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旅行編 お墓参り〜赤砂の街
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ルイーズさんは店の奥から別の従業員を呼んで店番を頼むと、俺を部屋に案内してくれた。
ルイーズさんが案内してくれたのは、五階にあるこじんまりとした部屋だった。この建物は五階建てらしい。入ってみると屋根裏部屋という雰囲気だった。
「ごめんなさい。今は屋根裏しか空いてないの」
部屋には小さなベッドと机が一つ。衣装を入れる籠もある。
「トイレと手洗い場は隣の部屋にあるわ。お風呂は共同よ。地下にあるの」
『ありがとうございます』
今まで洞窟ハウスで暮らしてたから、すごく快適に思える。
「ええと……あまり事態が飲み込めてないのだけれど、ミサキ君は本当に奴隷じゃないのよね?」
『違います』
「じゃあ借金があるのかしら。それとも何か深い事情でも?」
『どうしてですか?』
「だって盗賊の仲間には見えないじゃない? レヴィンの素性、知っているのよね」
『実はアニキが盗賊をしていた時に、一度捕まったんです』
そう言うと、ルイーズさんはやっぱり、という目で俺を見た。
「一応聞いてみるんだけど、レヴィンから逃げようとか考えてる?」
『え? なんでですか?』
「良かった……その反応で安心したわ。私では逃してあげることはできないから。自分の意思で彼と一緒にいるのよね」
『はい』
アニキはけっこうアレな性格だけど、それだけは自信を持って言える。
ルイーズさんはベッドに腰掛けると、俺を隣に座るように促した。
「実はね、昔からレヴィンは、時々ここに奴隷を連れてきていたの。まだ彼が十代の頃よ。怯えた若い奴隷を連れてきては、私の知り合いの商人に売るよう頼まれてたわ」
『そう……なんですか』
そんな昔からの知り合いなのか。
え? まさか俺も売られるんじゃないよな。
「私も昔はいろいろあって、商人や貴族に知り合いが多かったの。もちろん盗賊やガラの悪い連中もいたわ。中でもレヴィンは不思議な男だった。ひどい男だと思えば優しかったり、期待すると裏切られたり……」
ルイーズさんは、俺の知らない若い頃のアニキの事を知ってるのか。
それはとても不思議な感じだ。俺が知っている若い頃のアニキといえば、草むらで座り込んでいた子供の頃の姿だけだ。あれだって俺の作り出した妄想の夢なのかもしれないけど。
「やだ、私ったら、喋りすぎたわね」
俺がじっと見ている事に気付いて、ルイーズさんはわれに返ったみたいだった。
「夕食までに何か食べたいものがあれば持ってきてあげるわ。甘いものは好き?」
『好きです!』
久々のおやつ! すごく嬉しいぞ。
「よかった。では夕方までゆっくりしててね」
ルイーズさんはそう言って屋根裏部屋から出て行った。
その後、おやつを持ってきてくれたのは宿の別の従業員だった。ふわふわしたパンみたいな生地に、甘い蜜ががかっている。洞窟ハウスではまず食べられないお菓子だ。アニキは甘いものがそんなに好きじゃないから、ありがたく独り占めしよう。
一瞬で食べてしまうと、ベッドに横になった。ふかふかの誰かが用意してくれたベッド、快適すぎる。昨日の野宿や今までの疲れが出たのか、夕方まで泥のように眠ってしまった。
ルイーズさんが案内してくれたのは、五階にあるこじんまりとした部屋だった。この建物は五階建てらしい。入ってみると屋根裏部屋という雰囲気だった。
「ごめんなさい。今は屋根裏しか空いてないの」
部屋には小さなベッドと机が一つ。衣装を入れる籠もある。
「トイレと手洗い場は隣の部屋にあるわ。お風呂は共同よ。地下にあるの」
『ありがとうございます』
今まで洞窟ハウスで暮らしてたから、すごく快適に思える。
「ええと……あまり事態が飲み込めてないのだけれど、ミサキ君は本当に奴隷じゃないのよね?」
『違います』
「じゃあ借金があるのかしら。それとも何か深い事情でも?」
『どうしてですか?』
「だって盗賊の仲間には見えないじゃない? レヴィンの素性、知っているのよね」
『実はアニキが盗賊をしていた時に、一度捕まったんです』
そう言うと、ルイーズさんはやっぱり、という目で俺を見た。
「一応聞いてみるんだけど、レヴィンから逃げようとか考えてる?」
『え? なんでですか?』
「良かった……その反応で安心したわ。私では逃してあげることはできないから。自分の意思で彼と一緒にいるのよね」
『はい』
アニキはけっこうアレな性格だけど、それだけは自信を持って言える。
ルイーズさんはベッドに腰掛けると、俺を隣に座るように促した。
「実はね、昔からレヴィンは、時々ここに奴隷を連れてきていたの。まだ彼が十代の頃よ。怯えた若い奴隷を連れてきては、私の知り合いの商人に売るよう頼まれてたわ」
『そう……なんですか』
そんな昔からの知り合いなのか。
え? まさか俺も売られるんじゃないよな。
「私も昔はいろいろあって、商人や貴族に知り合いが多かったの。もちろん盗賊やガラの悪い連中もいたわ。中でもレヴィンは不思議な男だった。ひどい男だと思えば優しかったり、期待すると裏切られたり……」
ルイーズさんは、俺の知らない若い頃のアニキの事を知ってるのか。
それはとても不思議な感じだ。俺が知っている若い頃のアニキといえば、草むらで座り込んでいた子供の頃の姿だけだ。あれだって俺の作り出した妄想の夢なのかもしれないけど。
「やだ、私ったら、喋りすぎたわね」
俺がじっと見ている事に気付いて、ルイーズさんはわれに返ったみたいだった。
「夕食までに何か食べたいものがあれば持ってきてあげるわ。甘いものは好き?」
『好きです!』
久々のおやつ! すごく嬉しいぞ。
「よかった。では夕方までゆっくりしててね」
ルイーズさんはそう言って屋根裏部屋から出て行った。
その後、おやつを持ってきてくれたのは宿の別の従業員だった。ふわふわしたパンみたいな生地に、甘い蜜ががかっている。洞窟ハウスではまず食べられないお菓子だ。アニキは甘いものがそんなに好きじゃないから、ありがたく独り占めしよう。
一瞬で食べてしまうと、ベッドに横になった。ふかふかの誰かが用意してくれたベッド、快適すぎる。昨日の野宿や今までの疲れが出たのか、夕方まで泥のように眠ってしまった。
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