あっぱれ!我が青春!

九重ネズ

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初めての喧嘩、初めての嫉妬、そして…(ユウシside)

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 …な、なんてこった…。
 どうして俺、ここでタピオカミルクティーを飲んでるんだ?しかも、すっごく背が高くてガタイのいい、サングラスマスクの男性の奢りで…。

 というか、この男誰だよ!見るからにミヤビとは肌質も雰囲気も違うし!なんか怖いし!ミヤビの隣で、のうのうとタピオカミルクティー飲んでるなよ!

 どんどんイライラが募っていった俺は、八つ当たりするように、ミヤビに隣の男の事を訊いた。

「…ミヤビ…この男誰だよ…」
「は?それよりも、お前、俺に言うことあるだろ!?」
「はぁ!?」

 な、何なんだよ!ミヤビも何か俺に怒ってるし!本当に怒りたいのは俺!
 お揃いのサングラスとマスクして、本当は浮気してんだろ、ミヤビ!

「ミヤビに言うことは全くないね!この隣の男とお揃いサングラスとマスクして、2週間しか経ってないのに、もう浮気ですか!へーへー!そうですか、そうなんですねー!」
「はあぁ!?そっちこそ、タピオカ専門店でお客さんの女子たちにデレデレして!本当はノンケなんだろ!?へーへー!じゃあ俺に告白したのは、俺が女子に見えたってことか!?うーわ、ありえねぇ!俺は男じゃボケェ!」
「はああぁ!?」

 お互いの怒りがヒートアップし、俺たちは席から立ち上がって、喧嘩をし始めた。
 しかし、それを止めたのは、あのサングラスマスクの男だった。

「わああああ!ストップストップ!ごめん、ミヤ!ユウシくん!俺が悪かったっ!だから、喧嘩はやめてくれぇ。俺たち注目されてるから!」
「はぁ!?」
「に、兄ちゃん…」
「へ!?!?」

 突然、ミヤビの口から『兄ちゃん』という言葉が出て、俺は目を大きく見開きながら、そのサングラスマスクの男性を見る。
 すると、彼は「ごめんごめん、外すよ」と言いながら、サングラスとマスクを外し、ミヤビと同じ目元を俺に晒した。

「初めまして、ユウシくん。俺は雅の兄で、磯村脩と言います。俺は父似で、雅は母似だから、殆ど似てないって言われるんだ。でも目元だけは俺も雅も父似でね。…ユウシくん。嫉妬させちゃって、ごめんな?」
「あ、いえ…。お、俺も苛立ってこんな事言って、すみません…。そして、俺が嫉妬を…」

 脩さんに言われた事が、頭の中にジワジワと入っていき、心臓がドクドクと心地よく跳ねていく。
 今までやった事すらなかった、初めての嫉妬。その事が何だか嬉しくて、俺は口角を上げてハハッと笑った。

「そうか…。俺、嫉妬してたんだ…。ねぇ、ミヤビ!俺、嫉妬してた!脩さんに嫉妬してた!うわーい!!」
「はあぁ!?な、なに兄ちゃんに嫉妬してんだよ!血の繋がった兄弟だぞ!?あ、あと、お前が女子にデレデレしてたのは、どう落とし前つけるんだよ!」
「え!?み、ミヤ…。言っておくが、ユウシくんはあの時、終始青ざめてたんだぞ?見てなかったのか?」
「ふぁっ!?ま、マジ!?」

 あ。今度は、ミヤビが目を丸くして俺と脩さんを交互に見てる。まさか、気付いてなかったのかなぁ。
 俺は眉根を軽く寄せて、うんうん頷いたあと、ミヤビにこう話した。

「そうそう。脩さんのおっしゃる通りだよ、ミヤビ。俺、ああいう女子すごく苦手だし、好きな子には最初からポジティブに絡みたいタイプだから」
「そ、そっか…そうなんだ…」
「うん。…もしや、ミヤビも女の子たちに嫉妬した?」
「ふえっ!?」

 えっえええええええ!?こ、今度は、ミヤビの顔がゆでダコのように真っ赤になった!め、めっちゃくちゃかわいい!!
 うわヤバい!ミヤビも嫉妬してた!!超嬉しい!!やったー!!

 つい俺は嬉しさのあまり、ミヤビの側にきて、彼を強く抱きしめる。
 そして、慌てて身体が震えているミヤビを全身で感じながら、彼の耳元でこう囁いた。

「ミヤビ、嫉妬してくれてありがとう。世界一、大好きだよ」
「お!お、おれもぉ…!ユウシ、嫉妬してくれてっ、ありがとう…!大好きっ」

 こうして俺とミヤビは、ニコニコ顔をした脩さんに見られながら、お互いに抱きしめ合って愛を確かめたのであった。

 ああ、これも素晴らしき人生!喧嘩も嫉妬も仲直りも、これぞ青春!あっぱれだ!!

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