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魔王の仲間第三号

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魔王が犬人族の娘を仲間に受け入れようとすると、丁度別れた筈の長老が現れた。
「あ?今俺の新しい仲間を勧誘しているだけだが?」
魔王がそう返すと、長老は沈黙を放つ。

「村長!なりませんこんな事!長老の昔の知り合いだからってリーナを預けるなんて言語道断です!」
おっさん、親バカ発揮!
しかし魔王これに反論する!
「可愛い子には旅をさせよ!だぞおっさん!」
「だからって素性の知れない輩に姪を預けるつもりなんて毛頭ありません!」
獣人の男性が全くの正論を叩きつける!
「素性ならラグトに聞け!信用なら一応ある!ないでもない筈だ!と思う!かもしれない!可能性アリかも!天文学的な確率だがあると信じる!」
「最後自信ゼロじゃねぇか!」
反論すら出来ない程の自信の無さを発揮しながら魔王が自分の保証人の名前を出すと、獣っ子、リーナの叔父が当然の疑念を言葉にして放出する。 

「やめんかお主ら」

突如として爺の声が会話を遮る。

「特にウオマ殿!勝手な勧誘はやめてくだされ!前回勝手に衛士の訓練に乱入された時は数週間に及んでこの村には防衛力が一切なかったのですぞ!」

その台詞を聞くと村人達が一斉にどよめき出す。
長老を呼び捨てにしたぞ、村長があんなに敬意払って話しかけているぞ、訓練に飛び込んで何やらかしたんだ、だのとお互いに言い合う。

「静かにせい!」
犬人族の頼れる長老がそう一喝すると、その場が瞬時にしん、と静まり返る。

「お主はどうしたいリーナ?」

村の最高権力者が一介の村娘にそう問いかける。
そして長老直々の質問に若干狼狽えながらも、犬人の娘は自分に喝を入れたかのように意を決して顔を上げると、答える。

「わ、私は、この人について行きたいです!この人からは、いい人の匂いがします!信用に足る人物!だと思いましゅっ。。。だと思います!」

その瞬間、聞いていた全員の心の声が一致した。
か、噛んだ。。。と。
そしてその全員の哀れみと愛らしさへのの両方を含む視線が絶賛赤面中のリーナに注がれる。

少女が可愛らしく俯くと、
「喜んで連れて行ってやろうじゃねぇか!歓迎するぜ!」

と、魔王が大歓迎の意を表明する。
丁度クレイとアランも戻って来て、何が起こってるんだと慌てるが、獣人の少女がキラキラした目と笑顔を向けてるウオマの満面の笑みを視界に入れてしまい、心底残念そうに事態を察する。

そして、二人は少女の方へ歩み寄ると、
「嬢ちゃん、同情するぜ。心配しなくとも冥土の果てまで付き合ってやるよ」
「お嬢さん、苦しい時もあるでしょうが、心を強く持って耐え抜くのです。そうすれば、いつかは光明も見えてくる筈ですから」
「心外な評価なんだが仲間としてそれはどうなんだ!?」
思いっきり経験談を語るように憐れんだ。
それに魔王がツッコミを入れるが、全スルー。

その光景に対し、村人たちの反応は様々だった。
頭が足りなくて状況に笑い出す者、若干、本当に安全な男なのか。。。?と疑念を抱く者、そして、全てを理解したようなラグトが少々引き攣った笑みを浮かべ雰囲気を見守る。

そして、その夜は全員が再度宴を楽しみ、そして翌日の日が静かに、明けた。

「さて、そろそろ行きますか!」
「行きまっしょう!」
「行きますよ」
「い、行きますね!」

一人だけなんかちょっとズレた謎のやり取りをしながら四人組が犬人族の村の正門に集う。

そして、古参の三人が歩き出し、新たに加わった仲間が焦って追いかけようと足を踏み出すと、
「「「「「いってらっしゃいリーナちゃん!」」」」」
と、村民が勢揃いして離れた所から正門にいる魔王一行に向かって手を振っている。

魔王の仲間一の新参が僅かに目を潤ませると、いつの間に移動したのか、魔王が背後から背中を軽く叩く。
小さな鳴き声が喉から発するのを抑えきれずに静かに呻くと、リーナがまたもや顔を真っ赤にしてうずくまる。

クレイとアランが正面で苦笑すると、リーナが更に恥ずかしかったのか、目を再びじわっと湿らせる。
それに慌てて三人が駆け寄り慰めようと右往左往すると、遠くで見守っていた村人達が愉快な笑い声を上げる。

それに反応し、村へ三人が愛想笑いを向けると、

「私はもう大丈夫です!いってきます!」

と小さな新米冒険者が声を出し、クルリと回ると村落の方へと最後の挨拶を届ける。

「ウオマ殿!リーナの事を頼みましたぞ!絶対に辛い思いはさせないようお願い申し上げる!」

そして、一名が邪悪な笑みを浮かべているのを全力で二名が見ないようにし、一名はプルプル震えながら、四人が、歩き出す。


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