上 下
3 / 44

魔王の冒険者登録

しおりを挟む
そしてかれこれ数時間歩いた後、魔王は大陸に辿り着いた。
「よし!先ずは人里目指すか!」
魔王は現在人間が支配する大陸の第一歩を踏み出した。

ーーーと本来あるべきだろう。
しかし魔王様はちょっとズルがお好きなのだ!
「必殺、霊魂交換!」
するとあっと言う間にあら不思議!
魔王様、彼の勇者が最初に修行した始まりの土地に降臨しちゃいました!
そしてその後を次ぐ様に何と!
魔王様、古龍を召喚!
村が荒れる!阿鼻叫喚の地獄絵図です!
しかし魔王様、それを無視!
褒め称えたくなる程の見事なガン無視でございます!
「ん~、やっぱ今日は絶好の戦争日和だな!でもこんなにも天気がいいんだから昼寝も悪くないな!うし、古龍!いっちょ空高くから大陸の反対側までひとっ飛び頼む!」
古龍は無言の了承をし、静かに飛び立つ。
そして、地上からは認識出来ない程の高度に達するとそのまま空と雲の上を滑るように移動していく。

その間、魔王は古龍の鱗上に寝そべりながらこの古龍との出会いを回想していた。

それは三百年前のある日。
魔王は思ってしまった。
「暇だな~。」と。
そして魔王は自軍の参謀に体を向くと、「シュムト君!君に俺の暇潰しの案を考えて貰いたい!」
シュムトは溜息をつきながらこう答えてしまった。
「魔王らしい事でもすればいいんじゃないですか?侵略とか古代兵器復活とか。」
「侵略は面倒臭くなるから却下!でも古代兵器!採用!よし、果ての火山に眠る古龍。。。ゲリラ?ゴリラ?を使役しに行こう!」
「古龍ガルラです陛下。」
「という訳で出発進行ー!」
という流れで古龍使役に向かった魔王一行であった。

数分後、魔王は一人で古龍と相対していた。
各地に配置してある魂の依り代の中で目的地に一番近い身体に霊魂を移し、そこから移動すれば何処でも直ぐである。

そこから始まったのは一方的な蹂躙劇だった。
勿論、古龍が魔王の兵達を破壊、という構図である。
しかし魔王がこんな事で諦める訳が無い。
魔王の本領、それは霊魂を破壊されない限り動き続ける人形の物量戦である。
数の暴力という物は恐ろしい。
戦況は最初古龍が圧倒的に有利だった。
しかし無限のゾンビ兵のような物が延々と押し寄せてくるのである。
流石にさしもの古龍もこれを永遠に相手が出来る訳はない。
そして、数日に及ぶ魔王兵達と古龍の戦闘は長き戦いの果てに魔王に制された。
そして霊魂を従属させ、今の主従関係に至る。
そしてその後魔王はというと、
「こんな龍使い道無いんだよなー。よし!取り敢えずこの洞窟で眠っていてくれ!」と言い残し、魔王城へと帰っていったのである。
その件の洞窟が偶々始まりの地、勇者の伝説が幕を開けた土地の地下に存在したのだ。

回想終了。
何とも類い稀なる出会いだった。
それが今やこんな立派な親愛関係に発展するなんて、生物の共存というのはなんと素晴らしいのだろう!
下で龍がゴゴゴッと震えている気がしないでもないが気の所為だろう!

と、気が付いたらもう既に大陸の反対側の山脈の中に着陸していた。
「ありがとな古龍!帰っていいぞ!」
と魔王陛下の帰宅許可が出ると共に古龍ガルラは空高く飛び上がり山の向こうへと消えていった。
「さて、どうしようか。一応近くに小さい街もあった筈だし、取り敢えずそこ向かうとするか!」

そして若干三時間程かけて移動した先には目的地とは違う大都市が建っていた。
「???」
困惑する魔王様。
何がなんだか分からない。
数年前まではここに資源も少ないかなり小さめの街が存在した筈なのに何か凄い防壁のある巨大都市になっていた。
取り敢えず困った時は人に聞こう!
「すいませーん、ここは辺境の街ルトランですか~?」
「ええ~昔はそう呼ばれていましたが今の名前は最果ての都市ルトランですね。」
「あ、そうですか~、ありがとうございます。」
成る程。転生していた間に大分発展したようだ。
取り敢えず手続きを済ませて街に入るとそこには誰でも一目で分かるようなギルドがあった。大街道の奥に。
なんか剣と盾が看板になってる。
昔のこの街の冒険者ギルドは廃屋と見間違う小さなボロ屋だったのに。。。ホロリ。
そして感慨に浸かっているといつの間にかギルドに到着していた。
「すみませーん冒険者登録しに来たんですけどー」
するとそこには、やはりというか、チンピラ達が集っていた。
相手にするのは面倒臭い。
という訳で、無視!
受け付けの所へ行くとご丁寧にギルドの規則等を説明してくれようとした。
丁重にお断りする。
ギルドの受け付けのオッサンの説明なんぞ聞きたくない!
それに昔暇潰しに冒険した事があるから大体のルールはもう知っているのだ!
自分の基本情報(年齢、性別、等々)を全て偽装した上で登録。

するとまぁ案の定、周りの冒険者達に囲まれた。
「おいぃ、あんちゃんどこ行く気だい?」

面倒なのに絡まれてしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【破天荒注意】陰キャの俺、異世界の女神の力を借り俺を裏切った幼なじみと寝取った陽キャ男子に復讐する

花町ぴろん
ファンタジー
陰キャの俺にはアヤネという大切な幼なじみがいた。 俺たち二人は高校入学と同時に恋人同士となった。 だがしかし、そんな幸福な時間は長くは続かなかった。 アヤネはあっさりと俺を捨て、イケメンの陽キャ男子に寝取られてしまったのだ。 絶望に打ちひしがれる俺。夢も希望も無い毎日。 そんな俺に一筋の光明が差し込む。 夢の中で出会った女神エリステア。俺は女神の加護を受け辛く険しい修行に耐え抜き、他人を自由自在に操る力を手に入れる。 今こそ復讐のときだ!俺は俺を裏切った幼なじみと俺の心を踏みにじった陽キャイケメン野郎を絶対に許さない!! ★寝取られ→ざまぁのカタルシスをお楽しみください。 ※この小説は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...