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第10章 氷河期とデフレ
その2 牛をめぐる冒険
しおりを挟むさて、牛丼戦争編じゃ!
戦争のきっかけは2000年7月に神戸ランプ亭が牛丼を400円を290円に値下げした事からはじまったのじゃ。
その後、松屋が390円から290円に期間限定で値下げしたのじゃが……
じゃが?
期間限定なんてウソ! ずっと値下げしまーす!
うわっ! ナチスがポーランド侵攻した後と同じパターン……
これに他社は動揺した。
『あんな値段ではやってけない、いずれキャンペーンは止めるさ』
そう思っていたのじゃからな。
折しも不良債権問題でリストラや氷河期が発生していて、不況が広がっていた時と一致するわね。
そうじゃ、作者も含め、松屋に助けられた人は多い。
こうして、松屋がシェアを伸ばすして行くかと思われたが……
戦争が……始まったのね……
うむ、翌2001年3月にはすき家が400円→280円に値下げし、吉野家も4月には期間限定で400円から250円のセールを実施した。
吉野家は期間限定が終了したら客足が離れたので、8月には常時280円にになったぞい。
第一次牛丼戦争の勃発じゃ!
そして、どの会社も値下げによりシェアを奪う機会を虎視眈々と狙う状況が続き、戦線は膠着した。
2003年には牛丼価格は280円近辺で固定されたのじゃ。
そこに大問題が起きる。
2003年末の米国産牛肉のBSE問題じゃ。
牛さんの頭がスポンジになっちゃう病気ね。
ヒトへの経口感染の可能性が示唆されているのよね。
うむ、今は特定危険部位でなければ大丈夫じゃろうと言われておるが、当時は感染源と感染経路が不明な部分が多かったのじゃ。
(今も諸説あります)
これで日本政府が米国産牛肉の輸入規制を実施した。
各社が米国産牛肉が入手できなくなり、2004年2月には各社で牛丼の販売が中止になる。
その間しばらくは豚丼になったぞい。
大体、半年くらいは豚丼だけだった記憶がある。
豚丼は300円前後くらいじゃったぞい。
その後、各社は豪州産牛肉に切り替え、秋ごろには販売が再開された。
じゃが、すき家が350円、松屋が390円と値上げしての復活じゃ。
唯一、吉野家だけが米国産にこだわり、牛丼は復活せず豚丼とカレー丼で勝負を仕掛けておった。
『米国産じゃなければ吉野家の味は出せない』と言っておったのじゃ。
へー、こだわりがあったのね。
その精神は立派じゃが、消費者にとってはそうじゃなかったのじゃ。
『正直、味の差はあると思うが、どっちも五十歩百歩で好みの問題。高い金を出して食べたいほどの味じゃない』
そんな意見が大半じゃったのじゃ。
結局、吉野家は長期化しているBSE問題とシェア低下に耐えられず、2006年に豪州産で牛丼を380円で再開しておる。
第一次牛丼対戦はこれにて集結した。
結果は吉野家の一人負けじゃな。
シェアを大幅に減らす事になった。
個人的にカレー丼は好きだった。
値下げ合戦は終わったのね。
うーん、実際はそうでもない。
その間も豚丼の期間限定300円フェアとかが起きておってな、値段が変動しておったのじゃ。
『牛丼戦争』は『牛丼・豚丼・カレー戦争』となり小競り合い状態になっておったのじゃ。
じゃが、2008年には日本の景気が回復してきた事もあって牛丼は300円台後半くらいになっておったぞい。
2008年……景気……
さすがユキちゃんは記憶力が良いの。
そう! 2008年9月のリーマンショックで再び景気が悪化する!
客の財布の紐が堅くなり、高い値段では買ってくれなくなった!
さあ! 第二次牛丼戦争の始まりじゃ!!
2009年4月にすき家が口火を切り、牛丼を350円から330円に値下げしたぞい。
他社はしばらくは追従できず、すき家が店舗数とシェアを伸ばした。
でも、このまますき家の独走で終わるはずないよね。
うむ、約8か月後の2009年12月に松屋が320円に値下げした。
10円安い! こっちにしよっ!
この頃の作者はとても貧乏で……
いや、日本の景気が悪く消費者は値段の安い方に飛びついたのじゃ。
さあ! 戦争の再開じゃ!
間髪入れず、同12月にすき家が280円に値下げ!
翌2010年1月には吉野家も期間限定300円セールを実施!
吉野家の期間限定セールが終われば松屋の期間限定セールが始まる。
そんな様相で、各社が期間限定セールを隔月で実施する大合戦となったのじゃ。
今月は松屋が安い、来月はすき家が安い、今日は吉野家。
うひょー、いつも300円以下で牛丼が買えるぞー
この『第二次牛丼戦争』が2012年まで続いた。
そして、みんな疲れた……
「なあ、もう止めにしね?」
「おう、券売機の値段変更も辛いしな」
「こっちなんかレジだぜ、バイトが価格を覚える負担も大きい」
そして2013年に牛丼価格は各社280円で落ち着いたように見えた。
だが、その中でも虎視眈々とライバルを出し抜こうとしている者がおったのじゃ。
そんな時、2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられた。
さて、牛丼の価格はどうなったと思う?
そりゃ値上げするんじゃない。
普通に考えればそうじゃ。
実際に吉野家は280円→300円、松屋は280円→290円になったのじゃ。
(税込み)
計算上は288円になるはずだから、妥当と言えば妥当かな。
吉野家はちょっと便乗値上げしているわね。
そうじゃ、じゃがすき家は……
何と! 280円→270円に値下げしおったー!!
うわーい、牛丼が安くなったぞー
「これで勝つる!!」
この計画を立てた時、ゼンショーの経営者はそう思っておったじゃろう。
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