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ああ、無常
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アリエーラが俺を見ていないのを知っても、何度もアリエーラの中に吐き出した。
裸にひん剥いたアリエーラは身体中ドロドロで、俺のつけた噛み跡だらけだ。
最後の一滴まで絞り出すと、アリエーラはドンと俺の体を押しのけた。
もう正気に返っちまったか。
木に足を高くつき、大きく開いたそこに指をっこんで俺が出したもんを掻き出し始めた。
無常にもボタボタと落ちるそれを見ると、アリエーラと繋がれた事で舞い上がった気持ちが一気に落ちる。
器用に水魔法で中を洗い、浄化、消臭を何度も繰り返した。
体も服も無言で念入りに、念入りに繰り返す。
…………俺の匂いが、消えていく。
虚しい気持ちに涙が滲む。
服を着たアリエーラが俺に向き直る。期待に尻尾がユラユラ揺れた。
「洗ってやる」
そう言って手をかざし、俺に向けて水魔法をかけた。
バッシャバッシャと体を水が覆い器用な動きで洗い始めた。
「おい! 俺はいいから」
せっかくのアリエーラの匂いが消える!
俺の言葉なんか聞こえなかったように無言で洗い、浄化、消臭を繰り返す。
服も体もなんの匂いもしないくらい洗われ、スンッとひと嗅ぎしてアリエーラは街へ戻って行った。
慌てて後を追うと、アリエーラは宿屋の屋根の上にいるクリムに真っ直ぐに向かう。
「楽しかった? あれ、臭わないね」
「やっぱり。仕組んだね?」
「なんの事?僕はグレンが出かけるみたいだったから見張りを代わっただけだよ」
「治せ」
そう言ってアリエーラは襟元をグッと引き俺の付けた噛み跡を見せる。
「何で?グレンから愛されている証だよ?」
「……お前に獣人婦人会から娘達との茶会の誘いが来てる。まあ、見合いだな。凛子様はお前に女っ気が無いことを気にしている。この話をお伝えしてもいいんだぞ?」
「悪かった。ごめんなさい。かあさまには言わないでください」
一気に顔色の悪くなるクリムはすぐさま謝罪しアリエーラに治癒魔法をかけた。
消えていく俺の痕跡に、裏切り者めと口に出た。アリエーラはサッと館内に戻り、俺は目の前のクリムを睨んだ。
「ごめんね?鬼の居ぬ間にと思ったんだけどさ。でも楽しんだんでしょ?二人ともスッキリした顔してる」
「何で俺に?」
味方なのか敵なのか、ただの同情か。
「同情」
「そうか」
一瞬でも期待した俺が馬鹿だった。
「番を手に入れたい気持ちは分かる」
「そういえばお前も……」
「でも、アリエーラに番が居なきゃしなかったよ」
「……」
「いい夢見れた?」
「……おまっ、性格悪すぎるだろ!」
「ハハッ、じゃ僕はこれで行くね。見張りの続きよろしく」
クリムが去ってしばらく、俺は屋根に寝転がりながらアリエーラのことを考えた。
アリエーラはあまり自分の事を話さなかった。
番だ何だと言う前に、もっと知らなきゃならなかった。アリエーラの周りの奴らは俺よりずっとアリエーラの事を知ってる。
「あー、俺よりリミオの方が詳しいもんな。情けねぇ」
「僕がなんですか?」
「……リミオか」
ひょっこりと現れたリミオはぷっくりと頬を膨らませて抗議した。
「酷いですグレンさん。せっかく朝ごはん持ってきたのに!」
「悪かったよ」
「あれ?なんだか元気ないですね。アリエーラさんと上手くいかなかったんですか?」
「上手く、ねぇ。イったっちゃいったが……はぁーっ」
「残念な感じなんですね、お疲れ様です。で?何が僕の方が詳しいんですか?」
「アリエーラだ。俺はアリエーラの好みやらなんやら、最近知った。なんならお前の方が詳しいだろ」
「え、アリエーラさんの好み分かった時点で僕より知ってますよ?アリエーラさんて趣味趣向が見えないんで知りませんし」
「……待て待て、見えないって何だ?」
「そのままです。見てた感じ物への執着はあまり無さそうですし、食事もそうです。出されたものを食べる、文句は言わない。あ、お酒は強そうですね」
何かが引っかかった。
確かにリミオの言った通りで、以前のアリエーラはそうだった。食いもんも持ち物もだ。
だが昨日のアリエーラは確かに自分で選んでいた。食いたいものを、欲しいものを。
「フルーツのケーキに串焼き、ありゃ魚介串だった。腸詰め肉の塩焼に揚げ菓子、あと新鮮なフルーツ」
「あっ、姫様の好物ですね?」
「銀細工の小物もか?」
「貴金属はあまり身につけませんが金より銀を好んで身に付けるそうですよ? もっと聞きたいですか!?」
「いや、いい」
つまりアリエーラは自分の番の好みの物を選び口にしていたって事か。
……なんて言うかアレだ、アレ。モヤッとする。よくわかんねぇが多分好みはあるんだろう。それが表に出ないっていうか出にくいのか?
「わかんねぇな」
やっぱりもう一度しっかり話したい。
いや、聞いても答えないか。ならアリエーラをよく知るやつに聞くしかない。
「はい。食べますか?」
差し出された包みを受け取り中のパンを取り出す。厚切りのハムとチーズ、塩、胡椒、香草の効いたそれに齧りつきながら今日の予定を話した。
「あ、さっき連絡で明日は一日自由ですって」
「何だ急に」
「カイル様とジン様が戻っできたんですよ。手練の騎士と夫で足りるから明日は好きにしていいんだそうです」
「じゃあアリエーラも空くのか」
「アリエーラさんは姫様付きですよ? そんな訳ないでしょ」
「そうか」
リミオの声は明るいが、どこか浮かない顔をしてる。
「なんだ、何かあるのか」
「チラッと小耳に挟んだんですが、この辺りに腕のいい薬師がいるらしく引き抜きたいみたいなんです……可笑しいですよね」
「何がだ」
「薬師が欲しいってことです」
「それだけ腕が良いんだろう」
「……最初は商会の専属、とも思ったんです。だって幻獣人は怪我や病は殆ど罹りませんから。でもここに来るのに食堂によった時、たまたまジン様とカイル様を見かけたんです」
「それで?」
「『リンに害を及ばせば消す』ってジン様が。あと、これから行くとも」
「……俺、か?」
いや、俺の事だろ。
「だったらとっくに首チョンパされてますよ。で、少し気になってちょっと歩いてみたんです」
「つまり、探りを入れたって事か」
歩くってのは気配を消して探るリミオの得意技だ。これを使っていつも黒姫情報を見つけてくる。
そんな事してたら暗殺スキルが上がっていったらしいが。
「その薬師、レーンに入るらしいです」
「なら姫付きか」
「そんなはずは無いです。カイル様って、あまり知られてないですけど自分用の調合室持つくらい薬に詳しいんです。姫様のお子様を取り上げたのもカイル様のはずです。医療に精通した人が自分の妻を他の人に任せますか? ありえないでしょ!?」
なら何故必要か。筆頭が動くのだから姫絡みか? もし違うならそれよりも上位の存在、または準ずる者のためか。
「どっちにしろ分からないならどうしようもないか」
そう。臨時雇用の俺たちにはどうしようもない事だ。
だがリミオの顔は晴れない。何か気になることがあるんだろう。
「つけましょう、グレンさん」
「……誰をだ」
「カイル様です。要はバレなきゃいいんですよ」
「お前が来る少し前に宿を出てるぞ」
「えぇ~そんなぁ」
あのジンの腕は知ってる、筆頭の方の強さも有名だ。
しかし姫さんが居るなら護衛は薄くするべきじゃないと思うがどういう事だ? それだけ自分に自信があるって事か?いや……
「……リミオ、明日は魔獣狩りに行くぞ」
「良いですね!いきましょう!」
裸にひん剥いたアリエーラは身体中ドロドロで、俺のつけた噛み跡だらけだ。
最後の一滴まで絞り出すと、アリエーラはドンと俺の体を押しのけた。
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体も服も無言で念入りに、念入りに繰り返す。
…………俺の匂いが、消えていく。
虚しい気持ちに涙が滲む。
服を着たアリエーラが俺に向き直る。期待に尻尾がユラユラ揺れた。
「洗ってやる」
そう言って手をかざし、俺に向けて水魔法をかけた。
バッシャバッシャと体を水が覆い器用な動きで洗い始めた。
「おい! 俺はいいから」
せっかくのアリエーラの匂いが消える!
俺の言葉なんか聞こえなかったように無言で洗い、浄化、消臭を繰り返す。
服も体もなんの匂いもしないくらい洗われ、スンッとひと嗅ぎしてアリエーラは街へ戻って行った。
慌てて後を追うと、アリエーラは宿屋の屋根の上にいるクリムに真っ直ぐに向かう。
「楽しかった? あれ、臭わないね」
「やっぱり。仕組んだね?」
「なんの事?僕はグレンが出かけるみたいだったから見張りを代わっただけだよ」
「治せ」
そう言ってアリエーラは襟元をグッと引き俺の付けた噛み跡を見せる。
「何で?グレンから愛されている証だよ?」
「……お前に獣人婦人会から娘達との茶会の誘いが来てる。まあ、見合いだな。凛子様はお前に女っ気が無いことを気にしている。この話をお伝えしてもいいんだぞ?」
「悪かった。ごめんなさい。かあさまには言わないでください」
一気に顔色の悪くなるクリムはすぐさま謝罪しアリエーラに治癒魔法をかけた。
消えていく俺の痕跡に、裏切り者めと口に出た。アリエーラはサッと館内に戻り、俺は目の前のクリムを睨んだ。
「ごめんね?鬼の居ぬ間にと思ったんだけどさ。でも楽しんだんでしょ?二人ともスッキリした顔してる」
「何で俺に?」
味方なのか敵なのか、ただの同情か。
「同情」
「そうか」
一瞬でも期待した俺が馬鹿だった。
「番を手に入れたい気持ちは分かる」
「そういえばお前も……」
「でも、アリエーラに番が居なきゃしなかったよ」
「……」
「いい夢見れた?」
「……おまっ、性格悪すぎるだろ!」
「ハハッ、じゃ僕はこれで行くね。見張りの続きよろしく」
クリムが去ってしばらく、俺は屋根に寝転がりながらアリエーラのことを考えた。
アリエーラはあまり自分の事を話さなかった。
番だ何だと言う前に、もっと知らなきゃならなかった。アリエーラの周りの奴らは俺よりずっとアリエーラの事を知ってる。
「あー、俺よりリミオの方が詳しいもんな。情けねぇ」
「僕がなんですか?」
「……リミオか」
ひょっこりと現れたリミオはぷっくりと頬を膨らませて抗議した。
「酷いですグレンさん。せっかく朝ごはん持ってきたのに!」
「悪かったよ」
「あれ?なんだか元気ないですね。アリエーラさんと上手くいかなかったんですか?」
「上手く、ねぇ。イったっちゃいったが……はぁーっ」
「残念な感じなんですね、お疲れ様です。で?何が僕の方が詳しいんですか?」
「アリエーラだ。俺はアリエーラの好みやらなんやら、最近知った。なんならお前の方が詳しいだろ」
「え、アリエーラさんの好み分かった時点で僕より知ってますよ?アリエーラさんて趣味趣向が見えないんで知りませんし」
「……待て待て、見えないって何だ?」
「そのままです。見てた感じ物への執着はあまり無さそうですし、食事もそうです。出されたものを食べる、文句は言わない。あ、お酒は強そうですね」
何かが引っかかった。
確かにリミオの言った通りで、以前のアリエーラはそうだった。食いもんも持ち物もだ。
だが昨日のアリエーラは確かに自分で選んでいた。食いたいものを、欲しいものを。
「フルーツのケーキに串焼き、ありゃ魚介串だった。腸詰め肉の塩焼に揚げ菓子、あと新鮮なフルーツ」
「あっ、姫様の好物ですね?」
「銀細工の小物もか?」
「貴金属はあまり身につけませんが金より銀を好んで身に付けるそうですよ? もっと聞きたいですか!?」
「いや、いい」
つまりアリエーラは自分の番の好みの物を選び口にしていたって事か。
……なんて言うかアレだ、アレ。モヤッとする。よくわかんねぇが多分好みはあるんだろう。それが表に出ないっていうか出にくいのか?
「わかんねぇな」
やっぱりもう一度しっかり話したい。
いや、聞いても答えないか。ならアリエーラをよく知るやつに聞くしかない。
「はい。食べますか?」
差し出された包みを受け取り中のパンを取り出す。厚切りのハムとチーズ、塩、胡椒、香草の効いたそれに齧りつきながら今日の予定を話した。
「あ、さっき連絡で明日は一日自由ですって」
「何だ急に」
「カイル様とジン様が戻っできたんですよ。手練の騎士と夫で足りるから明日は好きにしていいんだそうです」
「じゃあアリエーラも空くのか」
「アリエーラさんは姫様付きですよ? そんな訳ないでしょ」
「そうか」
リミオの声は明るいが、どこか浮かない顔をしてる。
「なんだ、何かあるのか」
「チラッと小耳に挟んだんですが、この辺りに腕のいい薬師がいるらしく引き抜きたいみたいなんです……可笑しいですよね」
「何がだ」
「薬師が欲しいってことです」
「それだけ腕が良いんだろう」
「……最初は商会の専属、とも思ったんです。だって幻獣人は怪我や病は殆ど罹りませんから。でもここに来るのに食堂によった時、たまたまジン様とカイル様を見かけたんです」
「それで?」
「『リンに害を及ばせば消す』ってジン様が。あと、これから行くとも」
「……俺、か?」
いや、俺の事だろ。
「だったらとっくに首チョンパされてますよ。で、少し気になってちょっと歩いてみたんです」
「つまり、探りを入れたって事か」
歩くってのは気配を消して探るリミオの得意技だ。これを使っていつも黒姫情報を見つけてくる。
そんな事してたら暗殺スキルが上がっていったらしいが。
「その薬師、レーンに入るらしいです」
「なら姫付きか」
「そんなはずは無いです。カイル様って、あまり知られてないですけど自分用の調合室持つくらい薬に詳しいんです。姫様のお子様を取り上げたのもカイル様のはずです。医療に精通した人が自分の妻を他の人に任せますか? ありえないでしょ!?」
なら何故必要か。筆頭が動くのだから姫絡みか? もし違うならそれよりも上位の存在、または準ずる者のためか。
「どっちにしろ分からないならどうしようもないか」
そう。臨時雇用の俺たちにはどうしようもない事だ。
だがリミオの顔は晴れない。何か気になることがあるんだろう。
「つけましょう、グレンさん」
「……誰をだ」
「カイル様です。要はバレなきゃいいんですよ」
「お前が来る少し前に宿を出てるぞ」
「えぇ~そんなぁ」
あのジンの腕は知ってる、筆頭の方の強さも有名だ。
しかし姫さんが居るなら護衛は薄くするべきじゃないと思うがどういう事だ? それだけ自分に自信があるって事か?いや……
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