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二、人間界の暮らし
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……うむ、なかなかいい眠りだったぞ。
ここは魔界と違い、朝日のエネルギーが強すぎて落ち着かないが、そのうち慣れていけばいい。
微量だが、昨日より確実に魔力が溜まっている気がする。
「ワフワフワフ……(フハハハハ)」
高笑いをしていると、隣に寝ていた魔力の供給源である村人が、のそりと起き上がった。
「ポメ、おはよう」
「キャンキャン(貴様、いつまで眠っている。忠誠心を忘れたのか。さっさと私の食事を用意するがいい)」
「ん?お腹すいたのか?ちょっと待ってくれ。それともトイレかな」
「ワフワフ(馬鹿め、食事に決まっているだろう)」
村人の男が白い箱を開け、中から食料を取り出す。あれは食料貯蔵庫のようなものだろう。中を見たが、それほど量は入っていない。貯蔵庫も小さいし、村は不作のようだ。いや、この男が貧しいだけかもしれない。
「すぐに用意するから待っててくれ」
私には見えない高い位置で料理をしている男。昨日何もして来なかったのだから、毒を入れたりはしていないだろう。
「ほら」
男は昨日と同じ皿の上に、相変わらず見た目の悪い料理を乗せる。
見た目は悪いが、美味だと知っている為、空腹が我慢できずに食らいついた。
「かわいいなー……」
ペロリと食べてしまい、もっとよこせと催促したが、村人の男は笑って皿を片づけた。
貧しいからこれ以上無いのだろう。
「ワフ……(貴様も苦労しているのだな)」
「ポメ、お手が出来るのか?すごいな!でも、ご飯はもう終わりだ。身体が小さいからあんまり食べたら駄目だぞ」
貧乏人め、誰の身体が小さいだと?
私は魔王だぞ。こんな少ない食事で魔力が貯まるか!
腹が立った私は、村人の小屋から出て餌を探そうと足の間を走り抜けた。
「ポメ?」
何だこの小屋は。みすぼらしい割に頑丈な扉や壁で、扉は固く施錠されている。牢獄か。
「キャンキャン(おい、狩りをするから扉を開けろ)」
「ポメ、トイレかな?」
村人はすんなり扉を開けた。
外は様々な匂いに満ちていた。
小屋の廊下には階段がついていて、下の小さな庭に続いている。
庭には弱々しい木々が生えている。あのレベルではろくな魔族が育たないだろう。無いよりはマシだが。
庭に行こうとして、階段を駆け下りると、階段下で別の村人に出くわした。
「ポメ!待て……あ、佐伯さんおはようございます」
サエキという男は、武闘家、剣士、魔法使い、そのどれにも見えなかった。
貧しい格好は村人の男と同じだから貴族階級でもなさそうだ。
例えるなら、学者だろうか。
「おはよう、尊くん。これ尊君のペット?」
サエキに捕まりそうになったので、さっと身を翻し、タケルと呼ばれた村人の足元に避難した。
「昨日拾ったんです。飼い主捜さないといけないんですけど」
タケルが私を抱き上げたので、心臓のあたりからフワリと魔力が流れ込んでくる。やはりこの男の腕の中は居心地がいい。
……うむ、なかなかいい眠りだったぞ。
ここは魔界と違い、朝日のエネルギーが強すぎて落ち着かないが、そのうち慣れていけばいい。
微量だが、昨日より確実に魔力が溜まっている気がする。
「ワフワフワフ……(フハハハハ)」
高笑いをしていると、隣に寝ていた魔力の供給源である村人が、のそりと起き上がった。
「ポメ、おはよう」
「キャンキャン(貴様、いつまで眠っている。忠誠心を忘れたのか。さっさと私の食事を用意するがいい)」
「ん?お腹すいたのか?ちょっと待ってくれ。それともトイレかな」
「ワフワフ(馬鹿め、食事に決まっているだろう)」
村人の男が白い箱を開け、中から食料を取り出す。あれは食料貯蔵庫のようなものだろう。中を見たが、それほど量は入っていない。貯蔵庫も小さいし、村は不作のようだ。いや、この男が貧しいだけかもしれない。
「すぐに用意するから待っててくれ」
私には見えない高い位置で料理をしている男。昨日何もして来なかったのだから、毒を入れたりはしていないだろう。
「ほら」
男は昨日と同じ皿の上に、相変わらず見た目の悪い料理を乗せる。
見た目は悪いが、美味だと知っている為、空腹が我慢できずに食らいついた。
「かわいいなー……」
ペロリと食べてしまい、もっとよこせと催促したが、村人の男は笑って皿を片づけた。
貧しいからこれ以上無いのだろう。
「ワフ……(貴様も苦労しているのだな)」
「ポメ、お手が出来るのか?すごいな!でも、ご飯はもう終わりだ。身体が小さいからあんまり食べたら駄目だぞ」
貧乏人め、誰の身体が小さいだと?
私は魔王だぞ。こんな少ない食事で魔力が貯まるか!
腹が立った私は、村人の小屋から出て餌を探そうと足の間を走り抜けた。
「ポメ?」
何だこの小屋は。みすぼらしい割に頑丈な扉や壁で、扉は固く施錠されている。牢獄か。
「キャンキャン(おい、狩りをするから扉を開けろ)」
「ポメ、トイレかな?」
村人はすんなり扉を開けた。
外は様々な匂いに満ちていた。
小屋の廊下には階段がついていて、下の小さな庭に続いている。
庭には弱々しい木々が生えている。あのレベルではろくな魔族が育たないだろう。無いよりはマシだが。
庭に行こうとして、階段を駆け下りると、階段下で別の村人に出くわした。
「ポメ!待て……あ、佐伯さんおはようございます」
サエキという男は、武闘家、剣士、魔法使い、そのどれにも見えなかった。
貧しい格好は村人の男と同じだから貴族階級でもなさそうだ。
例えるなら、学者だろうか。
「おはよう、尊くん。これ尊君のペット?」
サエキに捕まりそうになったので、さっと身を翻し、タケルと呼ばれた村人の足元に避難した。
「昨日拾ったんです。飼い主捜さないといけないんですけど」
タケルが私を抱き上げたので、心臓のあたりからフワリと魔力が流れ込んでくる。やはりこの男の腕の中は居心地がいい。
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