ポメラニアン魔王

カム

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二、人間界の暮らし

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***

「……じゃあポメは、本当の力を取り戻す為に修行の旅をしているのか」 

その後もタケルがいろいろと私の話を聞きたがるので適当に答えていたところ、どうやらタケルの中で、私は人間の願いを叶える為に修行している神の使いのような物だと認識されたらしい。
魔力を奪い取っている事実に気づかれても困るので、話を合わせてやるか。

「……ワフフ、愚かな奴め」
「ポメ、たまに口が悪いな」

ほくそ笑んでいると、タケルに聞かれていた。

「そんな事じゃ、神様に認められないぞ」
「認められなくても良いのだ」
「お前、問題児なんだな。よしよし」

タケルは私を抱き上げると、妙に嬉しそうに顔を擦りつけてきた。

***

夕食の時間、タケルが用意したのは豆に似た茶色い物と、米と野菜と肉の料理だった。
この茶色はなんだ?まあとりあえず肉を食うか。

「ポメ、ポメはこっち。これは俺の」

何!?

「肉を用意しろと言ったではないかー!」

怒りのあまり飛びかかるが、あっさりかえされて腹を撫でまわされる。
まずい。腹はまずい。

「ここすごく柔らかいな~」
「フハハハ、止めろタケル……」

何とか体勢を立て直し、肉をよこせと威嚇するが、タケルにはあまり効果がない。この姿は不利だ。魔力を取り戻したら覚えているがいい。

仕方なく茶色い豆のような物を口に運ぶ。豆にしては固くポリポリカリカリしていて、味は不味いわけではないが、やはりタケルの食している料理の方が匂いといい見た目といい美味そうだ。

「ポメ、見た目がワンコだからさ……やっぱり人間の食べ物は良くない気がして。せっかく小型犬用のご飯買ったし」

じっとタケルの皿の肉を見る。
血の滴る肉が食いたい。
少ない魔力を使って横取りするべきか。しかしここで無茶をすれば肉は二度と手に入らないだろうし、家を出されれば自力で魔力をためなければならない。

「……分かったよ。ほんの少しだぞ」

タケルが急におれて、私の皿に肉の欠片を置いた。
歓喜して飛びつきあっという間に腹におさめる。
美味い!

「お肉は生じゃなければいいんだよな。たしかご飯も大丈夫って載ってたような。タマネギは入ってないから野菜もいいのか……?」

タケルは四角い物体を触ってブツブツ言った後、ご飯と野菜を私の皿に少し追加した。

「くだらぬ事を考えるな。私は何でも食べられるのだ」

自信たっぷりに言ってはみたが、食べているうちに急に満腹になり眠気が襲ってきた。

本来ならばどんな姿にでも変化出来るし、溶岩だろうが雷だろうが飲み込めたが、それは魔力があってこその話だったのだろう。
非力な姿ではあまり無茶は出来ぬらしい。

眠くなったのでタケルの食事をそれ以上奪うのは止め、かわりに膝の上でうとうとする。
少ない魔力に貧しい食事、狭い家屋、部下も召使いもおらず、タケルという人間の男一人しかいない不自由な生活だが、タケルの願いを叶えずに、ずっとこの家で暮らすのも悪くないと感じた。
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