盗賊とペット(レヴィン編)

カム

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エピローグ

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***

 隣で幸せそうに眠る青年を、レヴィンは眺めていた。
 レヴィンにはいまだに彼がどうして自分のもとに現れたのか理解出来なかった。自分は島で死んで当然の男だ。彼の人生を犠牲にしてまで生き延びるほど価値のある存在ではない。

 だが、すでに手放せなくなっていた。
 首輪が寝苦しそうだが、外してやる気になれない。彼は自分のもので、自分もまた彼のものだからだ。
 いつか彼がレヴィンから離れて行こうとするとき、レヴィンは彼を殺すだろう。自分にはそれを止められない。彼を殺す事は、自分を殺す事と同じ事だが。
 願わくばあの黒い使い魔が、レヴィンが彼を殺すより速くレヴィンの息の根を止めてくれればいいと思う。
 あの獣を見ていると、悪魔を思い出して憎悪が増す。
 自分で選んだとはいえ、レヴィンを長い復讐の人生に向かわせたのも、彼の身体に呪いの印を付けたのも悪魔だ。

 人生で一度だけ会った悪魔は、薄ら笑いを浮かべた顔でレヴィンに契約を持ちかけてきた。
 復讐に燃えていた若いレヴィンには、夢のような話だった。復讐を遂げるまで不死身になれるのだ。

「それなりの代償を支払ってもらうよ」
「かまわない」

 契約書に目を通し、血で名前を書く。

『お前は死ぬまで、愛する者に愛を語る事が出来ない』

 当時のレヴィンにはそこに書かれた代償など、とるにたりないものだった。一生誰かを愛する事などないと思っていたからだ。
 それから仕事や復讐のため、好きでもない女や男に偽りの愛の言葉を囁いてきた。相手はいつも簡単に騙されて、レヴィンの思うとおりに動いてくれた。レヴィンは代償の事などすっかり忘れていた。


「ミサキ……」

 隣に眠る彼がとても愛おしい。
 それでも、レヴィンの口からそれ以上の言葉がでる事はなかった。
 時おり不安そうな表情をする彼に、愛していると言えたらどんなに安心させられるだろう。だが、口からこぼれるのは彼を傷つける言葉だけだ。

 レヴィンはしばらく彼の寝顔を眺めると、愛していると言うかわりに深い口づけを落とした。



おわり
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