訳あり男装執事は、女嫌いの騎士団長に愛され口説かれる

九重ネズ

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それはまさに青天の霹靂だった 2

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 エンブレスト伯爵邸に到着し、馬車から先に降りたアンディは、ロザリアが降りれるよう手を差し伸べる。
 執事になったばかりの時よりスムーズにエスコートをしてくれるアンディに、ロザリアは少しくすぐったい気持ちになって、優しくアンディの手をとった。

「すっかり執事が板についたわよね、アンディ」
「勿体なきお言葉です」
「ふふっ。もしいつか、ここで未来の婚約者の手を取る日がくるかもしれないと思ったら、なんだか貴方の手が恋しくなるわ」
「婚約者がいなくても僕は執事ですので。そういうお方がいなくても手を差し伸べ続けますよ」
「まあ、なんて頼もしい執事なのかしら!カッコいいわ!」
「…それはどうも」

 ロザリアの心からの賛辞に、アンディの顔がほんのり赤くる。
 男嫌いを除いてではあるが、こう見えてロザリアはとても優しくてしっかり者の淑女なのだ。
 少しガサツで不器用で仕事以外取り柄のないアンディにとっては、自分にないものを沢山持っていて、羨ましいとさえ思う。

 ここでふと、アンディは疑問に思っていた事をロザリアに聞いてみた。

「ロザリア様、実はまだ、気になっているという男性のお名前について、お聞きしていないのですが…」
「え!?私、まだ言ってなかったかしら?」
「はい。3日後にこちらに来るのでしたら、事前にそのお方の素性を知らないと、と思いまして」
「ああ、確かにそうね。確か『リュドウィック』と名乗っていたわ」
「…リュドウィック、ですか…。って、えっ!?」

 ロザリアから聞いた男の名前に、アンディは思わず声を荒げた。
 そう。リュドウィックと言ったらこの国ではたった1人しかいない。

 リュドウィック・ロドス・セレスタイン。
 我が国・セレスタイン国の第一王子で、社交会では女好きで有名な男だ。
 噂によると、彼は気に入ったご令嬢を夜な夜な連れ込み、容赦なく抱き潰している獣なのだという。
 そのような男がロザリアに接触したとなると、この先彼女がより傷つくのは目に見える。

 アンディはその場で冷や汗をかき、大きく身体を震わせた。

「ちょっアンディ!?どうしたのよ、そんなに震えて…」
「…ロザリア様、申し訳ありません。リュドウィックという男は、僕が推測するに、史上最低な男だと思われます…。充分警戒してください」
「ええっ!?」
「ほら、以前ロザリア様の部屋でお話しした際に、『第一王子は絶対に嫌だ』と仰っていましたよね?『リュドウィック』は多分、第一王子殿下の事を指しているのではないでしょうか?」
「うそっ!そ、そういえば言われてみればそうだったわ…!殿下の名前を忘れるとか失念してたわ…」

 片手を口に当てたロザリアの顔は青白く、今にも卒倒しそうになっている。
 アンディは彼女の両肩をしっかり持って支え、『大丈夫ですよ』と何度も言い聞かせた。
 よりにもよって一番最悪な男に引っかかったなと思うが、もう既にエンブレスト邸で逢う約束を交わしてしまったのだ。

 こうなったらもう背に腹は変えられない。
 アンディは心の中で、第一王子がどう来ようがロザリアをしっかり守ると決めたのだった。
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