永屋町怪道中

描き人 トッシュ

文字の大きさ
上 下
3 / 7
真宵迷いて知らぬ町

邪神と医薬師と

しおりを挟む
イタミはふいに聞こえた紳士エトワールの声で目を開けると、紳士エトワールのカフェのソファーに寝かされていたのであった。
「エトワール…さん…?」
「フフ…完治していない中で色々とあったから疲れたんだね…
お昼にしようか。」
紳士エトワールはずっと完治していないと言っていたが、先日の治療以来は動いても何とも無かった。
その為、イタミには何の事だか分からなかった。
「もう斯様な時間か…吾が焙煎した珈琲豆でも持って来るとしよう。」
「フフ…メーテ君が焙煎すると、驚く程美味しくなるからね…
いつも助かってるよ。」
「なに…いつも物々交換状態であろう?
お互い様だ。」
「あっ…僕も運ぶの手伝います…」
「え?待って駄目だ!」
そう言ってイタミが邪神メーテウスと店を出た直後だった。
突然イタミの全身に激痛が走り、その場に蹲ってしまった。
「クオン君の身体は、私の魔力で保護しているから…離れると危険なんだ…」
「嗚呼…隔界かっかいの加護を受ける前に弱り過ぎたのだな…もう少し安静にしていると良い…」
異界に移り住む事は、こんなにも難しい事が多いのかとイタミは思った。
イタミが見てきた異世界転生の話が、どれもあっさりと馴染めていた事が余計にそうさせたのである。
イタミは、紳士エトワールの作業を見ながら異世界転生について尋ねる事にした。
紳士エトワールは、転生と転移の違い等をかいつまんで話した。
そして、詳しくは此処に慣れてからの方が良いとも言った。
隔界かっかいに来て間もないイタミには、未知の事象が多過ぎたのだ。
イタミは何か会話をしなければと思ったが、永屋町ながやまちの事を話す紳士エトワールを見ている内に、すっかり見惚れてしまっていた。

「持ってき……フッ…」
戻って来た紳士エトワールは、イタミが乙女の様な表情で紳士エトワールを見つめていたので、思わず笑ってしまった。
「あっ…お帰りなさいメー様。」
「ああ…戻ったぞ…ッ…
おいエト、この状態のイタミを…ブッ」
そう言って紳士エトワールを見た邪神メーテウスは堪えきれず大声で笑った。
しかしそれは、勢い良く入ってきた来客によって、叫び声に変わったのであった。
「メーテウス様!!こんな所にいらしてたのですね!!!」
「うわあ!?変態医薬師ヘンタイいやくし(レード)ではないか!!」
「レード君は相変わらずだな…」
「あれ?葬儀屋イタミじゃないか…
メーテウス様の肉体美に惚れて入信するのかい??」
イタミは訳が分からず、目を点にしていた。
すると邪神メーテウスは、やれやれ…といった様子で話した。
「斯様な理由で入信しているのは其方だけであるぞ…」
「こんなにも逞しくて雄々しくてバランスも取れている美しい肉体美に惚れずに何に惚れると?」
前回よりも更に変態な言動を見せる医薬師レードであったが、ここでイタミが大変な事を口走ってしまった。
「僕は…エトワールさんが良いんです。」
その言葉を聞いた邪神メーテウス医薬師レードは大笑いした。
「おいおい!まさか写真屋エトワールの裸でも見た事あるのかよ?」
「フハッ…エトにも遂に狂信者がッ…フハハ!」
するとイタミはそれを思い出したのか、顔を赤らめて動揺しだしたので、医薬師レード邪神メーテウスは慌てだした。
「嘘だろ!?医薬師いやくしの俺でさえ見た事ないんだぞ!?」
「エトとはもう斯様な関係なのか!?吾は聞いてないぞ!!」
すると紳士エトワールが耐えかねて口を開いた。
「クオン君に渡したカメラが、私が入浴している時に暴走したから…慌てて飛び出してしまったのだよ…」
「あの…僕は…入信とか身体がどうとか…そう言うのではなくて…
よく解りませんが、ただエトワールさんについて行きたいんです!
ずっと一緒にいたいんです!」
これにはその場にいた全員が目を点にして無言になった。
「え…僕……」
「フハハッ相当だなあイタミよ!!」
「此処まで重症なのは…初めてかもしれない…」
葬儀屋イタミは童貞通り越して恋愛も未経験だったのか!
こりゃあとんだ相手に初恋だな!!」
すると、イタミと紳士エトワールは口を揃えて反応した。
「え…初恋???」
「ええ…鈍いにも程があるだろう…」
「まあ…相手がエトの場合は、魔力依存や神力の影響もあるからな。」
イタミは、神力と言うワードが出た事に驚いて邪神メーテウスを見つめた。
「フフ…私の身体は、主神アポルローンの身体でもあるからね。」
イタミは、紳士エトワールの意味深な言葉に目を丸くした。
そうこうしている内に料理と珈琲が次々にテーブルへと運ばれた。
「あぁああ!この香りはもしや!!」
「…煩いぞ変態医薬師ヘンタイいやくし(レード)。」
「フフッ…レード君はメーテ君の神焙煎珈琲が好きだったね。」
「メーテウス様が自らの体内の炎で丁寧に焙煎したんだぜ!?
もうその時点で贅沢中の贅沢だって言うのに風味も完全に閉じ込められてて、雑味を微塵も感じない…あの力強い香りと苦味は麝香豆じゃこうまめどころの騒ぎじゃないだろ!!」
「黙って飲まぬか…落ち着いて食べれぬ。」
すると、下味を付けられた生肉が、何の気無しにテーブルに置かれた。
イタミが困惑していると、邪神メーテウスが口から火を吹き、生肉はみるみる内に綺麗に焼き上がった。
「うわぁああ!?
メーテウス様の神焼きステーキだと!?
豪華過ぎる!!」
「貴様は頻繁にべにで吾が火吹きした料理を食べているだろうが…」
「頂きます…美味しい。」
「フフ…良かったねメーテ君。」
「この様子であれば、すぐに馴染めるだろうな。」
こうして昼食は賑やかに過ぎていき、邪神メーテウス医薬師レードは店に飾られた、この世とは思えない程に幻想的な写真を何枚かおもむろに取り、レジにお金を置いて去って行った。

「やれやれ…あれは飾りであって、売り物ではないのに…」
紳士エトワールはため息を吐きながら、新しい写真を飾り付けた。
その写真はどれも、美しい光が溢れる神秘的な写真であった。
イタミは、2人が勝手に写真を買っていく理由が分からなくも無かった。
紳士エトワールはやっとひと仕事終えた…とカウンターの奥にある椅子に座って帽子をくるりと回した。
するとカポンという音と共に蓋が跳んで消え、店内に上品な珈琲の香りが広がった。
「先程の珈琲とは違いますね…」
「フフ…私の魔力から出来た珈琲だからね。
普段は店で此れを飲んでいるのだよ。」
そして紳士エトワールは何処からともなくコーヒーカップを出して飲み始めた。
帽子によって出来る飲み物が違う…イタミにとって紳士エトワールは正に不思議の塊であった。
それと同時に、イタミは紳士エトワールの凡ゆる事が気になって仕方がなかった。
「その珈琲…僕も飲みたいです。」
すると紳士エトワールは顔を赤らめて噎せ返った。
「大丈夫ですか!?」
イタミが慌てて駆け寄ったが、紳士エトワールは中々目を合わせようとしなかった。
「クオン君…濫りに求めるのは…」
「どう言う事ですか?一体何がいけないのですか!?」
イタミが余りにも詰め寄ってしまった為、バランスを崩して紳士エトワール共々倒れ込んでしまった。
紳士エトワールは、目を合わせぬまま話しだした。
「此れは…私の魔力から作られた物…私の呼気の様な物なのだよ。
それを求めると言う事の意味…クオン君は解っているのかい?」
イタミは暫し呆然としていたが、呼気が口に入る状態を想像した事で、やっとその意味に気付いたのだった。
イタミが再び紳士エトワールの顔を見ると、頰は赤らみ、唇は小さく途切れ途切れに、彼の名を連ねていた。
イタミはその今にも壊れてしまいそうな儚く美しい姿に、吸い込まれる様に魅入っていった。
「クオン…君…」
何も語る事なく、ゆっくりと降りていくイタミの唇は、言葉よりも確かな熱を持って、抗う気力も失われて無防備となった紳士エトワールの唇へと向かっていた…
店内の時が止まった様な静けさの中で、紳士エトワールの口元に当たり始めた、微かでありながら熱い吐息…
遂には、二人の唇が触れてしまいそうな距離まで迫っていたのだ。
「そうだエト…エト?」
不意に聞こえた低く強い声に、イタミは我に返って飛び起きた。
「イタミよ…どうしたのだ?…!?

カウンター裏を覗き込んだ邪神メーテウスは突如、漆黒の暴風の如くごとくカウンターを飛び越えてきた。
紳士エトワールが顔を赤らめてひっくり返ったままだったのである。
「エト!大丈夫なのか!?」
邪神メーテウス紳士エトワールをすっと抱きあげると、紳士エトワールは漸く我に返って邪神メーテウスを見た。
「メーテ…君?」
「何処か打ったのか!?大事は無いか?」
すると紳士エトワールは、甘える様に邪神メーテウスの胸に顔を寄せて微笑んだ。
「全く…らしくもないぞ…」
「フフ…こんな事は…長らく無かったのでね。」
「そうか…無事なら良いのだが…全く、能天気なものだな。」
イタミは紳士エトワール邪神メーテウスのやり取りを見て、二人には様々な壁を超えた強い絆を感じた。
そして紳士エトワールのその笑みが、邪神メーテウスへの特別な感情に思えて、胸が締め付けられる様な苦しさを覚えた。イタミは正体不明の絶望感に苛まれ、抜け殻の様に何も言わず、ただただ立ち尽くすしか無かった。
「……君…クオン君。」 
不意にかけられたその優しい声に、イタミははっと我に返った。
「そんなに…私のを飲みたがっていたとは思ってもなくて…」
「イタミよ…飲むが良い。」
そういうと、邪神メーテウスは一杯の夜空の様に深いセピア色の飲み物をそっと渡した。
イタミはそれをまだ少しぼんやりした意識のまま口にすると、上品な香りと共に、優しい苦味が包み込む様に優しく広がり、仄かな酸味と甘みが飲み物の表情をいっそう穏やかにしていた。
「エトワール…さん……」
イタミは思わずその名を呟いて頰を緩めた。
「イタミよ…初めて飲んだのに判るのか。」
「珈琲が…と言うより、私のが欲しかったのか…」
「…え?」
実は邪神メーテウスが渡した珈琲は、イタミの目を盗んで紳士エトワールの帽子から掬い取った、魔力珈琲だったのだ。
「これが…エトワールさんの…紅茶の時もそうでしたが、優しくて…上品で……」
イタミは幸せそうな顔で一口一口味わう様に珈琲を飲んだ。
紳士エトワールは、そんなに意識させないでくれと、顔を赤らめてそっぽを向いた。
イタミは一口一口味わう毎に、脳裏に浮かぶ紳士エトワールの姿も密かに噛み締めていた。
シュッと無駄のない曲線美を描く輪郭…
今にも透き通りそうな程の透明感を湛えた色白の肌…
パライバトルマリンを思わせる海色の澄んだ輝かしい瞳…
すっと迷いなく整った鼻筋…
ふんわりと乙女色に染まった艶やかで柔らかそうな唇…
全体から細部に至るまでが芸術品の様な美しさを誇るその姿に、イタミは自然とうっとりとした表情になるのであった。
「エト…イタミはたったの2~3日で末期まで堕ちたのか?」
「わ…判らない…」
「此れは…イタミをエトから離した方が良いのでは?」
その一言に、イタミは乱心せずにはいられなかった。
「そんな…!僕はただエトワールさんの傍に居たいだけなのに!!」
「珈琲一杯でする様な反応では無かったぞ!それは魔力依存ではないのか!?」
「魔力なんて僕には分かりません!僕はエトワールさんのが好きなんです!!
僕はエトワールさんと全てを共にしたいだけなんです!!」
「イタミよ!暫く離れれば正気に戻る!!少し落ち着くのだ!!」
このやり取りを見ていた紳士エトワールは何か思う所があったのか、徐に二人の間に入った。
「クオン君…君はその珈琲に…何を求め、何を感じていたんだい?」
「凄く美味しくて…安心すると言いますか…」
そして、小さく小さく零したその名を、紳士エトワールは聞き逃さなかった。
「ふむ…では、このお冷は…要らないね。」
紳士エトワールはそう言うと、コップの上で指をくるくる回し、縁をそっと唇で触れた。
するとお冷を邪神メーテウスに渡す時には、イタミの意識は、完全にお冷の方に行っていた。
「イタミよ…本当に欲しいのか?」
そう言って邪神メーテウスがイタミにお冷を渡すと、イタミはそのお冷を味わって飲み始めた。
そしてイタミは…飲み終えた後も、愛おしそうにコップの縁を眺めたのだった。
「クオン君…何を感じたのかな?」
「え?エトワールさんがおまじないをかけてくれたから飲んだだけですので……」
そしてまた、イタミは微かな声で同じ名を口にした。
「フフ…そのおまじないをかけたら…何でもいいかい?」
「え…また飲めるのですか!?
それなら毎日でも飲みたいです!!」
「フフ…それなら魔力系は無くても大丈夫そうだ。」
「エト…一体何をしたのだ?」
「フフ…同じ物を…飲めば判るさ。」
そう言うと、紳士エトワールは同じお冷を用意して邪神メーテウスに渡した。
「ふむ…魔力は殆ど含まれていな…ふふぉおッ!!?」
邪神メーテウスは思わずお冷を吹き出し、狼狽うろたえながらこのど変態と叫び散らした。
「クオン君が思い出した私の姿が、メーテ君の脳裏に浮かぶまじないをかけてみたのだよ…
どうやらクオン君は魔力依存ではなく、魅了状態だった様だ。
それにしても…随分な所を思い出した様だね…」
「エト…イタミを早く引き離さねば、お前が襲われるぞ。」
「レード君ではあるまいし…」
「…イタミは重篤な魅了状態にある分、彼奴より酷いかも知れぬぞ。」
「そ…そんなあ…」
イタミは、紳士エトワールから永遠に引き離されると思うと、心が引き裂かれる様な感じがして、思わず紳士エトワールを抱きしめて邪神メーテウスを睨みつけた。
「吾を睨むとは…恐れを知らぬ大物だな。」
「フフ…そんなに私と居たいのかい?」
「はい…片時も離れたくありません。」
「ただの近所の住民や同居人では…駄目なのかい?」
「足りないです…僕には…エトワールさん以外考えられません。」
微かに震えながら抱きついているイタミを見た紳士エトワールは、イタミの頭を優しく撫でながら話した。
「きっとクオン君は、何も分からないから、私以外に味方が居ない様に感じてしまったのだと思う。
それに、私と常に居ると言う事は、常人には出来ない、大変な事なんだ…
だから、私と永屋町ながやまちの色んな所に行こう。
そして、色んな人とふれ合って、気の合う友人を探そう…ね?」
イタミは、その言葉に救われた様な気がして、静かに頷いた。
「怖いもの知らずの様で、存外臆病なのだな。」
「フフ…きっとクオン君にとっては…人が1番、自身を左右させているのだろうな。」
紳士エトワールは何故か妖しささえ纏う様な笑みを浮かべていた。
まるで…悪戯な企てでも浮かんだかの様に…
そしてその唇は、花開く様に動き出した。
「そうだ、今日の晩御飯はベニで食べて行くとしよう。」
「フハハ!エトが彼処へ行くとは実に珍しい!吾も張り切って火吹きをしようではないか!!」
邪神メーテウスは嬉しそうに張り切り出したが、紳士エトワールが中々行かない所である事に、イタミは少し警戒していた。
すると、紳士エトワールはどこ吹く風という様な、軽やかな口調で話した。
「フフ…クオン君も居れば、きっと大丈夫さ。」
イタミと邪神メーテウスの中に疑問が残ったが、邪神メーテウスにもやるべき事があった為、この場はそのまま解散となった。

紳士エトワールと2人で食器を洗っていた時だった。
隣で食器を濯いでいる紳士エトワールを見て、イタミはこのまま2人で…と思っていた。
すると不意に、目の前に食器が現れた。
「やれやれ…私ばかり見過ぎだ。」
どうやら、まだ少し脂っぽさが残る食器があった様だった。
仕方ない…と言った様子で向き直ると、態とらしい動きでショーを始めた。
「此れよりご覧に入れまするは、食器達の華麗なる舞踏会。
さあ、宴を始めよう!」
すると、スポンジの泡は一気に増え広がり、食器達は滑り込む様に泡に飛び込んでいった。
呆気に取られるイタミをよそに、食器達は紳士エトワールの動きに合わせて泡を飛び出し、水でできた幾つもの壁を次々と突き抜けては食器かごに並んでいくのであった。
「私とずっと居たいのであれば、先ずは私から自立して貰わないと…先は遠いよ。」
イタミには、紳士エトワールのこの言葉の意味が分からなかった。

夜になり、イタミは紳士エトワールに連れられて町を歩いていた。
ひんやりとした風が撫でる様に静かに吹き、その度に、様々な料理の匂いが通り過ぎていった。
イタミは、紳士エトワールと二人で出かけると言う事が嬉しい反面、口にするのが紳士エトワールの手料理ではない事が、何故か残念だった。
そうこうしている内に、紳士エトワールはある店の前で立ち止まった。
和の雰囲気が漂う、小料理屋にも似た居酒屋だった。
「此処が、昼に話していたべにだ。
さあ、入ろうか。」
イタミは、紳士エトワールの少し後ろを歩いて、そっとその店へと足を踏み入れた。

中はカウンター席が多めで、所々に神秘的で美しい写真が飾られていた。
恐らく、勝手に買われた紳士エトワールの写真なのだろう。
「あらいらっしゃい❀
久しぶりに来てくれはったん?嬉しいわあ♡」
嬉々とした声色で迎え出た若女将の様な女性は、人懐っこい笑顔を振り撒き、すっと降り立つ様にその胸に身を寄せた。
一方の紳士エトワールはと言うと、やれやれと言った顔で目を逸らしていた。
「あの…女将さん?」
「あらあ!見ない顔どすなあ?新顔さん?」
「初めまして…悼 久遠イタミ クオンと言います。」
「あらあ日本人なん?ウチもなんよ~♪
ウチは大和屋 撫子ヤマトヤ ナデシコ言うんよ。宜しゅう❁」
イタミよりも小柄な若女将ヤマトヤは、一言一言から花でも咲きそうな程の明るい声色でそう名乗った。
同じ日本人…と言っていたが、恐らく故郷はかなり遠く、文化さえ違うのだろうと思った。
「フフ…彼は、ヤマトヤ君にとって未来人だ。
色々と違いに驚くとは思うが、宜しく頼むよ。」
「まあ!此処はほんに不思議な御国どすなあ!
まるで御伽話おとぎばなしの世界やわあ❁」
確かに、此処は余りに不思議な世界だ。
自分達の世界には魔物や魔法等は御伽話おとぎばなしの世界でしかなかった。
しかし、此処には確かに実在した。
そして、居るかも分からないとされている神々まで、普通に姿を現し、役人の様に移住の手続きをしているのだ。
イタミはまるで、不思議の国のアリスになった様な気分であった。
本当は時計を持ったうさぎを追う筈が、殺されかけたから、いかれ帽子屋が迎えに来た…そんな感じなのだろう。
「フフ…此処は何処でも無いのかも知れないな。」
「エトがまた訳の分からぬ事を…」
邪神メーテウスはやや呆れた様に聞いていたが、イタミは美しい旋律でも聴いた様な顔で紳士エトワールに魅入っていた。
「メーテ様、今日もお疲れ様どす❁」
「む?片付けは良いのか?」
「やだわあ~❁明日はお休みどすよ?
メーテ様もお呑みになりますやろ?」
「そうであったか…
では、御言葉に甘えるとしようか。」
邪神メーテウスが人間に雇われている…何とも珍妙な光景である。
邪神メーテウス様ぁ~ 呑みましょ呑みましょ!」
他の客達もノリノリで邪神メーテウスと呑もうと盛り上がった。
結構人に好かれているらしい。
しかしイタミがふと紳士エトワールの方を見ると、紳士エトワールはやれやれと言った顔だった。
イタミはその理由が判らず、首を傾げた。
するとそこへ、ひとりの男がふらりと入って来て、一同の表情が固まった。
「いやあ~こんなお店あったっけ?」
どうやら、酔っ払いが迷い込んだ様だ。
「メーテ君?」
「いかん…閉じておくのを忘れておったぞ。」
「そう言って何人移住させたのやら…」
「今回は本当にただの閉じ忘れであるぞ…」
玄関の戸締りの話の様なノリで2人は話して居るが…世界を繋ぐゲートの話であるが故に、イタミの背筋は凍りついた。
「まさか…僕の移住まいの儀の時に…?」
「フフ…その時は私が最後に戻って閉じたからそれは無いよ…大丈夫だ。」
紳士エトワールはふっといつもの笑顔になってイタミを撫でた。
イタミは、ほっとした気持ちで目を瞑って受けていた。
「あれまあ~」
突然、若女将ヤマトヤから花の咲いてない声がしたので慌てて目を開けると、目の前にあれ程用意されていた料理が異様なまでに減っていたのだ。
「俺ぁ~食べるのが超~お速ぇんだぜ~え」
どうやら、この酔っ払いが早食いしたらしい。
「しかもこの年でもよぉ~、沢山食べれるんだぜぇ~。
あまり噛まないで飲み込めるから、硬い食べ物でも、顎が疲れないんだぜぇ~。」
随分と食べ進むので、余程美味しかったのかと思い邪神達は少し微笑ましそうに見ていた。
しかし、紳士エトワール若女将ヤマトヤは浮かない表情だった。
イタミが心配していると、若女将ヤマトヤが、花びらが1枚散る様な声で零した。
「あのお客はんなあ…あんなにぎょうさん食べてくれはってるんやけど…
…一言も食べ物の事を言うてくれないんどす。」
確かに、味や食感に関する言葉がひとつは出ても良い程食べているのに、出てくる言葉は食べる速さと量ばかりであった。
すると、ぽつりと紳士エトワールが零した。
「何でもすぐに通り過ぎさせるから、口も頭も飢えたままなのだな。」
すると、酔っ払いが紳士エトワールの言葉に噛みついた。
「ああ!?何わけの分からない事言ってんだよぉお!!?」
イタミは、紳士エトワールが面倒な事に巻き込まれてしまった…そう思っていたが、紳士エトワールは顔色ひとつ変えずに切り返した。
「では、此処で食べた料理の事…何処まで話せるのかな?」
「そ、そりゃあ~美味かったさ。」
「何が、どの様に?」
「沢山食べたから…どれがと言われても…」
酔っ払いがしどろもどろし始めた所で、紳士エトワールは彼を捨て置く様に、若女将ヤマトヤに話し始めた。
「フフ…ヤマトヤ君、アレはまだ有るかい?久し振りに食べたいな。」
「それがなぁ…此方のお客様はんがみ~んな食べてしもて…
漬ける前の物しかないんよ~」
アレで通じるとは…実は常連だったのか…と、イタミは違和感を覚えた。
「ふむ…では、せめてアレの感想を聞かせて貰いたいものだ…」
「お客はん、ウチのグミィフルーツと桜の塩漬け…どうでした?」
聞いた事の無い果物の名前が出てきた為、イタミはゲテモノ的な物を想像してしまった。
酔っ払いも、得体の知れない物を食べたと思い、顔が青ざめていた。
「…人の好きな物を全部食べておきながら、随分と失礼な反応だな。」
「でも、エトワールはんが食べてくれはらなかったら、だあれも食べてくれはらんかったんよ~❀」
「フフ…あれは早食いには良さが解らない代物だからな。」
此れには酔っ払いも流石に頭に来たらしく、前のめりになって怒鳴り散らした。
「ふざけてんのか!?」
「フフ…生で食べてみれば解るさ。」
「生でよろしかったらまだあるんよ❁
エトワールはん…食べはりますか?」
紳士エトワールは酔っ払いに食べさせるつもりでけしかけたのだが、若女将ヤマトヤは天然なのか、紳士エトワールに勧めてしまった。
しかし、紳士エトワールは気にしないと言った様子でそのまま注文していた。
「はい、グミィフルーツの盛り合わせどす❀」
そこは料理屋の意地なのか、若女将ヤマトヤは飾り切りや盛り方で、綺麗な小皿料理の様にして出してきた。
「フフ…実に綺麗だ。」
「ほんまどすか?❀ 嬉しいわあ♡」
若女将ヤマトヤは桜満開と言わんばかりの声色で喜んだ。
紳士エトワールはそれにどうこう反応するでもなく、ごく自然な仕草で、そのまま串が刺さっているひとつを取って、酔っ払いに向けた。
「さあ、口を開いて。」
この紳士エトワールの行動に、若女将ヤマトヤは物凄く羨ましそうな目で酔っ払いを見つめた。
イタミは、モヤモヤした気持ちになり、紳士エトワールが差し出したそれを、思わずぱくっと食べた。
「うぉおお!?」
「あらまあ~」
「イタミよ…大胆にも程があるぞ。」
「フフ…クオン君は悪戯が好きなのかな?」
当のイタミは、グミィフルーツを食べながら首を傾げていた。
奪う形で食べたそれが、味のしないハードグミの様な食べ物だったのだ。
「フフ…それの良さが解るのは、もう少し先かな。」
紳士エトワールは悪戯な笑みで、イタミの唇に指先を添えた。
出さずに噛み続けろ…と言った感じだった。
イタミは紳士エトワールに見惚れたまま、惰性で噛み続けた。
すると、不思議と食感は葡萄の様になり、最初の感じからは想像出来ない程の瑞々しさと爽やかな甘酸っぱさが口に広がり始めた。
「フフ…クオン君は漸く解った様だな。」
徐々に幸せそうな顔になるイタミを見た酔っ払いは、どんな物かと気になって覗き込みそうな姿勢になった。
「ほら、まだあるぞ。」
紳士エトワールが再び酔っ払いに食べさせようとすると、今度は若女将ヤマトヤが食べてしまった。
「うぉおい!」
「ヤマトヤ君…君も大胆だな。」
「イタミはんがしはるの見てはったら…したくてたまらなくなったんどす~❀」
女将ヤマトヤ殿まで…こうなれば吾も行くぞ♪」
「メーテウス様が!?
じゃあ俺はその次!絶対だからな!」
邪神メーテウス様に続いちゃうぞ~」
「あ、じゃあ俺も~」
「えっ何それアタシもぉお」
店内は謎のノリで盛り上がり、次々と名乗り出た。
すると、酔っ払いはムキになって叫んだ。
「俺が食うって話だったんだからいい加減食わせろおぉおうい!!」
「フフ…仕方ないな…口を開けて…」
男として見ても女として見ても妖しい美しさを放つ紳士エトワールの笑みに、酔っ払いは魅了され、なすがままに間の抜けた声で口を開いて、入れられたグミィフルーツをぼんやりと噛んでいた。
そして暫くして、我に帰った様に表情を変え、声をあげた。
「あぁああ…なんてうめぇんだぁ…
噛めば噛む程…本当うめぇえよぉおぅ…」
「フフ…ライスと少し似ているね。」
「え?」
「そう言えば、ご飯も噛んでる内に、甘くなりますよね。」
「ああー…そんな話もあったなぁ~」
酔っ払いは懐かしい気持ちになり、お会計を済ませようとした。
「ああ、此処は私が払うよ。」
紳士エトワールはそう言うと、何食わぬ顔でコインを何枚か出した。
 カフェで見た時は遠かった為見えなかったが、真珠の様な輝きを放っていた。
「なんだあ?変わったコインだな?」
「フフ…此処の特殊通貨なのだよ。」
そう言うと、紳士エトワールはコインの一枚を目の前にすっと出した。
コインは螺鈿らでん細工の様になっており、凹んだ部分には、海の様に透き通った青が薄く施されていた。
「不思議なコインですね…」
「ああ…螺鈿らでん細工の硬貨なんて、見たことねえ~」
「でもなあ…これはまだ安い方の通貨なんよ~❁」
「え?」
「ああ、こんな物もあるのだよ。」
紳士エトワールが更に取り出したコインは、琥珀に金彫刻がされた様な物だった。
「こりゃあ工芸品だなあ…」
「まるで金貨と銀貨ですね…」
「君達の世界で言う、電子マネーの様な物を導入しようかとも思ったのだが…永屋町ながやまちを覆っている彼等がいつ猛威を振るうか分からないからな。」
あんなにも穏やかな空が広がっているこの町に、恐ろしい物が覆っているとは、イタミには想像出来なかった。
そうこうしている内に、イタミは段々ふわふわとした気分になった。
しかしそれは、酒を口にしていない彼にはあり得ない事だった。
すると紳士エトワールが、自分達の勘定を済ませてイタミを店の外へと連れ出して行った。

静かで誰も居ない帰り道、花明かりで景色も意識もふわふわと朧げおぼろげなイタミに、紳士エトワールはそっと話しかけた。
「メーテ君が呑む事は、その場に居る皆が呑む事と同じなのだよ。」
訳が分からない話であったが、自身が何らかの形で酔わされたと言う事だけはイタミに伝わった。
そして紳士エトワールは、呆れた様な笑顔で話を続けた。
「此処に住う者の大半は、メーテ君が独断で誘致した者達が多いから、酔わされて二日酔いになっても、喜んで傍に居るのだよ。」
「ゆ…誘致…?」
「うむ、メーテ君は俗界等の別の世界で不条理な扱いを受けてきた者を見つけては、此処に連れて来るのだよ。」
イタミは不思議に思ったが、次の言葉で疑問も拍子も抜けてしまった。
「その度に私が叱って、彼等が懇願して、主神アポルローンが移住いの儀を執り行なうのだよ。」
「滅茶苦茶ですね…」
「うむ、だから彼は邪神なのだよ。
天界でも、結構呆れられている。」
そう言えば、自分の時も邪神メーテウスの信者集めかと疑われていたな…とイタミは思い出していた。
「確かに滅茶苦茶ですけど、此処に来た方達が懇願して移住する気持ちは…解るかも知れません。」
「フフ…そうだな。
様々な違いはあれど、不条理さで不遇を強いられて来た事は、皆共通しているからね。」
「僕は…エトワールさんに連れ出されて…良かったと思います。
傍でエトワールさんを支えて、一生かけて恩返しがしたいです。」
イタミは無意識の内に本音を零した。
すると紳士エトワールは、何が面白かったのか大笑いし、イタミにとんでもない事を言い放った。
「私を傍で支えるだって?
クオン君は人間を辞めるつもりかい?」
イタミにはその意味が分からなかったが、その気持ちに偽りは無かったので、真っ直ぐ紳士エトワールを見つめたのである。
すると紳士エトワールは、やれやれと言った感じで、とんでも無い提案をした。
「本気だと言うのなら、怪我が治り次第、冥府へ赴いて役人としての力をつけて来るのだな。
死なせはしないが、近い事には度々なる事を覚悟して貰うよ。」
イタミは、紳士エトワールと居たい一心だけで、何も考えずに頷いた。

2人が家に着くと、紳士エトワールはオーブンに予熱をかけて、有り合わせの材料で簡単な晩ご飯を作り始めた。
イタミは、紳士エトワールの手料理が食べられる事が内心嬉しくて、傍で手伝いながらその様子を見ていた。
紳士エトワールはトマトの中身をくり出し、細切れのソーセージや少量の調味料と和えて詰め直した。
イタミが指示されるままにそれをオーブンに入れると、紳士エトワールは微笑みながら見た事の無い豆類を軽く炒って茹で始めた。
「この豆は…?」
「フフ…幸福の豆さ。」
イタミには全く意味が分からなかった。
そうこうしている内に料理が出来上がり、晩ご飯を食べる事になった。
そして、謎の豆が入った雑炊を口にした。
ご飯の甘みと、豆の香ばしさや旨みが広がり、素朴でありながらも満足感の高い物だった。

イタミが紳士エトワールと寛いでいると、医薬師レードがふらっと訪ねてきた。
何事かと思ったが、次の一言でストンと府に落ちた。
「メーテウス様の影響で酔ったんだろ?
ほら、酔い覚ましだ。」
「フフ…助かるよ。」
「レードさんが…自分で調合を?」
「ああ、と言っても殆どが料理にも使われている様な材料なんだけどな。」
「フフ…お酒や他の者の服用薬、肝臓への影響が出ない様に考えての事なのだから、その方が良いと思うよ。」
「や~っぱり気付いてたか…
お前実は…あの漫画の神業闇医者みたいな奴なんじゃねぇのか?」
「まさか、私はマジシャンであり、マジシャンだ。」
確かに、紳士エトワールは余りに専門的な所に幅が利いているなとイタミは思った。
すると、医薬師レードが晩ご飯の残り香を嗅ぎつけたらしく、鼻をスンスン言わせてとんでも無い事を言い出した。
「おっ!ブンナーナッツじゃん!
アイツまた落ちてきてるからさぁ、幾らか分けてくれねぇか?」
「ああ、酔い覚ましのお礼になるのであれば。」
「お…落ちてる??」
イタミは全く話について行けず、思わず尋ねてしまった。
すると、医薬師レードはニカっと嬉しそうに笑って説明し始めた。
「ストレスで自律神経がやられて、寝つきの悪さで通院してる患者さんがいるんだ。
ま、要するにかーなり気が落ちてるってワケ。
普通なら精神安定系の処方箋を出すじゃん?」
「は…はい…」
「とーころが!このブンナーナッツが有れば薬を減らすか処方せずに済むんだなぁこれがꉂ(笑)」
「…え?」
この紳士エトワールは、普段の食卓にしれっと、とんでもない物を混ぜ込んでいたのか…とイタミは思った。
「お前さあ~…なんで顔まっ青になってんだよ?」
「く…薬に使う物が…晩ご飯に…」
「だ~違う違う!
それ位栄養価が高いスーパーフードって事だってえの!
それにだな、カレーのターメリックも、リコリスクッキーのリコリスも、表示名が違うだけで、栄養剤とかに使われてるんだぜ?」
「…え?」
「急性アルコール中毒で緊急搬送された人に使う点滴の成分に至っては、果糖…つまりフルーツに含まれる糖分が入っている位だからな。」
「そしてブンナーナッツは、幸福の豆って異名が付く位に、幸せホルモンの素になる栄養素がたーっぷり詰まってるんだ♪しかも全種類だぞ全種類ꉂ(笑)」
あれ程チャラくて変態だった医薬師レードが、この時は頼もしく見えた。
イタミは、紳士エトワールが自分を想ってくれてる様な気がして、嬉しくなった。
「あの…エトワールさん…」
「ん?どうしたんだい?」
「さっきの雑炊…もう少し食べてもいいですか?」
「フフ…構わないよ。」
「え!?まだ有るなら俺も食う!」
「全く…早々に帰るとは、珍しくつれない事をする…」
「メーテウス様あ!!」
「うわああ!抱きつくでないぞこの変態医薬師ヘンタイいやくし(レード)!!」
何だかんだでワンセットとなっている2人の騒ぎをよそに、イタミは雑炊のおかわりを幸せいっぱいに味わったのであった。

暫くして漸く静けさを取り戻すと、紳士エトワールはおもむろにイタミの前に立ち、態とらしいお辞儀をひとつした。
「これよりお見せ致しまするは、貴方だけの特別を贈るささやかなマジック。
さあさあ主役のクオン君、その手を此方に。」
唐突に始まった紳士エトワールのショーに、イタミは思考する事も出来ない程紳士エトワールに惹かれ、なすがままに自身の手を、迷いなくすっと差し出した。
紳士エトワールがイタミの手をそっととって本の様なオブジェに紳士エトワールの手と共に重ね置くと、オブジェは光を四方八方に撒きながら本物の本へと変わっていった…

「さあクオン君…君専用のアルバムだよ。」
「僕だけの…」
本革と羊皮紙のアンティーク感溢れる白紙の本の表紙にはいつの間にか、綺麗な装飾とイタミの名前が金色でしっかりと刻まれていた。
イタミは、早速今までにカメラが吐き出した念写真を貼ろうと、アルバムを開いた。
すると、念写真はパラパラと舞い上がって本の中に吸い込まれ、読めない文字へと変わっていった…
「え…しゃ…写真は……?」
「フフ…この文字は各写真の錠前の様な物なのだよ。」
「じょ…錠前…」
「うむ、そしてそれを開ける鍵が、君の能力だ。」
「僕の…能力……?」
心魂織りしんこんおりと言って、君の霊能力とそれ以外の能力を織り合わせて自身の力にしたり、力同士を繋いだり出来る特殊中の特殊な能力なんだ。」
イタミは動揺した。
念写真の時点で特異で驚くべき事なのに、聞いた事も無い能力まであったなど、到底信じられなかった。
天は…人に二物を与えないのでは無かったのか…世界はこんなにも理不尽で不公平なのかと…愕然としていた。
すると紳士エトワールは、なんて事もない、普通の事を話す様に口を開いた。
「クオン君の全ての能力は、恐らくその心魂織りしんこんおりを利用したスキルで間違いないと思う。」
イタミにとって、その言葉は目から鱗だった。
幾つもあった様に思えた特異な事は、全てがたった一つの能力が枝分かれしていただけの、何とも単純明快なものだと意味していたからだ。
「! 有難う御座います!!」
イタミは嬉しくなり、急いで残りの写真を綴じに向かった。
それを見届けた紳士エトワールは、これでゆっくり出来ると思い、お風呂に入る事にした。
イタミが愛しみながら写真をアルバムに綴じようとすると、アルバムに写真が吸い込まれ、たちまち魔導書の様になった。
そして、イタミがアルバムの文字に触れると、文字が光を放ち、夜空の様な空間に飲み込まれてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

処理中です...