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何だか腹が立ってきやがった

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あれから俺の魂は抜けた。


笑っちまうぐらいに何にも手がつかず、依頼も受けていない。

まぁ、金だけはあるから暫くこのままでも問題はねぇな。


獣人ってのは厄介で、一度番だと思ったら止まらねぇ。番を失って廃人みたいになる奴だっている。


大丈夫。俺はそんなにヤワな男じゃない。

まだ平気だ。

引き返せる。




ベッドの上でぼんやりと天井を眺めていても、思い出すのはアリエルの引き締まった体。


あっさりとした女だった。

普通の獣人の女みたいに香水くさくねぇ。化粧も多分してねぇ。派手にヒラヒラした服は着ないで、男みたいなカッコばかりする。

一緒に酒飲んでもあんま喋らねぇけど、気を引こうと煩く喋る女とは違って楽だった。


確かに俺達は最初は体だけだったが、この五年で変わったと思ってた。

お互いに忙しくって飯食ってヤルだけだったけど、俺はそれなりに気をつかってた。





『私の番は他にいる』




何だよそれ。


何で番が居んのに俺と寝た。


いつから番がいたんだよ。


まさか相手はアリエルを番と認識しなかったのか?あんなにいい女なのにか?


だから代わりに俺と寝たのか?


だったら最初からそう言ってれば、こんなにどっぷりハマったりしなかった。


「あ"~~~~っ!!クソッ!!俺はもうお前以外で勃たねぇんだよ!!」


考えれば考えるほどイライラする!


もう関係ねぇ、アリエルの番がどんなやつであれアリエルは俺の番だ。番でもねぇ俺と寝れるなら、この際アリエルから番だと認識されなくてもいい。


何がなんでも手に入れてやる!!



「絶てぇ逃がさねぇからな!!」












バンッ!


と、乱暴に酒場の扉を開ける。


まだ朝早い時間だからか店内に客はいなかったが、カウンターの中から店主が驚いた顔で俺を見た。


「お客さん、まだ開店前なんですが」


「俺は客じゃねぇ、いや客か。あんたに聞きたいことがある」


カウンター越しに店主を睨みつけ、俺はアリエルについては聞いた。



「俺と月に一、二度待ち合わせする獣人の女騎士、知ってるな?」


「ああ、彼女ね。ハイハイ知ってますよ?」


「その女、アリエルについて知っていることを教えてくれ」


「アリエル?……いやぁ、それはちょっと」


渋る店主の前に、金貨を1枚。


「・・・・本当に知らないで付き合ってたんですか?彼女、この辺じゃ結構有名ですよ?」


もう1枚置くと、店主は大きなため息をついて話し始めた。


「ええと、ますアリエルって言いましたか?それ、違います」


「あ"?何だって?」


「お客さん、黒の姫様、知ってます?」


「ああ、あれだ。昔スロッシュベルト国が管理してる魔道具で落とされた落ち人だろ?確か当時の第三王子と結婚した」


落ち人は不思議な事に死んでもまた生まれる。同じ見た目、同じ魔力で。落ち人のほとんど居ないスロッシュベルトではあまり馴染みがないが、隣の大国サルターンじゃ有名な話だ。

んで、何度か生まれると消えるって言われてる。


「確かこの間死んで幻獣人の国、レーンに生まれたんだろ?産んだのはレーンの王アレクシスで、その王がご執心で番だって公言してる」


「そう、元々はこのスロッシュベルトにお住いだったんですがね、王家と揉めてこの国にはたまに帰って来るくらいになりましたが」


「それとアリエルになんの関係があるんだよ」


「・・・流石にスロッシュベルトの今の王妃様はご存知ですね?」


「当たり前だろ。何だっけか、あれだ。たしかルシェール妃だ」


「ルシェール様はルージュア公爵家の出ですが、ルージュア公爵家初代御当主は黒の姫様とご結婚されたフェリクス様で、ルシェール様は黒の姫様の曾孫になります」


さっきからアリエルのことを聞いてるのになんでか黒姫の話に繋がる。このまま聞いてて本当に平気か?


「彼女、アリエルじゃなくてアリエーラ・結城。アリエルは偽名ですよ」



アリエーラ・ユウキ・・・・ユウキ。



「ユウキ!!?」



黒姫の血族か!



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