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知っていたらどうしたか、どうなっていたのか。

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『僕は僕以外から僕の気持ちを遮られたり否定されたくありません。誰を好きでも、どんな想いでも。だから僕は僕以外の人のそう言った事には口出ししないし邪魔はしません。勿論、グレンさんにもです。誰かの心を潰すような事を、僕はしたくありませんから』


リミオの言うことは間違っちゃいない。


他人の番関係に口を出すなんて本来しちゃならねぇ事だ。
俺はいつの間にかリミオは俺の見方だと勝手に思っていたが、リミオは黒姫が好きで、この仕事を取れて尋常じゃなく喜んでいた。だがリミオは黒姫と多く接点が欲しいだとか、近付きたいだとか、無理を望むことは無い。
与えられた役割をこなし、許される範囲で観察し満足している。
アリエーラも、同じなのかもしれない。行き場をなくした欲求を発散する為に、苦しい思いを抱えながら番じゃない俺と寝る。



『……悪かった』

『いえ。分かっていただけて嬉しいです』

『しかし、アイツがあんな風に笑うなんて』

二人が話している姿を見るとやっぱり腹が立つが


『…………グレンさんて』
『なんだ?』
『本当にAランクですか? いくら番の事だって言っても、もっと観察しないと』
『俺にお前みたいな才能は無い』
『そうじゃなくて、アリエーラさんがどんな時に笑ったり、表情を崩すとか。僕は大好きだからその周囲にも目がいくんです』
『そういゃお前、ルーイの事も詳しかったな』
『彼は僕と似てますから』
『似てる?』
『……変種が差別されるのは幻獣人だけじゃ無いでしょ』
『……お前も?』
『まあ、それなりに?』


ルーイは幻獣人の変種。幻獣人は成長と共に魔力値が上がり、一定を超えると獣の姿から人化する事ができるようになるという。それはどの種族のあり方とも違い特殊だ。幻獣人に子供の姿をした幻獣人はいない。子供は人化する事が出来ないからだ。
獣人リミオも同じだ。獣人は八~十歳頃に変化が始まる。子供の体から大人の体へ、十日ほどかけ様々な変化が訪れる。そこで成獣人へ変化をすると緩やかに時を重ねてゆく。つまり、変化後に子どもの姿をしている獣人はいない。
リミオは子供ではなく人より体が小さいだけだろうが、そう思わないものも多い。リミオのように体の小さい獣人は珍しい。男女関係なくそんな獣人を扱う娼館もあるくらいだ。
冒険者になったのも、きっと生きていく上での仕事に困ったのだろう。

もしアリエーラの番を知って俺が暴れていれば、リミオも仕事をなくしたかもしれない。
一度でも雇い主と問題を起こした冒険者は、余程の事情でもない限りランクに関係なく敬遠される。

あのオーガの一件から、何故か俺とリミオはコンビで考えられている。

『悪かった』

『何度も謝らないでください』

『いや、俺の行動一つでお前にも飛ぶかもしれないって事を考えてなかった』

『いいですよ。でもあんまり酷いと見捨てますから』

『Bランクのお前にか』

『はい。Aランクのグレンさんをスパッと』





何だかんだ言っても多少変質的な所があっても、リミオは良い奴だ。
目的のために手段を選ばない所も、まあ、ありだ。

チラリとアリエーラを見ると、ルーイと黒姫の話で何やら盛り上がっている様で楽しそうだ。
俺はアリエーラを欲しいが壊したいわけじゃないし、正直どうしたらいいかなんて分からない。
勢いだけでこの位置にいる。
ルーイがこのままアリエーラを受け入れることがなければ……。


「さ、こんなもんでいいんじゃないでしょうか。埋めましょうかグレンさん」

「ああ」


アリエーラは番と体を合わせることが出来ない。魔力の高い俺と寝たのは子が欲しかったから。
じゃあ何故そうしたのか、アリエーラの番はアリエーラの気持ちを知っているのか。
俺は知らない。アリエーラがどんな想いを抱えて番じゃない俺と寝たのか。勝手に想像して腹を立てた。
まあ、アリエーラも勝手だと少しは思うが。

どの道俺はもっと知らなくちゃならない。
アリエーラ・ユウキって女を。
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