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旅行編 お墓参り〜赤砂の街
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「ミサキ」
しばらくテントで寝ていると、スグリさんの声がした。
「起きてるか?」
話す気になれなくて黙っていると、スグリさんがテントに入ってくる。入口の幕を開けると外の光と空気が入って今が夕方近い事を知った。
『……顔、どうしたんですか?』
スグリさんの顔は片方だけ腫れていた。足も少し引きずっている。
「アニキにやられた。殺されるかと思った」
何故か笑顔で、なんでもないことのように話してる。
「殴られたの久しぶり。やっぱりアニキ強い」
『怒ってないんですか?』
「アニキは俺より上。怒らせたから殴られて当然」
盗賊も上下関係が厳しかったんだろうな。少しだけ同情する。
「それにアニキに殴られると嬉しい。へへへ……」
スグリさん、俺と同じドMだな。ちょっと引いたぞ。
「ミサキは大丈夫か? アニキは手加減しない。恋人も大変」
『恋人じゃありません。変な契約のせいで捨てられないだけです。利用されてるだけなんです』
スグリさんは腫れていない方の目をぱちくりさせた。
「ミサキのこと、アニキは利用してない。アニキが利用するやつ、金持ち、偉いやつ、強いやつ。ミサキにはどれもない」
うっ……なんだか馬鹿にされたような気がする。
『でも、欲望の捌け口とか』
「アニキはモテる。必要ない」
『そんな事ないです! アニキがいくらモテても、私が一番だって言ってました。悪魔の契約があるから……』
なんで俺ムキになってるんだろう。でも俺のいいところは身体だって言ってたから間違い無いはずだ。足枷付けられるくらい執着されてるんだぞ。たとえ恋人じゃなくても。それとも不死身じゃなくなるから近くに置いておきたいのかな。
「ミサキ」
スグリさんが俺の頭をポンポンと撫でる。
「アニキ、昔好きなものを傷つけられたり壊されたりして失ってる。だからアニキはずっと好きなもの作らなかった。でもミサキは違う。アニキが大事にしてるの分かる。アニキはミサキを失うのを怖がってる」
『そんな事ありません……』
「俺、そういうの分かる。アニキは言えないだけ」
スグリさんと話すのが辛くなって、毛布を被ってそっぽを向いた。
***
アニキが戻って来たのは日が沈んでからだった。
ふてくされていた俺も、トイレに行きたくなって呼んだり水を飲ませてもらったりしたせいか、スグリさんとは打ち解けていた。でもやっぱりアニキの顔は見られない。悲しいし腹も立ててるし。
それで毛布をかぶって拒絶していると、あっさり毛布を剥ぎ取られた。
『何するんですか!』
「土産だ」
アニキがテントの中に放ったのは、袋に入った荷物だった。
「アニキ、すごいっすね!」
スグリさんが中身を開けると、その中から新しい服、靴、雑貨がいくつかと紙の束が出てきた。それに滅多に食べられない加工肉の塊と、高額なお菓子。
『ルイーズさんのところでも戻って来たんですか?』
皮肉を込めて言うと、アニキに抱き寄せられる。逃げようと思ったけど足枷があるから無駄だった。
「そう怒るんじゃねーよ」
イヤリングの付いた方の耳を甘噛みされ、力が抜けた所で唇を奪われる。形だけ暴れてはみたけど、激しい口付けは、いつものおかえりのキスと同じだと気づいてちょっとだけ嬉しかった。
「ミサキ、かわいいっすね」
スグリさんがそう言い、恥ずかしさにかっとなって
『馬鹿にするなよ!』
と怒鳴ると、それよりも冷ややかな
「手を出したら腕がなくなると思え」
というアニキの声がした。
加工肉は切り取って火で炙って、みんなで食べる事にした。
この荒地でメインで食べられてる砂ワニの肉じゃない明らかな高級品で、スグリさんも嬉しそうだし俺も少しだけテンションが上がった。でも新しい服も靴も、お金がかかってる。アニキは乱闘騒ぎを起こして釈放されたばかりなのに、またルイーズさんにお金を借りたのかと思うと気持ちが晴れなかった。
俺が働いて返そうと思ってたのに……。アニキとルイーズさんが付き合ったり結婚したりすれば借金もなくなるんだろうな。
しばらくテントで寝ていると、スグリさんの声がした。
「起きてるか?」
話す気になれなくて黙っていると、スグリさんがテントに入ってくる。入口の幕を開けると外の光と空気が入って今が夕方近い事を知った。
『……顔、どうしたんですか?』
スグリさんの顔は片方だけ腫れていた。足も少し引きずっている。
「アニキにやられた。殺されるかと思った」
何故か笑顔で、なんでもないことのように話してる。
「殴られたの久しぶり。やっぱりアニキ強い」
『怒ってないんですか?』
「アニキは俺より上。怒らせたから殴られて当然」
盗賊も上下関係が厳しかったんだろうな。少しだけ同情する。
「それにアニキに殴られると嬉しい。へへへ……」
スグリさん、俺と同じドMだな。ちょっと引いたぞ。
「ミサキは大丈夫か? アニキは手加減しない。恋人も大変」
『恋人じゃありません。変な契約のせいで捨てられないだけです。利用されてるだけなんです』
スグリさんは腫れていない方の目をぱちくりさせた。
「ミサキのこと、アニキは利用してない。アニキが利用するやつ、金持ち、偉いやつ、強いやつ。ミサキにはどれもない」
うっ……なんだか馬鹿にされたような気がする。
『でも、欲望の捌け口とか』
「アニキはモテる。必要ない」
『そんな事ないです! アニキがいくらモテても、私が一番だって言ってました。悪魔の契約があるから……』
なんで俺ムキになってるんだろう。でも俺のいいところは身体だって言ってたから間違い無いはずだ。足枷付けられるくらい執着されてるんだぞ。たとえ恋人じゃなくても。それとも不死身じゃなくなるから近くに置いておきたいのかな。
「ミサキ」
スグリさんが俺の頭をポンポンと撫でる。
「アニキ、昔好きなものを傷つけられたり壊されたりして失ってる。だからアニキはずっと好きなもの作らなかった。でもミサキは違う。アニキが大事にしてるの分かる。アニキはミサキを失うのを怖がってる」
『そんな事ありません……』
「俺、そういうの分かる。アニキは言えないだけ」
スグリさんと話すのが辛くなって、毛布を被ってそっぽを向いた。
***
アニキが戻って来たのは日が沈んでからだった。
ふてくされていた俺も、トイレに行きたくなって呼んだり水を飲ませてもらったりしたせいか、スグリさんとは打ち解けていた。でもやっぱりアニキの顔は見られない。悲しいし腹も立ててるし。
それで毛布をかぶって拒絶していると、あっさり毛布を剥ぎ取られた。
『何するんですか!』
「土産だ」
アニキがテントの中に放ったのは、袋に入った荷物だった。
「アニキ、すごいっすね!」
スグリさんが中身を開けると、その中から新しい服、靴、雑貨がいくつかと紙の束が出てきた。それに滅多に食べられない加工肉の塊と、高額なお菓子。
『ルイーズさんのところでも戻って来たんですか?』
皮肉を込めて言うと、アニキに抱き寄せられる。逃げようと思ったけど足枷があるから無駄だった。
「そう怒るんじゃねーよ」
イヤリングの付いた方の耳を甘噛みされ、力が抜けた所で唇を奪われる。形だけ暴れてはみたけど、激しい口付けは、いつものおかえりのキスと同じだと気づいてちょっとだけ嬉しかった。
「ミサキ、かわいいっすね」
スグリさんがそう言い、恥ずかしさにかっとなって
『馬鹿にするなよ!』
と怒鳴ると、それよりも冷ややかな
「手を出したら腕がなくなると思え」
というアニキの声がした。
加工肉は切り取って火で炙って、みんなで食べる事にした。
この荒地でメインで食べられてる砂ワニの肉じゃない明らかな高級品で、スグリさんも嬉しそうだし俺も少しだけテンションが上がった。でも新しい服も靴も、お金がかかってる。アニキは乱闘騒ぎを起こして釈放されたばかりなのに、またルイーズさんにお金を借りたのかと思うと気持ちが晴れなかった。
俺が働いて返そうと思ってたのに……。アニキとルイーズさんが付き合ったり結婚したりすれば借金もなくなるんだろうな。
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