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夜会に向けた贈り物 3
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リュドウィックの手紙が届いてから、約一週間後の朝。
エンブレスト伯爵家に、二着のドレスが届いた。
そのうち一着は、明らかにリュドウィックがロザリア宛に贈ったもので、箱に入っていたそれは、紺色のドレスに『銀の繭』で作られたピンクのレースがふんだんにあしらわれていた。
「とても美しいドレスですね。ロザリア様は気に入ってくれるでしょうか?」
箱の中のドレスをチラリと見たエマは、その箱をロザリアの部屋に運びながら、思わず感嘆の息を漏らす。
そんな彼女を見たアンディは、笑みを深めながら、エマの背中を軽く撫でた。
「大丈夫。きっと喜んでくれるよ。最近、ロザリア様はリュドウィック殿下に、気があるようだから」
「えっ!?そ、そうなんですか!?」
「うん。でも、絶対内緒だからね。あくまで今は表面上『男嫌いのロザリア様』の侍女として振舞ってあげて。じゃないと、リュドウィック殿下の努力が水の泡になるから」
アンディは右手の人差し指を唇当てて微笑んでから、ロザリアの部屋の前に立つ。
そして、扉を二回叩いてから、部屋の中に入った。
「ロザリア様、おはようございます。朝ですから、起きて下さい。夜会用のドレスが届きましたよ」
「!?えっえっ、うえええええ!?」
いきなりやってきたアンディの口から出た『夜会用のドレス』に反応したロザリアは、思いっきりベッドから飛び起きて、肩を上下に激しく揺らした。
「…ロザリア様、おはようございます。僕の言葉で一発で起きるとは、優秀ですね」
「えっえっ!?い、いいいい今『夜会用のドレス』って言ったわよね!?そこだけハッキリ聞こえて、つい飛び起きちゃったのだけど…」
「?そうなんですか?普段は一回声を掛けても起きないロザリア様が、そのワードで起きるとは…」
アンディは首を傾げながら、ロザリアの元へと歩いていく。
そして、アンディの後ろをついてきたエマが持ってきた箱を見て、ロザリアは口をぽかんと開けた。
「…アンディ。それって、ドレスよね?もしや、リュドウィック殿下からの、かしら?」
「はい。ごもっともでございます。中身を確認されますか?」
「え、えぇ。女たらしのバカアホ殿下であっても、きっとセンスはいいと思うわ。み、見せて頂戴?」
ロザリアは腕を組んでそっぽを向いたまま、アンディとエマに指図する。
そして、エマが箱を開けてドレスを見せると、ロザリアは顔をそれに向けて驚きの表情を見せた。
「えっ!な、何これ…!とっっても綺麗じゃない!レースがピンク色なのに七色に輝いてるわ!これは『銀の繭』ね、アンディ!!」
「ええ。そうでございます、ロザリア様。気に入りましたか?」
「ええ、もちろん!って…ふ、フン!べ、別に着てやってもいいわ、このドレス。せっかく、あのバカアホ殿下がわざわざ贈ったものだもの。き、着てやるわっ!」
「あ、あはは…」
素直に喜んだのも束の間、すぐにそっぽを向き直したロザリアに、アンディは苦笑いを浮かべる。
しかし、そのやり取りを見ていたエマは、ふと何かを思い出したのだろう、首を傾げながらアンディにこう問いかけた。
「あら?そういえば、ここに持ってきたドレスはこの一着でしたが、もう一着応接間にありましたよね?あれは、ロザリア様のものでしょうか?もしくは…アナベルのでしょうか?」
エンブレスト伯爵家に、二着のドレスが届いた。
そのうち一着は、明らかにリュドウィックがロザリア宛に贈ったもので、箱に入っていたそれは、紺色のドレスに『銀の繭』で作られたピンクのレースがふんだんにあしらわれていた。
「とても美しいドレスですね。ロザリア様は気に入ってくれるでしょうか?」
箱の中のドレスをチラリと見たエマは、その箱をロザリアの部屋に運びながら、思わず感嘆の息を漏らす。
そんな彼女を見たアンディは、笑みを深めながら、エマの背中を軽く撫でた。
「大丈夫。きっと喜んでくれるよ。最近、ロザリア様はリュドウィック殿下に、気があるようだから」
「えっ!?そ、そうなんですか!?」
「うん。でも、絶対内緒だからね。あくまで今は表面上『男嫌いのロザリア様』の侍女として振舞ってあげて。じゃないと、リュドウィック殿下の努力が水の泡になるから」
アンディは右手の人差し指を唇当てて微笑んでから、ロザリアの部屋の前に立つ。
そして、扉を二回叩いてから、部屋の中に入った。
「ロザリア様、おはようございます。朝ですから、起きて下さい。夜会用のドレスが届きましたよ」
「!?えっえっ、うえええええ!?」
いきなりやってきたアンディの口から出た『夜会用のドレス』に反応したロザリアは、思いっきりベッドから飛び起きて、肩を上下に激しく揺らした。
「…ロザリア様、おはようございます。僕の言葉で一発で起きるとは、優秀ですね」
「えっえっ!?い、いいいい今『夜会用のドレス』って言ったわよね!?そこだけハッキリ聞こえて、つい飛び起きちゃったのだけど…」
「?そうなんですか?普段は一回声を掛けても起きないロザリア様が、そのワードで起きるとは…」
アンディは首を傾げながら、ロザリアの元へと歩いていく。
そして、アンディの後ろをついてきたエマが持ってきた箱を見て、ロザリアは口をぽかんと開けた。
「…アンディ。それって、ドレスよね?もしや、リュドウィック殿下からの、かしら?」
「はい。ごもっともでございます。中身を確認されますか?」
「え、えぇ。女たらしのバカアホ殿下であっても、きっとセンスはいいと思うわ。み、見せて頂戴?」
ロザリアは腕を組んでそっぽを向いたまま、アンディとエマに指図する。
そして、エマが箱を開けてドレスを見せると、ロザリアは顔をそれに向けて驚きの表情を見せた。
「えっ!な、何これ…!とっっても綺麗じゃない!レースがピンク色なのに七色に輝いてるわ!これは『銀の繭』ね、アンディ!!」
「ええ。そうでございます、ロザリア様。気に入りましたか?」
「ええ、もちろん!って…ふ、フン!べ、別に着てやってもいいわ、このドレス。せっかく、あのバカアホ殿下がわざわざ贈ったものだもの。き、着てやるわっ!」
「あ、あはは…」
素直に喜んだのも束の間、すぐにそっぽを向き直したロザリアに、アンディは苦笑いを浮かべる。
しかし、そのやり取りを見ていたエマは、ふと何かを思い出したのだろう、首を傾げながらアンディにこう問いかけた。
「あら?そういえば、ここに持ってきたドレスはこの一着でしたが、もう一着応接間にありましたよね?あれは、ロザリア様のものでしょうか?もしくは…アナベルのでしょうか?」
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デート回、オズワルド様がめちゃくちゃ楽しいです(笑)
読みやすくお話のノリもよくキャラもコミカルな所とシリアスなとこもあり面白いです!
アナベルとオズワルドがメインのカップルだと思うのですがロザリアとリュドウイック殿下の二人もお似合いでいい感じなのでどちらも最後まで楽しみにしてます😊
yuukaさん
お読み頂きありがとうございます!
そして、読みやすくて面白いと言って頂き、感無量です...!
アナベルとオズワルド、そしてロザリアとリュドウィックは、まだまだ一歩ずつ歩み寄っている最中ですので、最後まで見届けて頂ければ幸いです!(^∇^)/