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新米冒険者のとんでもない1日

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 目に痛いほど晴れ渡った青い空に流れる雲を眺めながら、ナビアは別れの言葉を考えていた。

 (天国にいるかもしれないお父さん、お母さん。そして私の帰りを待っている幼い妹弟達よ。お姉ちゃんは今、何だかおかしなスライムに拘束された状態で運ばれています。一体どうしてこうなったのでしょう。お姉ちゃんはもう帰ることが出来ないかもしれません……。お姉ちゃんがいなくなっても、ギルドから慰労金やら保険金やらがおりるから、それでしっかり生活していくんだよ……)

 彼女は今、スライムの中に囚われ顔だけ出た何とも間の抜けた状態で運ばれていた。
 遠目から見れば、プルンとした塊に人の顔だけが飛び出た、なんともおかしな生き物にしか見えないに違いない。

 (それにしてもおかしい。この私が気配を全く感じなかった、なんて。こんなことがあり得るの?しかもこんな巨大なスライムの存在、聞いたこともない)

 通常のスライムといえばせいぜい大きくても成人男性の両手くらいで、ナビアがよく薬草採取をする草原にはそもそも滅多に現れないはずだし、むしろそんな大きさのスライムが現れた、なんて話がでたのなら討伐隊が組まれるほどの一大事として大騒ぎになっているはずだ。
 一部では、汚物処理のためにテイムされたスライムや、人の生活のために改良されたスライムとか荷運び用の気性の優しい魔物がいたりもするが、基本的に野生の魔物は危険なため、討伐対象だ。
 初心者一人でも討伐できる魔物か、複数の高ランク冒険者がいないと討伐できない魔物か、その辺の知識はしっかりとギルドで叩き込まれる。
 ナビアの所属する冒険者ギルドでは、冒険者初心者講習を必ず受けなくてはならない決まりがある。
「知識がないまま、モンスターのうようよいる草原や森に出るなんて自殺行為にも等しい。冒険者になりたての者が足りないのは知識と経験。足りない経験は知識でとりあえず補え。必ず最低限の知識は付けよ」というギルドの定めた鉄の掟により、所属したばかりの冒険者は全員必ず1カ月の講習を受けさせられる。
 その講習を必ず受けないと、そのギルドの所属カードが発行されない決まりになっており、知識のあるなしに関わらず1から冒険者としての基本的な事柄を叩きこまれる。
 よく出没するモンスターの生態に始まり、倒し方・罠のかけ方・逃げ方、良く依頼される薬草・その効能などなど……

 ギルドの講習もなんなくこなし、ようやく冒険者としての生活にも慣れ冒険者として働き始めてはや半年。通常のスライムや低級モンスターくらいならどうにか一人でも倒せる程度には成長し、危険な魔物がでにくい平原での採取くらいなら難なくこなせるようになっていた。

 それなのに。
 ナビアが気が付いた時には、プルンとしたゼリー状の体内にあっという間に入れ込まれ、えっさほいさと運ばれてしまっている。
 日差しがきつく、それなりに気温が高い日だったこともあり、この程よくヒンヤリしたスライムの体内は、火照った体には居心地がよく、ゆらゆらとした動きも相まってともすればうっかり寝てしまいそう。

 だが、気持ち良く寝ている場合ではない。

 みっちり座学を叩きこまれるので、ある程度の知識はあるはずなのに、教科書にも先輩冒険者からもこんな巨大スライムの話は聞いたことはない。

(大きさが普通のスライムとは決定的に違っているし、色だっておかしい。
 ブルーやブラックならよく聞くけど、こんな鮮やかなピンク色のスライムなんて……
 もしかして新種?え、新種なの?報奨金出るやつじゃん!)

 新種の魔物を発見した時は、速やかにギルドへ報告し、ある程度の調査の上『新種』と認められれば、その魔物の強さに応じて報奨金が出るようになっている。

「やった!報奨金上乗せ!?……ンん~~!!……だめ!ビクともしないぃぃ!」 

 いち早く報告に行かねばと、スライムの体内で藻掻いてみても、手足にゼリー状のものがべったりずっしりとまとわりつき、腕を上げることすら出来ない。
 かろうじて首から上は動かすことが出来るので、変わりゆく左右の景色を見ることが出来るが。

「それにしてもこのスライム、ほんと一体何なの?気配も感じさせない魔物なんて。
 生き物としてありえなくない?」

 兎獣人の血統を継いでいるナビアは、見かけはほぼ通常の人間と変わらないが、兎の特性を受け継いでおり、常人よりも耳が良く草食動物の臆病さ故、気配を察知する能力に長けている。
 そのおかげで幾度も窮地を乗り切ってきたというのに、今回ばかりは魔物の気配を一切感じることが出来ず、背後から忍び寄られ一気に頭から飲み込まれ、今や顔だけ飛び出た変な姿で魔物と一体化してしまっている。

 試しに大声で叫んではみたものの、今日に限って近くで薬草採取や低級モンスターを狩っている同業者がおらず、ナビアは運搬されるがままだ。
 そして具合が悪いことに、ひらけた草原からどんどん薄暗い森の中へと進んでいっている。更に最悪なのが、身に付けているものがじわじわと捕食溶かされているされているらしい、ということだ。

 らしい、と言うのは下を見ることが出来ないため、感覚で察するしかないから。

 どうも足の先から美味しくいただいているようで、履いていた靴と靴下が無くなり、足に心地よいヒンヤリむにゅむにゅとした感触がするのだ。
 例えるならば、緩い泥の中に素足を踏み入れた時の感触に近いといえるだろう。
 足の指の間をにゅるんにゅるんと軟体状の何かが這い回っているのは分かるのに、首から下の自由を奪われたままでは抵抗のしようもない。

(あー……ブーツ1つ買うのにいくらかかると……いい革使ってたんだけどなぁ。
 そしてこのスライム、どこまで移動するつもりなの?このまま森の奥に行かれたら……)

 されるがまま、連れ去られるまま。
 このピンク色の巨大スライムの目的も良く分からないので、ナビア自身がこの先どうなってしまうのかもわからない。
 靴のようにナビアをじわじわ溶かしていくのか、それともほかに何か目的があるのか。
 いかんせん、このスライムの情報が何もないため、生態も攻撃法も体内から抜け出す方法も何もわからない。
 はー、と深い溜息を零し、上を見上げた。
 さっきまで清々しいまでに広がっていた青空はもう見えず、今は木々の葉の間からようやく少し見えるかどうか、になっていた。

(もしかしなくても、随分奥まできたの?この薄暗さ……こんなとこ上級冒険者じゃないと来ないところじゃない)

 ひらけた草原とは違い、森の奥へ進むほど強靭で獰猛な魔物が増えていく。
 まずナビア程度の初心者冒険者では決して足を踏み入れない。
 たまに一攫千金を夢見てレア素材を獲ろうと初心者が入ると、間違いなく大怪我をするか最悪死ぬ。

 なので、入る必要がある場合、上級冒険者と必ずパーティーを組むようにギルドから指示されている。もちろんソロで行くのは規律違反。
 罰金と無償強制労働という罰則付き。
 一部の許された上級冒険者のみ、ソロで探索・討伐が許されている。

 それほどまでに、危険が満ち溢れている森なのだ。

 どうにか動く首を動かし、周囲の様子を伺い誰かいないかと一縷の望みをかけた、が、森はシン……とした静けさに包まれている。
 助けは来ない、という現実を突きつけられ、ナビアは益々焦る。
 なぜなら、もう下半身だけとはいわず、背中側の服はほぼ溶かされてしまっているのだ。

 想像してみて欲しい。

 ピンク色しているとはいえ、スライムは基本的に向こう側が見えるほどの透明さを持っている。そう基本的には透明なのだ。
 球体の上に顔を乗せ、背中側の服をほぼ食い尽くされた、お尻丸出し状態のうら若き女性の姿を。
 恥ずかしいなんてものではない。

(こんな姿を見られたら社会的に死んでしまう!絶対に見られたくない……でも、このままだと命の危険が……死にたくない、どちらの意味でも死にたくないぃ!)

 社会的な死か、肉体的な死か。
 2者択一のこの状態で、ナビアの思考は限界寸前だった。

 さらに追い打ちをかけるかの如く、ナビアの感覚が少しずつおかしくなっていく。
 体中をぬるついた何かが這い回っては、際どいところを掠めていく。
 胸は何かが巻き付いていてぐにぐにと揉みしだかれ、足にも何かが巻き付いて強引に開かされていく。

 (ちょ、こいつ……まさか……!やばいやばいやばい!このまま根城なんかに戻られたら……)

 今から自分が何をされそうになっているか、気が付いてナビアはますます焦る。

 魔物の中には、自ら繁殖することが出来ないため、別の生き物の胎を借りて仲間を増やすタイプのものがいる。
 捕まえた獲物を苗床にして、死ぬまで繁殖させられるのだ。
 ナビアが捕まったのは、まさにそういった類の魔物の可能性が高い。
 スライムは、基本的には単体生殖で分裂して増えるはずだが、このスライムはそうではないようだ。
 そうでなければ、ナビアはとっくに体の半分は溶かされてこの世からバイバイしているはず。

「や、冗談じゃない!どうにかして逃げないと……ちょ、そこ、んあぁっ!?」

 渾身の力を込めて足掻いてみたものの、両乳首に鋭い快感が走った。
 じゅっじゅっと吸いつかれている度、望んでいない気持ち良さが生まれる。
 吸われることで、固くたちあがった乳首に軽く噛まれるような刺激を与えられ、我慢できない程の気持ち良さを感じて、自分が情けなくなる。

「やっ!……あっ、んっぅ、こ、こんなので感じたくないィ、ひぁぁっ!」

 足の間の秘めたる部分全体をぬるん、と舐められ、一瞬頭が白くなりそうだった。

(やばいやばいやばい!このままだと快楽づけにされて最悪死ぬまで苗床……?)

 ナビアは自分の未来を想像してぞっとするが、非力な自分ではこの状況を打破するのは不可能だ。

「だ、誰か、あぁぁ!ん、いやぁ、や、そこやめ、んんぅ、たす、たすけてぇえぇ!」

 必死に出した嬌声交じりのSOSは、虚しく森の静寂に飲み込まれていき、ナビアを更なる絶望の淵へと堕としていった。

 ※  ※  ※  ※  ※

「は、んっん!あ、ア、そこぉ、イヤぁあ、アァん!」

 連れ去られた洞窟で、ナビアは与えられる快楽に蕩け切っていた。
 あれから、何度イかされたかわからない。
 どうやら、このスライムは体内で触手のようなものを作り出し、それを自由自在に動かすことが出来るようで、ナビアの女として弱い部分を確実に責め立ててきた。

 乳房は形が変わる程に揉みしだかれ、コリコリになったクリトリスをこれでもかと吸い上げられる。
 とめどなく溢れる蜜はスライムの体に吸収されていき、陰唇を探る触手の動きはますます活発になっていく。
 まだギリギリ残っている理性は拒否の言葉を繰り返すが、肉体的快感がそれをすっかり上回ってしまっており、その理性もいつまで保てるかわからない状態だ。

(このまま、またイかされたら……堕ちちゃうぅ!)
「あっ!あ!やらぁっ!また!あああん!イクっ!イクゥぅぅ!」

 全身をビクつかせながら、ナビアの頭がカクンと落ちる。
 すっかり抵抗する気力を失ったとみるや、ナビアをスライムの体内からずるりと取り出し、そのまま両足を大きく開かせ、宙に浮かせた。
 ぼーっとしたままのナビアの視界に映ったのは、自分の膣に向かってうねうねと向かってくる一際大きな触手だ。
 ぬらぬらとしたそれがナビアの誰も受け入れたことのない場所に侵入し、今まさに種付けが行われようとしている。 

「あ……あぁ……いや……いや……だ、誰か。お願い……誰か助けてぇぇぇっ!」
「動くなよ!」

 ざしゅっ!ざしゅっ!っと音がしたかと思えば、スライムを青い炎が一気に包み込み、びええええぇええという耳をつんざくような悲鳴と共に一瞬のうちに消え失せた。
 一気に拘束を解かれたナビアは地面に落ちる寸前に、誰かに抱きかかえられ、数時間ぶりの地面にそっと降ろされ、分厚いコートで全身を包まれた。

「おい!大丈夫か、しっかりしろ!こっちを見るんだ!」

 ぼうっとしたまま、視線を声のする方に向ける。
 暗い洞窟の中なのに、金色に光る2つの目が良く見える。

「……たす、かったの?」
「そうだ。もう大丈夫だ」
「よかっ……た」
「おいっ、おい!しっかりしろ!」

 助かった、という安堵感に包まれたナビアはそのまま意識を失った。


 ※  ※  ※  ※  ※

「……というわけで、そのスライムは始末した」
「そうか。今回も助かったダレウス。あとで報奨金を上乗せしておくよ」

 ギルド長に報告をしながら、ダレウスはぎりっと奥歯を噛んだ。
 虎獣人の血を引く彼から発せられる怒りのオーラは凄まじく、ギルマスの部屋に集まった高位冒険者たちですら、彼とは距離を取ろうと隅に固まっている。

(全くふざけた話だ!)

 事の顛末はこうだ。
 どこぞの研究室から、品種改良した魔物を逃がした、探してくれ、との依頼が来たのが3日前。
 ただ、詳しいことを何も話さず、「ピンク色をしたスライムを探してくれ」の一点張りだったことに不信感を抱いたギルマスが裏から手を回し、その研究室が違法に魔物を品種改良していたことを突き止めたのが今日。
 その改良されていたスライムからは媚薬が生成でき、高値で貴族たちに売りさばこうと企てていたが、その個体の1つに何らかの変化が起こり、急に巨大化して逃げ出したというのだ。
 しかもその増やし方が非常にまずく、一体を苗床にして増やしていったという。
 エサは人の体液……生活に困った女性達から体液をもらいそれを餌にしていたという。
 つまりは、その習性をもたせた個体が外の世界へと飛び出して行ってしまった。
 新たな魔物を生み出し、世に解き放ってしまうという重罪に耐えきれなかった研究員の1人がようやく口を割り、上級冒険者総出で捜索に当たっていた。
 通常の魔物ではないから、生き物としても気配が希薄で捜索も困難を極めていたが、ダレウスの長年の冒険者としての勘、とでもいうのだろうか。
 うなじが妙にピリピリするような感覚に導かれるようにして、スライムの習性からいそうな場所を割り出し、しらみつぶしに捜索していたら、森の奥の洞窟へと行き着いた。
 警戒しながら近づいてみると奥の方から微かに女性と分かる悲鳴が聞こえ、一気に駆け込み、最悪の事態だけは避けられたようだ。
 が、彼女にとっては悪夢のような出来事だっただろう。

 見も知らぬ魔物に襲われ苗床にさせられるべく、あのような痴態に晒されたのだから。
 幾本にも伸びた触手に体の自由を奪われ、両足を大きく広げられ、体中を嬲られていた、あの姿……

 そこまで思い出して、ダレウスは頭を振る。

 先程から彼女のあの姿が脳裏に焼き付いて離れないのだ。
 紅潮した頬に、快楽に耐えようとしつつも抗えぬ本能に苦悩し涙を浮かべていたあの黒い瞳が印象的で、それを思い出す度、ある場所の血が集中的にたまり熱くなりそうなのを必死で耐える。

(馬鹿か俺は。さっきから俺は何を考えているんだ。頭を冷やせ。
 これはきっと戦闘で気が昂っているせいだ。
 早く娼館にでも行って、馴染みに相手をしてもらわなくては)

「あとナビアは治癒師に見せ異常はないと報告を受けた。とりあえず念のため、今晩はギルドで部屋を用意し泊まってもらうことにした。ご苦労だったな、みんな」

 ギルマスのその言葉で解散となり、他の冒険者達は酒場や家へと帰って行ったのに、ダレウスの足は勝手にナビアが泊まっている部屋へと向かう。

 ダレウスの鼻は確実にナビアの匂いを覚えており、どの部屋にいるとも聞かずとも、彼女のいる部屋が分かる。
 ただ不思議なのは、誰にもこんなに強烈な匂いは感じたことがないのに、なぜかナビアの匂いだけはどこにいても分かるような気がするのだ。

(俺は……きっと彼女がちゃんと無事かどうかを確認したいだけなんだ。そうさ。あんな若い女性があんな目にあったんだから気になっているだけだ。だが会いにいったところで一体俺はどうしたいんだ?)

 自分の行動が全く分からないまま、ナビアがいるであろう部屋の前で立ち尽くす。

(……やはり娼館へ行こう)

 踵を返し、部屋から離れようと歩き出したが、人よりもよく効く鼻と耳が異常を感じ振り返る。
 すすり泣くような声と微かな水音、そしてナビアの強い匂い。

(確認するだけだ。あの事がショックで泣いているなら誰か女性を呼びに行かねばならないし)

 思いつく限りの言い訳をして、軽くノックをしてからドアノブを回す。
 鍵はかかっておらず、簡単にドアは開いた。
 開けた瞬間から、ダリウスは鼻孔に流れ込んできたナビアの濃密な香りに頭がグラリとした。
 獣人の血を少しでも引いているモノならわかる。
 これは発情しているメスの匂いだ。
 異性を誘う香りが、部屋中に満ちている。

 ゴクリ、と溢れる唾を飲み込み、意図的にドアの施錠をすると、ゆっくりとナビアに近付く。

「どうして……どうして……いや、治まって……くれないの?あぁっまたっ!クるっ!」

 うわ言の様に、泣きながら自分を必死で慰めているナビアの姿を見た瞬間。
 ダリウスの社会的常識や体面は一気に頭から吹き飛び、ナビアを慰めていた右手を引き抜き、顔を近づけて言った。

  「俺が手助けしてやる」

 ※  ※  ※  ※  ※

 (どうして、どうして、どうして……さっきから体中が疼いて熱くてたまらない。
 治癒師の治療も受け、体中にまとわりついていた粘液も洗い流したのに。
 時間が経てば経つほど、その疼きが酷くなってきてる。特に怪我もなく異常はないだろうって言われていたのに)

 子宮の奥が何かを求めて暴れているように脈打っているのが分る。
 何もしていないのに、足の間からはとろとろした蜜が滲みだして新しい下着に染み込んでいく。
 我慢できない程の欲情に囚われて、痛い程に張った胸を揉み、ぬかるみに手を伸ばす。

(いや……こんなの……誰かに見られたら……)

 しかし、欲望のままに胸を揉みしだき、グシュグシュになったワレメに触れた瞬間、そんな羞恥心が一瞬にして消え失せ自分を慰める行為に夢中になった。

 ぐっちゃぐっちゃと音がたつのも気にせず、何度もクリトリスを擦り上げ、自分が求めるまま快楽を貪る。

 だが、圧倒的に何かが足りず、何度果てても満足できない。
 その切なさに啜り泣きながら、痴態を繰り返す。

「俺が手助けしてやる」

 急に目の前に現れた人に驚くことさえも忘れ、弄り過ぎて真っ赤になり、溢れすぎた蜜でどろどろになった秘壷を晒しながら助けを乞う。

「助けてぇ……も、自分じゃダメなのぅ。イキ足りな、いあぁあっ!」

 両足を抱え上げられ、お酒でも飲むかのように、蜜を舐め啜られる。
 じゅるじゅると、わざと聞かせているかのように音をたてる。
 その音が呼び水のように、もっと蜜を溢れさせる。
 ぶ厚く少しざらついた舌が、一番敏感な突起を掠る度、頭が真っ白に飛びそうになる。

「あぅ、あぅ!アッあっ、アァんん!」
「腰が俺の舌に合わせて揺れてるぞ。もうドロドロに溶けて物欲しそうにパクパクしてやがる」
「やぁぁ、おくぅ!もっとおくに欲しいのぉ……」
「もう少し楽しませろよ」

 意地悪く笑いながら、自分の蜜でびちゃびちゃになった口元を腕で拭い、金目の彼はだらしなく開ききっている唇にキスをした。
 熱く厚い舌が縦横無尽に口腔内をかき回されると、もっと、と強請る様に自分から舌を絡ませる。

 ぐっしょり濡れそぼった蜜壷に、自分に細い指とは違う太い指がゆっくりと入ってくる。

「んむぅっ!!んっんっ」

 ぬるぬるの蜜道を少し擦り上げられただけで軽く達し、キュウキュウと指を締めあげては、奥へ奥へと誘い込むように蠕動を繰り返している。

 と、同時に耳の奥から「じゅるり」と何かが這い回った。
 感じたことのない感覚に背中をのけ反らせて悲鳴を上げた。

「ひぃぃ!いやぁぁ!なにこれ!耳!奥になにかいる!んんんっ」

 ずるりずるりとそれが耳奥で這い回る度、気持ち悪さと快楽が同時に襲ってきてナビアを狂わす。ナビアはたまらず目の前の逞しい胸に縋りつき助けを乞うた。

「全部燃やしたつもりだったが、奥で残ってたやつがいたか……誘い出すしかないな。
 おい、ナビア。こっち見ろ。いいか、お前の中に魔物がいる。それを取り出すためにちょいと無茶するぞ」

 ナビアがコクコクと頷くやいなや、ダリウスはナビアを抱え上げ自分の上に乗せる。
 ぐちゃぐちゃに蕩け切ったアソコに、ごりっとした固い男性器を押し付けられ、ナビアは一瞬震えた。
 その震えが本能的な恐怖からくるものなのか、子宮の奥が求める快楽からなのか。

「お前、初めてか?」

 軽く入り口を擦る様に腰を動かしながら、ダリウスはナビアに問う。
 もし処女であるなら、気を付けねば中を傷つけてしまいかねない。

 ……これだけ解れていれば心配はそんなにないかもしれないが。

「んっ……は、初めて、んぁ…です、はぁ、はぁ……」

 ダリウスは心の底から湧き上がる何とも言えない歓喜に低く唸ると、ナビアの柔らかなお尻に手を添え指が埋まる感触を堪能しつつ、ナビアが受け入れやすい様に誘導する。

「ゆっくりでいいから、ここに腰を落とすんだ。できるね?」
「う、ん。あ、あ、あ……こ、ここ、に?」
「そうだ。焦らなくていいから。ゆっくり……そう、上手、だ……くっ」

 ぎちぎちとした怒張が、ゆっくりと熟れて熱くなった蜜道へと埋め込まれていく。
 その締め付けの良さに暴走しそうな動きを抑え、ナビアのペースに合わせるようにじっと耐える。
 つもりだった。
 眉間に皺をよせ苦し気にしつつも、ダリウスにしがみつき、耳にかかる吐息の甘さに堪らず、ナビアの唇を塞ぎ舌をねじ込み、ナビアの腰を一気に奥まで落とす。

「んん―――――っ!」

 悲鳴にもならない悲鳴を喉奥で漏らし、目を大きく見開いたナビアの目に破瓜の痛みからの涙が溢れる。
 背中にたてられた爪の痛みすら愛おしく感じれるほどの多幸感に、ダリウスはナビアを強く抱きしめ、下から遠慮なく突き上げた。

「ひっ!やっ!あっあぁっ!あっアっアッ!」

 その動きに合わせるようにナビアの口から嬌声が零れ落ちる。
 ダリウスは上下に揺れる乳房に舌を這わせ、赤く尖った実に喰らいつく。
 きつく吸いつき口中で弄ぶたび、中がきゅうきゅうとダリウス自身を締め付けてくる。

 まだ、まだだ、まだ足りないとばかりに、ナビアを横たわらせ、両足を高く抱え上げると、更に激しく腰を打ちつける。
 パンっパンっと互いの肉が当たる音が響く。
 ゴツゴツとした怒張が、ナビアの蜜壁を擦り上げる。
 先程よりも強い締め付けを感じて、ナビアの果てが近いことを知ると、ダリウスは更にスピードを上げた。

「いあっ!ひっ!ひっ!むり!もうむりぃぃん!あっんんん」
「イクって言え。おらっ!イキそうなんだろ?言え」
「イクっ!も、も、イク!イッ……ちゃ――――――っ!」
「……っぐ、うぅっ」

 どちゅどちゅと卑猥な音を響かせてナビアを追い詰めると、容赦なく最奥にグリグリと押し付け、せりあがってきた白濁液を流し込む。
 ドクンドクンと脈打つそれが落ち着くまで中に沈めたまま、意識を失い、力無くだらんとした足を肩からそっと降ろす。

 ダリウスは何かを小声で呟くと、ナビアにそっと口づける。
 ふーっと魔力を込めた息をナビアの喉深くまで行き渡る様にすると、耳の奥から何かかずるんっと飛び出してきた。
 あのピンクスライムの残りだ。
 スライムの厄介な特徴は、少しでも形を残したままにしておくと幾らでも増えてくるところだ。
 ナビアの耳奥で運よくダリウスの炎に巻き込まれなかったこいつがナビアを苗床にしようとして、体内から快楽中枢を操っていたのだろう。
 ダリウスの魔力で追い出された小さなピンクスライムは、ダリウスの青い炎によって一瞬で燃え消えた。

 ダリウスは自分の下で、すぅすぅと寝息をたて始めたナビアの顔をじっくりと眺める。

 寝顔は歳より少し幼い様に見え、自分との歳の差を考えると落ち込みたくなってくる。
 軽く17も年下の娘、しかも緊急事態だったとはいえ、こんな形で大事な初めてを奪ってしまった上に、まさか彼女が自分の『番』だとは。

「嘘だろ……勘弁してくれよ……」

 『番』なんてものは、今や廃れてしまった獣人族の本能のようなものだ。
 遥か昔は『番』と一緒になることが当たり前だったようだが、今や人間なのか獣人なのかぱっと見では分からない程に2つの種族は混じり合っている。
 長い年月の中で『番』を求める本能はすっかり薄れ、自由に恋愛を楽しみ、結婚も種族の違い云々を気にせずできるようになった。

 それなのに。

「なんてこった、畜生……」

 そう言いながらも、ナビアの中に埋め込んだままの自身を引き抜くことが出来ず、ナビアを自分の上に乗らせたまま横になる。
 目覚めたナビアに罵られるか、殴られるかを覚悟してゆっくり目を閉じる。

「泣かれるのだけは……勘弁してほしいなぁ」

 小さなボヤキは、部屋の静けさに溶けて消えた。

 ※  ※  ※  ※  ※

 ナビアは自分の中で違和感を感じてハッと目覚める。
 自分の下にある物が柔らかい布団ではなく、物凄く鍛え上げられた固い筋肉の上であることに驚き、体を起こそうとした。が、ナビアが動くより早く、ダリウスの両腕がナビアを捕まえた。

「やぁ、ナビア。……昨日は酷い目にあったな。体は辛くないか?」
「は、あ。おはようございます……あ、いえ……確かにとんでもない目にあいましたけど。命はあるので。すが。え、と……どちら様で?」
「んぁ?あ、あぁ、そうか。名前すら言ってなかったな。俺はダリウス。一応Sランク冒険者だ」
「ダリウス?Sランクの……えっ!あの、虎の獣人の血を引いているっていうあのダリウス!?金目の?」

 ギルド内でもかなりの有名人であるSランク冒険者ダリウスが目の前にいることに驚いて、ナビアはマジマジと彼の顔を眺める。

 浅黒い肌に頬には変色した傷跡が残っている。金の眼と髪が陽に当たる度、反射してキラキラ光っている。眼光は鋭いが、今は何だか困ったような感じで太めの眉は下がっている。
 それがまた何だか、大人の色気漂っていて、こちらがドギマギしてしまう。
 娼館のお姉さま方や女性冒険者が憧れるのも分かる。経験浅い小娘なら、コロッと参ってしまいそうだ。

「……もしかして、昨日私を助けてくれました?あのスライムから」

 何とか昨日の記憶の引き出しを引っ張り出し、恐る恐る尋ねてみる。
 ナビアの記憶に間違いがなければ気を失う前に、金目の誰かに助けてもらったのだ。

「あ、あぁ。俺が助け、た」
「あ、あの、その節はありがとうございました。お陰で弟妹達にまた会うことができます」
「いや、いいんだ」
「あの……もう1つ、質問してもいい、ですか?」
「なん、だ?」
「…………どうして私達、裸なん、ですか?私の下半身から感じる違和感の、正体……は?」
「~~~っスマン!文句も罵りも後でちゃんと聞くから!」
「えっ?えっ?あ、ちょ!ちょっウソうそ!先にせつめ……あ、イヤぁぁんっん、ん~!」

 ※  ※  ※  ※  ※

 ――結局、その日はそのまま抱き潰されてしまったナビアは、介抱という名目の元、ダリウスの家に連れ込まれてしまい、「『番』なんだ。ナビアじゃないと俺はもう嫌なんだ」 と縋りつかれ、土下座する勢いで「俺と結婚してくれ」と懇願されたとかされなかったとか。

 数カ月後。
 ナビアのお腹には新しい命が宿り、兎獣人の血を濃く受け継いだ女の子と虎の獣人の血を色濃く受け継いだ男の子の双子を産んだという。
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