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旅行編 お墓参り〜赤砂の街
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アニキの知り合い……?
予想もしていなかった答えを聞いて、もう一度顔をまじまじと見つめると、一年以上前の記憶が脳の奥底から浮かび上がってきた。
こいつ、アニキの盗賊仲間の一人だ。
初めて会った時、リックと一緒に襲われた盗賊がアニキ以外に四人いた。
一人は俺を羽交い締めにした背の高い男、それにリックを気に入ってた小太り、中肉中背の男、あと一人後ろにくっついてた奴。確かアジトが襲われた事を察知してアニキに呼ばれてた人だ。あの時は暗かったし意識も朦朧としてたけど、おそらく間違いない。
『アニキ……って誰ですか?』
アニキは罰を受けたけど、この人はおそらく逃げ延びたんだから、いまだに盗賊をやっていてもおかしくない。盗賊には関わりたくない。すぐに逃げられるようにしよう。今は体力がないから長距離は逃げられないけど。
「俺はスグリ。お前、レヴィンのアニキ知らないか?」
『……知りません』
スグリは荷物からスモモみたいな果実を取り出してパクリと口に入れた。
美味しそうだな。
砂漠のオアシスに実る甘くて水分たっぷりの果物だ。一度食べたことがあるし、乾燥させた物なら屋台で売られてる。
俺がじっと見ていたので、スグリは袋からさらに一つ出して俺の膝に置いた。
「食うか?」
これはもしや、アニキの情報を渡せという賄賂なのでは?
『知らない人からはもらえません』
「変なやつだ。うまいのに。レヴィンのアニキも甘いものキライだった」
スグリはさらに荷物からガサガサと包みを取り出して、俺の横でいろいろ食べ始めた。
この人、大丈夫かな。
盗賊にしてはなんとなく間が抜けているような気がするけど。いや、それが盗賊の相手を油断させるテクニックかもしれないし。
「この街にいれば、アニキに会えるような気がしてた。アニキ、ここ好きだったから」
スグリは聞いてもいないのにペラペラと話しだして、逃げればいいのに俺もなんとなくその場にとどまってしまう。
この人、あからさまな武器も持ってないし、あまり殺気も感じない。アニキの凶悪オーラに慣れすぎて俺の危険察知力は退化してしまったんだろうか。
それになんとなく、アニキをどうして探しているのか気になった。出てきたばかりだけど、危険な人ならアニキに知らせないと。この人よりアニキが弱いとは思えないけど、密告とかされたら困る。
「アニキはよく屋台でペットを見てた」
『え?』
しまった。思わず反応してしまった。
「アニキ、ペットを飼うのが好きだった」
俺みたいなペットが、昔もいたんだろうか。つまり奴隷市場で買った性奴隷ってやつか。その話は聞きたくない。
座っているのに血の気がひきそうになって、手をギュッと握りしめる。そういえば骨占いの爺さんも、俺のことを見て新しいペットかって言ってた。
『そのペット達はどうなったんですか?』
「ん? そうだなぁ。あれは可哀想な出来事だった。ペットがいなくなって、アニキは探してた。そうしたら次の日ペットが丸焼きになって出てきた」
『ええっ⁉︎』
丸焼き⁉︎
火事になったのか? それとも火の魔法か何かで……。
「盗賊の頭がやった。頭はアニキの事気持ち悪いくらい気に入ってた。だから、アニキの好きなもの全部取り上げた。それからアニキはペットを飼うのをやめた」
『……怖』
なんだよそれ。アニキの不幸すぎる過去がまた一つ明らかになったぞ。それに、その奴隷も可哀想すぎる。
「だからアニキ、砂トカゲ食わない」
『え? トカゲ?』
「そう。アニキのペットの砂トカゲ。荒地では非常食になる」
え? ペットってトカゲなのか?
予想もしていなかった答えを聞いて、もう一度顔をまじまじと見つめると、一年以上前の記憶が脳の奥底から浮かび上がってきた。
こいつ、アニキの盗賊仲間の一人だ。
初めて会った時、リックと一緒に襲われた盗賊がアニキ以外に四人いた。
一人は俺を羽交い締めにした背の高い男、それにリックを気に入ってた小太り、中肉中背の男、あと一人後ろにくっついてた奴。確かアジトが襲われた事を察知してアニキに呼ばれてた人だ。あの時は暗かったし意識も朦朧としてたけど、おそらく間違いない。
『アニキ……って誰ですか?』
アニキは罰を受けたけど、この人はおそらく逃げ延びたんだから、いまだに盗賊をやっていてもおかしくない。盗賊には関わりたくない。すぐに逃げられるようにしよう。今は体力がないから長距離は逃げられないけど。
「俺はスグリ。お前、レヴィンのアニキ知らないか?」
『……知りません』
スグリは荷物からスモモみたいな果実を取り出してパクリと口に入れた。
美味しそうだな。
砂漠のオアシスに実る甘くて水分たっぷりの果物だ。一度食べたことがあるし、乾燥させた物なら屋台で売られてる。
俺がじっと見ていたので、スグリは袋からさらに一つ出して俺の膝に置いた。
「食うか?」
これはもしや、アニキの情報を渡せという賄賂なのでは?
『知らない人からはもらえません』
「変なやつだ。うまいのに。レヴィンのアニキも甘いものキライだった」
スグリはさらに荷物からガサガサと包みを取り出して、俺の横でいろいろ食べ始めた。
この人、大丈夫かな。
盗賊にしてはなんとなく間が抜けているような気がするけど。いや、それが盗賊の相手を油断させるテクニックかもしれないし。
「この街にいれば、アニキに会えるような気がしてた。アニキ、ここ好きだったから」
スグリは聞いてもいないのにペラペラと話しだして、逃げればいいのに俺もなんとなくその場にとどまってしまう。
この人、あからさまな武器も持ってないし、あまり殺気も感じない。アニキの凶悪オーラに慣れすぎて俺の危険察知力は退化してしまったんだろうか。
それになんとなく、アニキをどうして探しているのか気になった。出てきたばかりだけど、危険な人ならアニキに知らせないと。この人よりアニキが弱いとは思えないけど、密告とかされたら困る。
「アニキはよく屋台でペットを見てた」
『え?』
しまった。思わず反応してしまった。
「アニキ、ペットを飼うのが好きだった」
俺みたいなペットが、昔もいたんだろうか。つまり奴隷市場で買った性奴隷ってやつか。その話は聞きたくない。
座っているのに血の気がひきそうになって、手をギュッと握りしめる。そういえば骨占いの爺さんも、俺のことを見て新しいペットかって言ってた。
『そのペット達はどうなったんですか?』
「ん? そうだなぁ。あれは可哀想な出来事だった。ペットがいなくなって、アニキは探してた。そうしたら次の日ペットが丸焼きになって出てきた」
『ええっ⁉︎』
丸焼き⁉︎
火事になったのか? それとも火の魔法か何かで……。
「盗賊の頭がやった。頭はアニキの事気持ち悪いくらい気に入ってた。だから、アニキの好きなもの全部取り上げた。それからアニキはペットを飼うのをやめた」
『……怖』
なんだよそれ。アニキの不幸すぎる過去がまた一つ明らかになったぞ。それに、その奴隷も可哀想すぎる。
「だからアニキ、砂トカゲ食わない」
『え? トカゲ?』
「そう。アニキのペットの砂トカゲ。荒地では非常食になる」
え? ペットってトカゲなのか?
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