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おまけ 風邪引きアニキ
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すぐに眠るなんて、アニキけっこう弱ってるな。
いつも強いアニキが弱ってると心配だ。アニキは不死身だって安心していたのに、それは傷の治りが早いというだけの事なのかもしれない。病気になるなんて聞いてない。悪魔との契約で、アニキは俺が先に死んだら一緒に命がなくなるけど、アニキが先に死んでしまったら多分俺は生き残る。アニキが死んでひとりで取り残されるなんて冗談じゃない。
『アニキ、早く良くなって』
汗を拭いて、冷たい布で額を冷やす。
薬が効いてきたのか、アニキの呼吸も少し落ち着いてきたような気がしたので、台所へ行って保存してある食材から風邪が治りそうな料理を作ることにした。
「やっぱりお粥だよな……」
風邪を引いている時に食べたいものと言えば、お粥くらいしか思い浮かばない。後はフルーツとかアイスクリームみたいなものかな。アイスクリームは無理だから、フルーツで代用しよう。と言ってもアニキが甘い物を食べて喜んでる姿をこれまで一度も見たことないけど。
結局異世界のお米をお粥にして、乾燥した保存用の野草と調味料を少し混ぜた。
ベッドに戻って額を冷やしていた布を替えようとすると、アニキが目を覚ました。
「……どこへ行っていた」
『ご飯作ってました。アニキ、調子はどうですか?』
「水をよこせ」
『どうぞ』
相変わらず世話が焼けるな。でも熱があっても偉そうな態度だと安心だ。いつものアニキだな。
アニキは起き上がって水を一気に飲み干すと、そのまま立ち上がってどこかに行こうとするので焦る。
『トイレですか?』
「狩りに行く」
狩り⁉︎
『熱ありますけど! 何言ってるんですか? 外はまだ雨降ってます』
「雨の後しか獲れない魚がいる。売れば金になる」
『お金はいりませんから寝てください』
無理矢理アニキをベッドに連れ戻すと、アニキは呆れたように俺を見た。
「お前は金や食い物で苦労した事がねえのか。この程度で寝ていたら何も食えねえだろうが」
『じゃあ私が魚獲ってきます』
「お前には無理だろ」
『アニキだってフラフラなんだから無理です。魚はあきらめてください。熱が引くまで家から出しません』
睨み合いに発展した後、アニキはあきらめてベッドに戻った。勝った。
『お粥食べますか』
「……お前、楽しそうだな」
『アニキが弱ってるのちょっと可愛いです』
そう言うと、かなり怖いものを見るような目で見られた。ドン引きされたのか。
『違います。元気なアニキが一番です』
「添い寝するんじゃなかったのか」
あ、思ったより怒ってなさそうだ。
『何もしませんよ! 熱ありますからね。添い寝だけです』
「いいから寝ろ」
ベッドの隣にもぐり込もうとすると、アニキに服を脱げと言われた。
『何もしません。添い寝だけ!』
「しつこいな」
しぶしぶ服を脱いで、下着だけは身につけてベッドに入る。アニキが身体に腕を回してきて身構える。やっぱりまだ身体が熱い。
「ミサキ……」
『何ですか?』
アニキが何か言いかけたけど、何て言ったのか聞き取れなかった。
『お腹がすいたらお粥食べてください』
「お前の作る飯は不味いからな」
『そんな事ありません』
「料理も掃除も下手で狩りも苦手、手先も不器用だし戦力にもならねえ……」
ううっ……。アニキの俺への評価が酷すぎる。
『良いところ無いんですか?』
「身体だな」
『今日は何もしません』
じっと見つめられたので、不安になってアニキの目を見つめ返した。アニキの目の奥に何か俺の知らない真実が隠されているんじゃないかと思って。
『アニキは不死身ですよね……? 病気になってもすぐ治るんですよね?』
「死なねえよ。お前を殺さない限り」
嘘をついているようには見えない。
『よかった』
「くだらねえ事を考えるな」
『アニキが大好きです。アニキは? 私の事好きですか?』
そう聞くと、いきなり下着をずり下げられた。
『あ、うわ……何するんですか! 今日は添い寝だけ……あっ、痛っ、ああっ!』
何もほぐされてない場所に、いきなり指を突っ込まれ、そのままぐりぐり強めに刺激される。いつも激しくされているせいで、すぐに身体が痛みより快感を拾ってしまう。
「お前の事をどう思ってるか、死ぬ前になったら教えてやるよ」
ええ!? 何で死ぬ前?
『あ、アニキのケチ……んっ、ああっ』
涙目で訴えたのに、アニキはどこか楽しそうに見えた。熱下がったのか……?
「さすがは悪魔の契約だ。命を狙っている相手が目の前にいると、回復が早まるな」
『え? 本当、ですか……?』
「本当だ。お前の契約の印を触ると、苦しさが和らぐ」
そう言って、指を突っ込まれたまま、胸にある悪魔の契約印をベロリと舐められる。
そのまま気持ちよさに逆らえず、ひたすら喘がされるはめになった俺は、アニキが俺に嘘をついたなんて夢にも思わなかった。
***
『何もしないって言ったのに……!』
「腹が減った。お粥を持って来い」
『腰が痛くて無理です』
ぐちぐち言いながらベッドに突っ伏す俺を横目に、アニキはさっさと起き上がって台所へ言ってしまった。熱下がったみたいだ。俺より元気そう。よかった。
「……けっこう食えるな」
アニキが裸でお粥の入った器を片手に戻って来た。そのままお粥を食べて、外の様子を見に行く。
「ミサキ、雨が上がったぞ。早く起きろ。魚を獲りに行く」
『腰が痛いんですけど』
「嘘をつけ。今日は手加減してやったんだ。いつもよりマシだろうが」
確かに……。
回数も少ないから、本当はそれほど痛くない。
「痛ければ薬を塗ってやる」
『薬は自分で塗ります。狩りについて行っていいんですか?』
「お前に魚の獲り方を教えてやる。釣りくらいなら出来るだろう」
アニキが狩りに連れて行ってくれるなんて初めてだ。
『本当に風邪は治ったんですか?』
「ああ。早く準備しろ。魚が獲れたらそのまま赤砂の街に売りに行く」
『え?』
「お前もたまには街で美味いものが食いたいだろう」
『やったー! アニキ大好きです!』
嬉しくてアニキに飛びつく。
この後何度か赤砂の街に出かけては魚を売ってお金に替え、その後二人で約束の異世界旅行に出かける事になるのだけど、俺がそれを知るのはもう少し日にちが経ってからの事だった。
いつも強いアニキが弱ってると心配だ。アニキは不死身だって安心していたのに、それは傷の治りが早いというだけの事なのかもしれない。病気になるなんて聞いてない。悪魔との契約で、アニキは俺が先に死んだら一緒に命がなくなるけど、アニキが先に死んでしまったら多分俺は生き残る。アニキが死んでひとりで取り残されるなんて冗談じゃない。
『アニキ、早く良くなって』
汗を拭いて、冷たい布で額を冷やす。
薬が効いてきたのか、アニキの呼吸も少し落ち着いてきたような気がしたので、台所へ行って保存してある食材から風邪が治りそうな料理を作ることにした。
「やっぱりお粥だよな……」
風邪を引いている時に食べたいものと言えば、お粥くらいしか思い浮かばない。後はフルーツとかアイスクリームみたいなものかな。アイスクリームは無理だから、フルーツで代用しよう。と言ってもアニキが甘い物を食べて喜んでる姿をこれまで一度も見たことないけど。
結局異世界のお米をお粥にして、乾燥した保存用の野草と調味料を少し混ぜた。
ベッドに戻って額を冷やしていた布を替えようとすると、アニキが目を覚ました。
「……どこへ行っていた」
『ご飯作ってました。アニキ、調子はどうですか?』
「水をよこせ」
『どうぞ』
相変わらず世話が焼けるな。でも熱があっても偉そうな態度だと安心だ。いつものアニキだな。
アニキは起き上がって水を一気に飲み干すと、そのまま立ち上がってどこかに行こうとするので焦る。
『トイレですか?』
「狩りに行く」
狩り⁉︎
『熱ありますけど! 何言ってるんですか? 外はまだ雨降ってます』
「雨の後しか獲れない魚がいる。売れば金になる」
『お金はいりませんから寝てください』
無理矢理アニキをベッドに連れ戻すと、アニキは呆れたように俺を見た。
「お前は金や食い物で苦労した事がねえのか。この程度で寝ていたら何も食えねえだろうが」
『じゃあ私が魚獲ってきます』
「お前には無理だろ」
『アニキだってフラフラなんだから無理です。魚はあきらめてください。熱が引くまで家から出しません』
睨み合いに発展した後、アニキはあきらめてベッドに戻った。勝った。
『お粥食べますか』
「……お前、楽しそうだな」
『アニキが弱ってるのちょっと可愛いです』
そう言うと、かなり怖いものを見るような目で見られた。ドン引きされたのか。
『違います。元気なアニキが一番です』
「添い寝するんじゃなかったのか」
あ、思ったより怒ってなさそうだ。
『何もしませんよ! 熱ありますからね。添い寝だけです』
「いいから寝ろ」
ベッドの隣にもぐり込もうとすると、アニキに服を脱げと言われた。
『何もしません。添い寝だけ!』
「しつこいな」
しぶしぶ服を脱いで、下着だけは身につけてベッドに入る。アニキが身体に腕を回してきて身構える。やっぱりまだ身体が熱い。
「ミサキ……」
『何ですか?』
アニキが何か言いかけたけど、何て言ったのか聞き取れなかった。
『お腹がすいたらお粥食べてください』
「お前の作る飯は不味いからな」
『そんな事ありません』
「料理も掃除も下手で狩りも苦手、手先も不器用だし戦力にもならねえ……」
ううっ……。アニキの俺への評価が酷すぎる。
『良いところ無いんですか?』
「身体だな」
『今日は何もしません』
じっと見つめられたので、不安になってアニキの目を見つめ返した。アニキの目の奥に何か俺の知らない真実が隠されているんじゃないかと思って。
『アニキは不死身ですよね……? 病気になってもすぐ治るんですよね?』
「死なねえよ。お前を殺さない限り」
嘘をついているようには見えない。
『よかった』
「くだらねえ事を考えるな」
『アニキが大好きです。アニキは? 私の事好きですか?』
そう聞くと、いきなり下着をずり下げられた。
『あ、うわ……何するんですか! 今日は添い寝だけ……あっ、痛っ、ああっ!』
何もほぐされてない場所に、いきなり指を突っ込まれ、そのままぐりぐり強めに刺激される。いつも激しくされているせいで、すぐに身体が痛みより快感を拾ってしまう。
「お前の事をどう思ってるか、死ぬ前になったら教えてやるよ」
ええ!? 何で死ぬ前?
『あ、アニキのケチ……んっ、ああっ』
涙目で訴えたのに、アニキはどこか楽しそうに見えた。熱下がったのか……?
「さすがは悪魔の契約だ。命を狙っている相手が目の前にいると、回復が早まるな」
『え? 本当、ですか……?』
「本当だ。お前の契約の印を触ると、苦しさが和らぐ」
そう言って、指を突っ込まれたまま、胸にある悪魔の契約印をベロリと舐められる。
そのまま気持ちよさに逆らえず、ひたすら喘がされるはめになった俺は、アニキが俺に嘘をついたなんて夢にも思わなかった。
***
『何もしないって言ったのに……!』
「腹が減った。お粥を持って来い」
『腰が痛くて無理です』
ぐちぐち言いながらベッドに突っ伏す俺を横目に、アニキはさっさと起き上がって台所へ言ってしまった。熱下がったみたいだ。俺より元気そう。よかった。
「……けっこう食えるな」
アニキが裸でお粥の入った器を片手に戻って来た。そのままお粥を食べて、外の様子を見に行く。
「ミサキ、雨が上がったぞ。早く起きろ。魚を獲りに行く」
『腰が痛いんですけど』
「嘘をつけ。今日は手加減してやったんだ。いつもよりマシだろうが」
確かに……。
回数も少ないから、本当はそれほど痛くない。
「痛ければ薬を塗ってやる」
『薬は自分で塗ります。狩りについて行っていいんですか?』
「お前に魚の獲り方を教えてやる。釣りくらいなら出来るだろう」
アニキが狩りに連れて行ってくれるなんて初めてだ。
『本当に風邪は治ったんですか?』
「ああ。早く準備しろ。魚が獲れたらそのまま赤砂の街に売りに行く」
『え?』
「お前もたまには街で美味いものが食いたいだろう」
『やったー! アニキ大好きです!』
嬉しくてアニキに飛びつく。
この後何度か赤砂の街に出かけては魚を売ってお金に替え、その後二人で約束の異世界旅行に出かける事になるのだけど、俺がそれを知るのはもう少し日にちが経ってからの事だった。
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