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白い薔薇の花言葉 2
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「失礼いたします、ロザリア様。リュドウィック殿下から、贈り物を頂きました」
「あら。ありがとう、アンディ。それで、何を贈ってきて下さったの?」
「…はい。ま、誠に言いづらいのですが…し、白い薔薇を5本…」
「え?」
やはり白い薔薇は少しトラウマがあるのだろう、ロザリアの顔が一瞬にして色を失った。
けれど、これを渡さなければリュドウィックに責められてしまうだろう。
アンディは意を決して、リュドウィックからの伝言を伝えた。
「…ロザリア様。大変申し訳ないのですが、リュドウィック殿下は決して、貴女をものにする気持ちで渡そうとはしていませんよ。この白い薔薇の花束は『深い尊敬』と『あなたに出会えた事の心からの喜び』の花言葉があります。まるで、『友情の証に』と言っても過言ではない花束ですよね」
「…アンディ…」
「ロザリア様、ぜひこの花束をお受け取り下さい。五本全てに薔薇の棘が抜かれておりますので、安心して持てるかと思います。…一介の新人執事である僕が言うのもなんですが、リュドウィック殿下の『友情』のお気持ち、決して無碍にしてはならないかと」
そう諭しながら、アンディはゆっくりとロザリアに近づき、跪いて花束を渡す。
その様子が、さながら王子のように感じられて、ロザリアはふふっと笑いながらそれを優しく受け取った。
「ありがとう、アンディ。貴方が言うなら、この白い薔薇の花束も悪くないわね。エマ、この花束を空いている花瓶に生けて頂戴」
「かしこまりました、お嬢様」
ロザリアの侍女であるエマは、彼女から受け取った白い薔薇の花束をゆっくりと包装紙から取り出し、綺麗に後処理を施してから花瓶に挿す。
その時、突然扉の方から聞き覚えのある明るい男性の声が聞こえてきて、アンディとロザリアはビクッと肩を跳ねさせた。
「わぁわぁ!俺の薔薇、受け取ってくれたんだね、ロザリア嬢!嬉しいよ!」
「きゃっ!?…えっ、リュドウィック殿下…!?」
「なっ!なに顔だけ出して、ロザリア様のお部屋を覗いているんですか、殿下っ!」
「あはは~。ごめんごめ~ん。ちゃんと渡ってるかなぁって思って、気になったから覗いちゃったよ。でも、ロザリア嬢のお部屋は乙女の部屋だし、婚約者じゃない限り男子禁制だからね。今は入ることは絶対しないからね!…で、でもこの覗く体勢って、き、キツいなぁ…。いくら俺がピチピチの二十歳だとしても、こ、腰がぁ…!」
急に横腹を手で押さえながらリュドウィックがその場で座ったものだから、ロザリアの悲鳴が部屋中に響き渡った。
「きゃあああ!あ、アンディ!い、一旦殿下を救護室に運んで頂戴!殿下の腰が良くなり次第、応接間にお呼びして、話し合いを行うから!」
「承知しました。では、リュドウィック殿下、失礼します」
「へ?って、うわわっ!?」
ロザリアの命令通りに動いたアンディは、リュドウィックのところに来てゆっくり立たせたかと思うと、一気に彼を横抱きにする。
その余りにもの身のこなしと衝撃に、リュドウィックも、彼の近くにコッソリといたオズワルドとエンブレスト伯爵も、驚きすぎて目が点になっていた。
「では、リュドウィック殿下。これから救護室へお運びいたしますね。そこでしばらくゆっくりお休み下さい」
「は、はい…。って待って待って!?俺まだ誰にもお姫様抱っこされた事ないんだけど!?オズワルドにも、された事がないのにっ!た、助けて、オズううううう!!ひゃあああああ!!」
「……」
あっという間に運ばれていったリュドウィックを見て、オズワルドは冷や汗をかいて大きなため息をついた。
(確か、アンディ殿って女性だったはず、だよな…。怪力が過ぎるうえ、もし俺でさえもあんな風に運ばれたら、面目立たねぇ気がする…。うん。しばらく体調を悪くしないよう気をつけねぇとな。恥ずかしい思いはしたくないしな…。うん)
「あら。ありがとう、アンディ。それで、何を贈ってきて下さったの?」
「…はい。ま、誠に言いづらいのですが…し、白い薔薇を5本…」
「え?」
やはり白い薔薇は少しトラウマがあるのだろう、ロザリアの顔が一瞬にして色を失った。
けれど、これを渡さなければリュドウィックに責められてしまうだろう。
アンディは意を決して、リュドウィックからの伝言を伝えた。
「…ロザリア様。大変申し訳ないのですが、リュドウィック殿下は決して、貴女をものにする気持ちで渡そうとはしていませんよ。この白い薔薇の花束は『深い尊敬』と『あなたに出会えた事の心からの喜び』の花言葉があります。まるで、『友情の証に』と言っても過言ではない花束ですよね」
「…アンディ…」
「ロザリア様、ぜひこの花束をお受け取り下さい。五本全てに薔薇の棘が抜かれておりますので、安心して持てるかと思います。…一介の新人執事である僕が言うのもなんですが、リュドウィック殿下の『友情』のお気持ち、決して無碍にしてはならないかと」
そう諭しながら、アンディはゆっくりとロザリアに近づき、跪いて花束を渡す。
その様子が、さながら王子のように感じられて、ロザリアはふふっと笑いながらそれを優しく受け取った。
「ありがとう、アンディ。貴方が言うなら、この白い薔薇の花束も悪くないわね。エマ、この花束を空いている花瓶に生けて頂戴」
「かしこまりました、お嬢様」
ロザリアの侍女であるエマは、彼女から受け取った白い薔薇の花束をゆっくりと包装紙から取り出し、綺麗に後処理を施してから花瓶に挿す。
その時、突然扉の方から聞き覚えのある明るい男性の声が聞こえてきて、アンディとロザリアはビクッと肩を跳ねさせた。
「わぁわぁ!俺の薔薇、受け取ってくれたんだね、ロザリア嬢!嬉しいよ!」
「きゃっ!?…えっ、リュドウィック殿下…!?」
「なっ!なに顔だけ出して、ロザリア様のお部屋を覗いているんですか、殿下っ!」
「あはは~。ごめんごめ~ん。ちゃんと渡ってるかなぁって思って、気になったから覗いちゃったよ。でも、ロザリア嬢のお部屋は乙女の部屋だし、婚約者じゃない限り男子禁制だからね。今は入ることは絶対しないからね!…で、でもこの覗く体勢って、き、キツいなぁ…。いくら俺がピチピチの二十歳だとしても、こ、腰がぁ…!」
急に横腹を手で押さえながらリュドウィックがその場で座ったものだから、ロザリアの悲鳴が部屋中に響き渡った。
「きゃあああ!あ、アンディ!い、一旦殿下を救護室に運んで頂戴!殿下の腰が良くなり次第、応接間にお呼びして、話し合いを行うから!」
「承知しました。では、リュドウィック殿下、失礼します」
「へ?って、うわわっ!?」
ロザリアの命令通りに動いたアンディは、リュドウィックのところに来てゆっくり立たせたかと思うと、一気に彼を横抱きにする。
その余りにもの身のこなしと衝撃に、リュドウィックも、彼の近くにコッソリといたオズワルドとエンブレスト伯爵も、驚きすぎて目が点になっていた。
「では、リュドウィック殿下。これから救護室へお運びいたしますね。そこでしばらくゆっくりお休み下さい」
「は、はい…。って待って待って!?俺まだ誰にもお姫様抱っこされた事ないんだけど!?オズワルドにも、された事がないのにっ!た、助けて、オズううううう!!ひゃあああああ!!」
「……」
あっという間に運ばれていったリュドウィックを見て、オズワルドは冷や汗をかいて大きなため息をついた。
(確か、アンディ殿って女性だったはず、だよな…。怪力が過ぎるうえ、もし俺でさえもあんな風に運ばれたら、面目立たねぇ気がする…。うん。しばらく体調を悪くしないよう気をつけねぇとな。恥ずかしい思いはしたくないしな…。うん)
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