〖完結〗「お前は俺の最高の番(つがい)だ」「番(つがい)?私の番は別にいる」

ゆか

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私はアリエーラ・結城 2

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この国には国が管理する孤児院がある。
私が収容されたのは特に魔力の高い子供が入る場所だった。私はそこで事情聴取される。私は今まで経験した事を話した。生まれてからずっと監禁されていた私がどうして逃げることが出来たのか。そう問われたわたしは鞭て打たれた恐ろしかったと答えた。
逃げるための手段の魔法の習得については、母親が父親からだと言って持ってきた本が魔導書だった事もあり、それを読んだと伝える。言葉や文字を教えたのは稀に来ていた老婆だと話した。
あの二人については今後の事を考え何も言わなかった。
そして私のいた屋敷が調査され、あの格子窓の部屋から見つかった魔導書もあり私の言い分は全て受け入れらる。
母親は何度も孤児院に来ては私を返せと言ったらしいが、会うことは無かった。

この国では子が親を捨てることが出来る。
その場合は親から与えられたものを全て放棄するため、私は名もなくした。
母親は父親とは正式な婚姻はしていなかった為、戸籍上私の親は母親だけとなる。
母親との関わりが法的に完全に切れたことを聞いた私は、父親への面会を求めすぐに叶うこととなった。
私のような戸籍上片親の場合、母親との縁を切って父親とだけ縁を繋ぐことが出来る。
あの二人はそうして欲しいと言っていたが私は信用仕切ることが出来なかった。だから会ってから決めたかった。


私の父親と言う男は暗灰色の人だった。
酷く窶れ目の下はクマが色濃く残りシワシワとして、ものを知らない私でもわかる程に憔悴していた。
父親は私の手を取り何度も泣きながら謝罪の言葉を繰り返す。そしてなぜ私があんな目にあっていたのかを話してくれた。

父親はの父親、私の祖父は親から捨てられた獣人の孤児だった。そして良き人間の伴侶と出会い父親が生まれたが、孤児には家名が無く家名が無いことは孤児の証でもある。そして家名が無い孤児の子は同じく名乗る家名が無い。祖父の妻、つまり私の祖母は父親に祖母の持っている家名を名乗る権利をくれたと言う。
あまりピンと来なかったが、人間は人間の男と人間の女の間にしか生まれないため、人間の女が獣人と番う事は皆無なんだという。
父親は貰ったその名を残したかったが高魔力保持者であるためなかなか子が授からなかった。
歳を重ね諦めていたところに私ができたという。父親は私を育てる為に正式な婚姻を結ぼうとしたが、母親が拒否したという。魔力検査で生まれた私は確かに父親の子であると確認が取れると、母親は毎月高額な金銭を要求してきたという。
払わなければ私には合わせないと脅され払い続けた。でも母親が父親に私を会わせたのは初めの1度だけだったという。
父親がどれだけ面会を希望しても叶わなかったのは、戸籍上は母親とは夫婦ではなく、決定権は母親にあったためだ。

ところがある日一通の手紙が届く。
それはあの世話をしに来る老婆からだった。歳をとり死を身近に感じた老婆は父親に許しを乞う手紙を書いていた。
老婆が死に、葬儀が終わると親族が持って来たのだという。
手紙の内容は私の状況と、言われるがまま食事を抜き虐待に加担した事、そして許されない事をしたと後悔と謝罪の言葉だった。
そして父親は私の居場所を突き止め、あの二人に頼んだ。そして母親から完全に引き離す為に私自身の足で孤児院へ逃げ込めるようにした。


私はその話を聞いても、ああ、そうだったのかと思っただけで何も感じなかった。

閉じ込めない事、何時でも自分で自由に出て行けること、魔法を習わせてくれることを条件に私は父親を受け入れた。



母親から逃げて父親の手を取るまでまで二十日ほどだったが、その間私は戸籍上の名で呼ばれていた。その名で呼んでも返事をしない私を気遣ってか、実際に呼ばれたのは一、二度しかない。「アリエーラ」と言う名は父から貰った。
通常行き先げ決まればすぐに孤児院を出るものだが、私は少しの間ここで学びたいといんちょにお願いした。万が一、父親から都合のいい事ばかりを吹き込まれても困るからだ。理由を伝えると院長は悲しげに眉を下げてから了承してくれた。
孤児院では今まで知らなかった様々なこと学んだ。国やその歴史、種族と争い、身分制度。
孤児院の図書室に入り浸り読めない字は職員に聞きながら本を読み漁った。与えられた時間は1ヶ月だけだったが私にとって学ぶことは楽しく、あっという間の時間だった。



そして私は父親と共に孤児院を出た。



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