盗賊とペット(レヴィン編)

カム

文字の大きさ
上 下
49 / 65
旅行編 お墓参り〜赤砂の街

21

しおりを挟む
 アニキの知り合い……?

 予想もしていなかった答えを聞いて、もう一度顔をまじまじと見つめると、一年以上前の記憶が脳の奥底から浮かび上がってきた。

 こいつ、アニキの盗賊仲間の一人だ。
 初めて会った時、リックと一緒に襲われた盗賊がアニキ以外に四人いた。
 一人は俺を羽交い締めにした背の高い男、それにリックを気に入ってた小太り、中肉中背の男、あと一人後ろにくっついてた奴。確かアジトが襲われた事を察知してアニキに呼ばれてた人だ。あの時は暗かったし意識も朦朧としてたけど、おそらく間違いない。

『アニキ……って誰ですか?』

 アニキは罰を受けたけど、この人はおそらく逃げ延びたんだから、いまだに盗賊をやっていてもおかしくない。盗賊には関わりたくない。すぐに逃げられるようにしよう。今は体力がないから長距離は逃げられないけど。

「俺はスグリ。お前、レヴィンのアニキ知らないか?」

『……知りません』

 スグリは荷物からスモモみたいな果実を取り出してパクリと口に入れた。
 美味しそうだな。
 砂漠のオアシスに実る甘くて水分たっぷりの果物だ。一度食べたことがあるし、乾燥させた物なら屋台で売られてる。

 俺がじっと見ていたので、スグリは袋からさらに一つ出して俺の膝に置いた。

「食うか?」

 これはもしや、アニキの情報を渡せという賄賂なのでは?

『知らない人からはもらえません』
「変なやつだ。うまいのに。レヴィンのアニキも甘いものキライだった」

 スグリはさらに荷物からガサガサと包みを取り出して、俺の横でいろいろ食べ始めた。

 この人、大丈夫かな。
 盗賊にしてはなんとなく間が抜けているような気がするけど。いや、それが盗賊の相手を油断させるテクニックかもしれないし。

「この街にいれば、アニキに会えるような気がしてた。アニキ、ここ好きだったから」

 スグリは聞いてもいないのにペラペラと話しだして、逃げればいいのに俺もなんとなくその場にとどまってしまう。
 この人、あからさまな武器も持ってないし、あまり殺気も感じない。アニキの凶悪オーラに慣れすぎて俺の危険察知力は退化してしまったんだろうか。
 それになんとなく、アニキをどうして探しているのか気になった。出てきたばかりだけど、危険な人ならアニキに知らせないと。この人よりアニキが弱いとは思えないけど、密告とかされたら困る。

「アニキはよく屋台でペットを見てた」
『え?』

 しまった。思わず反応してしまった。

「アニキ、ペットを飼うのが好きだった」

 俺みたいなペットが、昔もいたんだろうか。つまり奴隷市場で買った性奴隷ってやつか。その話は聞きたくない。
 座っているのに血の気がひきそうになって、手をギュッと握りしめる。そういえば骨占いの爺さんも、俺のことを見て新しいペットかって言ってた。

『そのペット達はどうなったんですか?』
「ん? そうだなぁ。あれは可哀想な出来事だった。ペットがいなくなって、アニキは探してた。そうしたら次の日ペットが丸焼きになって出てきた」

『ええっ⁉︎』

 丸焼き⁉︎
 火事になったのか? それとも火の魔法か何かで……。

「盗賊の頭がやった。頭はアニキの事気持ち悪いくらい気に入ってた。だから、アニキの好きなもの全部取り上げた。それからアニキはペットを飼うのをやめた」

『……怖』

 なんだよそれ。アニキの不幸すぎる過去がまた一つ明らかになったぞ。それに、その奴隷も可哀想すぎる。

「だからアニキ、砂トカゲ食わない」
『え? トカゲ?』
「そう。アニキのペットの砂トカゲ。荒地では非常食になる」

 え? ペットってトカゲなのか?
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...