこなしていくと、レイニィから着信が入った。
『CEO、来客です。アポなしの』
アポなしの来客など普通は通さない。
エゴルトに連絡などせずに追い返すのが本筋だ。
「僕に連絡してくるということは、何か理由があるのだね」
『はい、来た人物はリストに載っている人物です』
もう来たのか、早いな。
普通なら少しは警戒するだろうに。
そう思いながらエゴルトは秘書に尋ねる。
「来た者の名は?」
『クリストファー・グッドマンと名乗っています』
なるほど、早いはずだ。
グッドマンはエゴルトが作成したリストの中で最も価値のない人物だ。
だが、だからこそ価値がある。
利用価値が。
「通してくれ」
『いいのですか? 彼は少し興奮状態にあるように見えますが』
「いいさ。彼はハズレだが……」
そう言ってエゴルトは表では決して見せない嗤いを浮かべる。
「いい手駒になる」
その声にレイニィは『かしこまりました』と冷静に応えた。
そんな体験をしたと思ったら、いつもの日常の中で目を覚ます。
夢だと思う者が大半だろう。
だが、”祝福者”であり、エボルトテック社のCEOであるエゴルト・エボルトはそれが夢ではないことをすぐに理解した。
神に選ばれ、”祝福”を宿し、勝ち残る策を練り、最後は恐竜に襲われる人々を上階のオフィスから見下ろす夢。
彼が見たのはそんな夢だ。
荒唐無稽で全く論理的でない。
普通の人物なら一蹴に伏す所だが、彼は違った。
目覚めてすぐに彼は検証を行った。
左手の聖痕を確認し、夢の中のニュースや入国管理から割り出した”祝福者”のリストを夢の記憶から書き出す。
エボルトテック社は総合型IT企業である。
官公庁へのシステム構築から商店の決済サービス、世界的なSNSサービスまで幅広く手掛けている。
彼の会社のサービスを利用したことがない人類はアマゾンの奥地くらいにしか生息していないだろう。
CEO権限でエボルトテック社の各種サービスから、彼は照会する。
夢の記憶から書き出した人物は本当に存在するのかを。
やはり、実在の人物だったか。ならば、あれは夢ではない。誰かが夢にしたのだ。”祝福”で。
目覚めてから数時間後、エゴルトはその結論に至った。
ならば、彼の次の行動は決まっていた。
夢の中の計画を継続するのだ。
リストの人物で連絡可能と判明した者にメールを送り、エゴルトは秘書のレイニィに電話をかける。
優秀な秘書はワンコールで出た。
『CEO,何か御用でしょうか?』
「おはよう。体調はどうだい?」
『夢見が悪かったこと以外は問題ありません』
「そうか、ならオフィスに来てくれ。君だけの仕事を頼みたい」
設立からわずか20年程度で、ただのソフト会社を世界有数のIT企業にのし上げることは、清廉潔白では成し得ない。
君だけの仕事は彼が彼女に非合法な仕事を頼む時の隠語だ。
『かしこまりました。先ほど送られてきたリストがそうですか?』
「察しがよくて助かる。だが実行は僕の合図でだ」
『わかりました。いつでもできるよう準備致します』
「ああ、いつもどおり綺麗に頼むよ。君は僕の特別な存在だからね」
エゴルトはそう言って通話を切ると、引き続き”祝福者”の割り出しに取り掛かった。
夢で一度やったことだ、なんということはない。
そう思いながらタスクをこなしていくと、レイニィから着信が入った。
『CEO、来客です。アポなしの』
アポなしの来客など普通は通さない。
エゴルトに連絡などせずに追い返すのが本筋だ。
「僕に連絡してくるということは、何か理由があるのだね」
『はい、来た人物はリストに載っている人物です』
もう来たのか、早いな。
普通なら少しは警戒するだろうに。
そう思いながらエゴルトは秘書に尋ねる。
「来た者の名は?」
『クリストファー・グッドマンと名乗っています』
なるほど、早いはずだ。
グッドマンはエゴルトが作成したリストの中で最も価値のない人物だ。
だが、だからこそ価値がある。
利用価値が。
「通してくれ」
『いいのですか? 彼は少し興奮状態にあるように見えますが』
「いいさ。彼はハズレだが……」
そう言ってエゴルトは表では決して見せない嗤いを浮かべる。
「いい手駒になる」
その声にレイニィは『かしこまりました』と冷静に応えた。
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