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口説くなら、早いもの勝ち! (オズワルドside)
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特に擦り寄られたりも、虐げられたりもせず、継母だった商人の女性が客室から出ていく。
そして、客室の扉がゆっくりと閉まっていくのを、オズワルドとメリオダスは呆然としながら眺めていた。
「…ねぇ、オズくん。気持ち悪いの、大丈夫?」
「あ、あぁ。お前が怒ったおかげで、殆どなくなった。…助かった」
「ホッ。よかった~。俺、あんな風に怒ったの初めてだったよ~。それにしてもあの人、ただ単に俺らを見に来たってだけで何もしなかったねぇ」
「確かにな。何か裏がありそうだったけどな」
「うんうん。とりあえず、ここには俺とオズくんしかいないから、色々話せそうだね~。あ、そうだ。オズくん、この客室に防音魔法ってかけられる?アナベル嬢のおかげで、魔法使えるようになったんでしょ?」
「ん?おぉ。まぁ、一応できるけど」
オズワルドはメリオダスの言っていることに首を傾げながら、ゆっくりと口の中で詠唱を唱える。
そして、客室の床に大きな魔法陣が形成されたかと思うと、次の瞬間、分厚い半透明な膜のようなものが客室を覆い尽くした。
「…ふぅ。なんとか出来たぞ、メリオダス」
「おお!すごいねぇ~。確か防音魔法は、転移魔法より負担は軽いけど、結構大量の魔力を使うはず。それを軽々使うなんて、すごいなぁ~」
「…あぁ。そして、その防音魔法を軽々使えるようになった事実にも、実は俺自身驚いててな」
「えぇ~!すごいじゃん!もしかして、アナベル嬢のおかげかな~?」
メリオダスは揶揄うように笑って、オズワルドの腕を肘で軽くつつく。
その瞬間、オズワルドの顔が一瞬にして赤くなった。
「わ、わぁ!オズくんの顔が赤くなったぁ!わぁ、わぁ!」
「ちょっ、うるさいぞ、メリオダス!もしこの会話が外に聞こえたらどうするんだ!」
「え~?防音魔法かかってるから何言ってもいいじゃん。カッカしないでよ~」
「うぐっ!」
メリオダスにど正論を言われ、オズワルドは声を詰まらせる。
そんな彼の様子を見たメリオダスは、大きく伸びをしてから、客室のソファに座り、突然こう話し始めた。
「さて、オズくん。ここから、重要な話をしたいんだけどいい?ウィリアム殿下がやりたい事のお話」
「えっ!メリオダス、もしかして何かわかったのか?」
「うん。調べたところ、まだこの国を裏切って戦争を仕掛ける計画はない。けれど、リュドウィック殿下の殺害計画は続いている。今はロザリア嬢を手籠にする計画をしているんだろうけど、きっとその対策はリュドウィック殿下が阻止しているだろう。…けれど、もしロザリア嬢を手に入れられなかった場合に備え、ウィリアム殿下はまだ策を考えている可能性もある。例えば、アナベル嬢に魅了魔法をかける、とか」
「なっ!それ、本気なのか!?」
メリオダスが放った調査内容に、オズワルドは食いついて、彼のそばに駆け寄る。
もしアンディもといアナベルがオズワルドのものにならず、ウィリアムのものになってしまえば、きっと立ち直れなくなる。
それを見越しての計画だとしたら、なんとか阻止しないといけない。
オズワルドは、頭を抱えながら下唇を強く噛んだ。
「くっそー!もしそれが本当だとしたら、どうすればいいんだよ!まだ、俺とアナベルは婚約すらしてないというのに!」
「うん。そこが問題なんだよね。きっと、ウィリアム殿下は調査で、オズくんがアナベル嬢に恋してるのを知ってるんだと思う。青薔薇様は騎士団にも女性にも人気だからね。多分、ウィリアム殿下はそこを突いてくるんじゃないかって思う。けど、それを阻止する方法も絶対ある。…もう、理解してるよね?」
「…メリオダス…。まさか、早々にアナベルを口説いてこいってことか?」
「うん!!」
満面の笑みで頷くメリオダスに、オズワルドは額に手を当てて、大きなため息をついた。
「はあぁ~…。言っておくが、アナベルはいつ俺の前に姿を現すか分からないんだぞ!?そんな中で、早急に口説けるか!」
「えっ!?本当に?そ、そっか。それなら、仕方ないね…。けれど、心に留めておいたほうがいいよ。きっと、後々後悔するから!」
「…ああ。そうしておく。それにしても、あのクソ女、ウィリアム殿下とどんな商談をしたんだろうな…」
「うん。確かにそうだね」
オズワルドとメリオダスは、お互い短いため息をつきながら、客室の扉を再度眺めた。
けれど、この時のオズワルドは知る由もなかった。
ウィリアム殿下が狙っているのは、リュドウィックやロザリア、アナベルだけではないという事を。
そして、客室の扉がゆっくりと閉まっていくのを、オズワルドとメリオダスは呆然としながら眺めていた。
「…ねぇ、オズくん。気持ち悪いの、大丈夫?」
「あ、あぁ。お前が怒ったおかげで、殆どなくなった。…助かった」
「ホッ。よかった~。俺、あんな風に怒ったの初めてだったよ~。それにしてもあの人、ただ単に俺らを見に来たってだけで何もしなかったねぇ」
「確かにな。何か裏がありそうだったけどな」
「うんうん。とりあえず、ここには俺とオズくんしかいないから、色々話せそうだね~。あ、そうだ。オズくん、この客室に防音魔法ってかけられる?アナベル嬢のおかげで、魔法使えるようになったんでしょ?」
「ん?おぉ。まぁ、一応できるけど」
オズワルドはメリオダスの言っていることに首を傾げながら、ゆっくりと口の中で詠唱を唱える。
そして、客室の床に大きな魔法陣が形成されたかと思うと、次の瞬間、分厚い半透明な膜のようなものが客室を覆い尽くした。
「…ふぅ。なんとか出来たぞ、メリオダス」
「おお!すごいねぇ~。確か防音魔法は、転移魔法より負担は軽いけど、結構大量の魔力を使うはず。それを軽々使うなんて、すごいなぁ~」
「…あぁ。そして、その防音魔法を軽々使えるようになった事実にも、実は俺自身驚いててな」
「えぇ~!すごいじゃん!もしかして、アナベル嬢のおかげかな~?」
メリオダスは揶揄うように笑って、オズワルドの腕を肘で軽くつつく。
その瞬間、オズワルドの顔が一瞬にして赤くなった。
「わ、わぁ!オズくんの顔が赤くなったぁ!わぁ、わぁ!」
「ちょっ、うるさいぞ、メリオダス!もしこの会話が外に聞こえたらどうするんだ!」
「え~?防音魔法かかってるから何言ってもいいじゃん。カッカしないでよ~」
「うぐっ!」
メリオダスにど正論を言われ、オズワルドは声を詰まらせる。
そんな彼の様子を見たメリオダスは、大きく伸びをしてから、客室のソファに座り、突然こう話し始めた。
「さて、オズくん。ここから、重要な話をしたいんだけどいい?ウィリアム殿下がやりたい事のお話」
「えっ!メリオダス、もしかして何かわかったのか?」
「うん。調べたところ、まだこの国を裏切って戦争を仕掛ける計画はない。けれど、リュドウィック殿下の殺害計画は続いている。今はロザリア嬢を手籠にする計画をしているんだろうけど、きっとその対策はリュドウィック殿下が阻止しているだろう。…けれど、もしロザリア嬢を手に入れられなかった場合に備え、ウィリアム殿下はまだ策を考えている可能性もある。例えば、アナベル嬢に魅了魔法をかける、とか」
「なっ!それ、本気なのか!?」
メリオダスが放った調査内容に、オズワルドは食いついて、彼のそばに駆け寄る。
もしアンディもといアナベルがオズワルドのものにならず、ウィリアムのものになってしまえば、きっと立ち直れなくなる。
それを見越しての計画だとしたら、なんとか阻止しないといけない。
オズワルドは、頭を抱えながら下唇を強く噛んだ。
「くっそー!もしそれが本当だとしたら、どうすればいいんだよ!まだ、俺とアナベルは婚約すらしてないというのに!」
「うん。そこが問題なんだよね。きっと、ウィリアム殿下は調査で、オズくんがアナベル嬢に恋してるのを知ってるんだと思う。青薔薇様は騎士団にも女性にも人気だからね。多分、ウィリアム殿下はそこを突いてくるんじゃないかって思う。けど、それを阻止する方法も絶対ある。…もう、理解してるよね?」
「…メリオダス…。まさか、早々にアナベルを口説いてこいってことか?」
「うん!!」
満面の笑みで頷くメリオダスに、オズワルドは額に手を当てて、大きなため息をついた。
「はあぁ~…。言っておくが、アナベルはいつ俺の前に姿を現すか分からないんだぞ!?そんな中で、早急に口説けるか!」
「えっ!?本当に?そ、そっか。それなら、仕方ないね…。けれど、心に留めておいたほうがいいよ。きっと、後々後悔するから!」
「…ああ。そうしておく。それにしても、あのクソ女、ウィリアム殿下とどんな商談をしたんだろうな…」
「うん。確かにそうだね」
オズワルドとメリオダスは、お互い短いため息をつきながら、客室の扉を再度眺めた。
けれど、この時のオズワルドは知る由もなかった。
ウィリアム殿下が狙っているのは、リュドウィックやロザリア、アナベルだけではないという事を。
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