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旅行編 お墓参り〜赤砂の街
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結局、屋台で売っている、パンに何かを挟んだものを買って食べることにした。それから葉っぱに包まれたお肉も。
それを公園の石の椅子に座って食べる。公園には背の高いヤシの木みたいな木が生えていて、遊具や砂場は無いけど湧き水風の噴水は設置されている。そして鳩の代わりに鶏くらいの鮮やかな色の鳥がうろついている。
微笑ましい雰囲気だけど、何故かアニキが椅子に座っているだけで微笑ましさがどこかへ消えていくから不思議だ。鳥たちは俺を見つけてご飯のおこぼれをもらいにやってきたけど、アニキの姿を見て離れて行った。アニキの凶悪さは鳥にまで伝わるのか。
『これからどうするんですか?』
食べ終わってからアニキに尋ねる。
観光名所とか回るのかな。それとも買い物かな。確か僻地に行く前に旅の必需品を街で買い揃えるって言ってたよな。
「今から医者に行く。それから宿だ」
『え? アニキどこか悪いんですか?』
「馬鹿か。お前が行くんだよ」
『別にどこも悪くないです』
「いいから黙ってついて来い」
アニキは俺と違って赤砂の街に詳しい。洞窟ハウスに暮らしている時も、狩りをしてはここに売りに来ていたらしいし、多分盗賊時代にも何度か来ているんじゃないかな。
『アニキは赤砂の街にどのくらい来てるんですか?』
さりげなく手を繋いでみた。
アニキはちらっとそれを見たけど、別に手を振りほどいたりはしなかった。よしよし。顔は怖いけど嫌がってはなさそうだな。
『顔はもともと怖いし』
「何をぶつぶつ言っている」
『いえ、何でもないです』
アニキは呆れたように俺を見て、それから俺の質問に答えてくれた。
「昔暮らしていた」
『えっ⁉︎』
「少しだけだが」
『子供の頃ですか? それとも盗……』
盗賊時代と言いそうになって、慌てて口をつぐむ。
「その頃だな。戦利品を売りさばいていた。お頭が盗品を売りつけている商人がいたからな」
『その人、どうなったんですか?』
今もいるんだろうか。アニキの存在がバレたらまずいんじゃないか?
「安心しろ、今はいない。何故いないか知りたいか?」
『いえ、いいです』
アニキの黒い笑みを見て聞くのをやめた。 なんだか血なまぐさい話になりそうで怖い。
でも、昔住んでいたのなら他に知り合いとか居てもおかしく無いだろうな。気をつけよう。アニキを二度と島送りにしたくない。
「ここだ」
アニキがやって来たのは、路地裏にある小さな家だった。看板とか無いけど、本当に医者がいるのかな。
「おい、いるか?」
勝手に入り口を開けて入って行く。
中は暗くて、他に患者とか誰もいないんだけど大丈夫かな。
「誰だ、勝手に入りおって」
しばらくして奥から一人のお爺さんが出てきた。長い髪にヒゲを生やしている。俗世間にまみれた仙人みたいな雰囲気だ。お爺さんはアニキを見て一瞬目を見開いた。
「お前は死んだものと思っておったぞ」
「死に損なったのさ」
「で、何の用だ」
「こいつを診てやってくれ」
お爺さんが鋭い目で俺を見る。
『はじめまして』
ペコリと頭を下げると、お爺さんが優しく笑った。
「なるほど。お前が生きながらえたのはこいつのせいという訳か」
それを公園の石の椅子に座って食べる。公園には背の高いヤシの木みたいな木が生えていて、遊具や砂場は無いけど湧き水風の噴水は設置されている。そして鳩の代わりに鶏くらいの鮮やかな色の鳥がうろついている。
微笑ましい雰囲気だけど、何故かアニキが椅子に座っているだけで微笑ましさがどこかへ消えていくから不思議だ。鳥たちは俺を見つけてご飯のおこぼれをもらいにやってきたけど、アニキの姿を見て離れて行った。アニキの凶悪さは鳥にまで伝わるのか。
『これからどうするんですか?』
食べ終わってからアニキに尋ねる。
観光名所とか回るのかな。それとも買い物かな。確か僻地に行く前に旅の必需品を街で買い揃えるって言ってたよな。
「今から医者に行く。それから宿だ」
『え? アニキどこか悪いんですか?』
「馬鹿か。お前が行くんだよ」
『別にどこも悪くないです』
「いいから黙ってついて来い」
アニキは俺と違って赤砂の街に詳しい。洞窟ハウスに暮らしている時も、狩りをしてはここに売りに来ていたらしいし、多分盗賊時代にも何度か来ているんじゃないかな。
『アニキは赤砂の街にどのくらい来てるんですか?』
さりげなく手を繋いでみた。
アニキはちらっとそれを見たけど、別に手を振りほどいたりはしなかった。よしよし。顔は怖いけど嫌がってはなさそうだな。
『顔はもともと怖いし』
「何をぶつぶつ言っている」
『いえ、何でもないです』
アニキは呆れたように俺を見て、それから俺の質問に答えてくれた。
「昔暮らしていた」
『えっ⁉︎』
「少しだけだが」
『子供の頃ですか? それとも盗……』
盗賊時代と言いそうになって、慌てて口をつぐむ。
「その頃だな。戦利品を売りさばいていた。お頭が盗品を売りつけている商人がいたからな」
『その人、どうなったんですか?』
今もいるんだろうか。アニキの存在がバレたらまずいんじゃないか?
「安心しろ、今はいない。何故いないか知りたいか?」
『いえ、いいです』
アニキの黒い笑みを見て聞くのをやめた。 なんだか血なまぐさい話になりそうで怖い。
でも、昔住んでいたのなら他に知り合いとか居てもおかしく無いだろうな。気をつけよう。アニキを二度と島送りにしたくない。
「ここだ」
アニキがやって来たのは、路地裏にある小さな家だった。看板とか無いけど、本当に医者がいるのかな。
「おい、いるか?」
勝手に入り口を開けて入って行く。
中は暗くて、他に患者とか誰もいないんだけど大丈夫かな。
「誰だ、勝手に入りおって」
しばらくして奥から一人のお爺さんが出てきた。長い髪にヒゲを生やしている。俗世間にまみれた仙人みたいな雰囲気だ。お爺さんはアニキを見て一瞬目を見開いた。
「お前は死んだものと思っておったぞ」
「死に損なったのさ」
「で、何の用だ」
「こいつを診てやってくれ」
お爺さんが鋭い目で俺を見る。
『はじめまして』
ペコリと頭を下げると、お爺さんが優しく笑った。
「なるほど。お前が生きながらえたのはこいつのせいという訳か」
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