1976年生まれ、氷河期世代の愚痴

第４章 氷河期とバブル誕生

その４ インチキブースト！

インチキブースト？

うむ、それが『特金』と呼ばれる『特定金銭信託』じゃ

なにそれ？

まあ、簡単に言うと、証券会社がグループの投資信託銀行を窓口にして、株などへの投資を勧誘する金融商品じゃ。

あなたのお金を１年間、我が社に任せて、株に投資しませんか？
銘柄の選定は私にお任せ下さい。
１年後、預かったお金と利益から手数料を引いてあなたにお返しします。儲かりまっせ！

こんな商品じゃ

へー、便利そうね。　

じゃが、その中に問題がある裏商品がある。
いわゆる「営業特金」と言われる物で、「にぎり」と呼ばれる物じゃ。

へいお待ち！

マグロおいしい！

寿司ではない！　事前に利回り保証を付けて、株投資へ加入することじゃ。
約束の握手の「にぎり」じゃな。

あなたのお金を、我が社に任せて、株に投資しませんか？
リスク？　
いやいや、そんなんありませんよ！
何と今なら８％の利回り保証付きですよ！

えっ、利回り保証付きの金融投資商品って……違法なんじゃ……

無論、当時でも違法じゃ！

ちなみに、「にぎり」の相場は８～１０％とも言われておる。
これが横行しておったのじゃ。

さらに、当時の営業特金には脱法商品もあってな。
それが「損失補填」じゃ！

裏商品の脱法商品ってひどい響きね。

うむ、「損失補填」はこんな商品じゃな

あなたのお金を、我が社に任せて、株に投資しませんか？
今なら８％利回り保証……

えっそれは違法ではないかって？
いやーお客さんお詳しい。
だから、８％の利回りは保証しません！
その代わり、目標の利回り８％に届かなかった場合は、”事後”で「損失補填」致します。

「事後の損失補填」は違法ではないですからねぇ（ゲス顔）

本質は同じじゃん！

そうじゃ当時の証券取引法には「事前の損失補填や利益保証禁止」の記述はあるが、
「事後の禁止」はなかったので、その法の抜け穴を突いた形じゃな。
無論、1991年にこの「事後の損失補填」も違法になっておる。
※罰則付きの改正証取法は1992年1月施行

それまで政府は見逃してたの？

うむ、この営業特金の事は大蔵省（今の財務省）との暗黙の了解の下で行われておったとも言われておる。
まあ、８７～８９年がピークじゃな

なんで！？　少なくとも「にぎり」は当時でも違法じゃなかったの？

じゃが、株価はその「にぎり」のおかげで値上がりしてたんじゃ。
1987年10月のブラックマンデーで世界恐慌に陥るのを防ぐために必要悪と見られておった可能性が高い。

うわー、モラルより経済なんだ……

ユキちゃんそれじゃ！

えっ！？

その「モラルより経済」はこの章で重要な位置にあるのでな、覚えておくといいぞ。

へー