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第二王子の嫉妬心

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 この3年、私は私の可愛らしい婚約者に少々不満を覚えていた。

「これからはエミィとも中々会えなくなるね。寂しいな」
「私も……寂しいです」
 惜別の思いでエミィを抱きしめながら告げると、彼女は顔を赤らめながらも頷いてくれる。

 勿論、彼女の事が好きだ。だからこそこんな風に婚約者としてのスキンシップは欠かしたことがない。
 こうやって抱きしめれば頬をバラ色に染めて照れてはくれる。頬や額に口づけを落とすと照れからか体を強張らせるとこも愛らしい。
 けれど、それだけだ。
 何かをねだられた事はないし、いつも一歩下がって隣にいる。
 彼女はずっと「照れ屋で控えめな婚約者」で、私はできる事ならそこから一歩踏み出したかった。

「エミィが入学するまではあと2年か。私もそれに合わせて通えればいいのに」
「まぁ、リチャード様ったら」
 それに何より。
「フィル兄様も同じような事を言ってましたわ」
 ほら、まただ。私が何かした際に何かとフィリップを引き合いに出してくる。
 そんな状態が続けば、もしや兄と同じようにしか見られていないのではと、不安にもなりもする。
「フィリップが?」
「私が2年早く学園に通えるようにならないかって」
「それは先を越されてしまったな」
 でも実際に言動が重っているのだと聞かされれば、思わず苦笑してしまうのも仕方のない事だろう。

 まだ13歳だ。その年齢を思えば、彼女にとっては婚約者である私も兄のような存在なのかもしれない。
 けれど、私はエミィの事を一人の女性として愛していたし、できるなら彼女にもそう思ってほしい。
 それゆえの不満だった。

 その上、今日から私は学園に通う事になっていて、エミィと過ごせる時間は今までより大幅に少なくなる。
 だから今日は少しだけ、ほんの少しでも良いからエミィに男として意識して貰おうと必死だった。
 そのためには兄とは違うところを見せなくてはならないだろう。

「じゃあ、行ってくるよ。エミィ」
 抱きしめてそっと頬に口付けを落とす。ここまでならいつもと同じ。
 だから少しだけ先に進もうと、そっとエミィの唇に指先で触れる。
「ね、エミィ。ここに口付けても?」
「え、えっと……それは……」
 エミィは顔を赤くしてあたふたした後、うつむいたまま固まってしまった。
 この雰囲気ならば、単純に驚いただけで拒絶の意思はなさそうだ。
「嫌かな? しばらく会えなくなるんだし……エミィとの思い出を増やしておこうと思ったんだけど」
 だから少しだけ強引に行くことにした。
 逃げ道を塞ぐような台詞を吐くと、エミィは照れたような困ったような表情でこちらを見上げてくる
「嫌じゃない……です」
「よかった。じゃあほら、目を閉じて」
 カチコチに固まりながらも小さくうなずいて、ゆっくりと目を閉じるエミィは愛らしい。
 エミィが完全に目を閉じたのを見計らうと、そっと唇を触れ合わせる。

 一瞬触れて離れるだけのそれではあったけれど、エミィは顔を真っ赤にして恥じらっている。
 想像以上に可愛らしい反応に思わず口元が緩んでしまう。

 固まってしまったエミィの髪をそっと撫でながら告げる。
「好きだよエミィ。誰よりもね」
 心からの告白をしながら、私のこの想いがきちんと伝わるように祈った。
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