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魔物の島
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『ううっ……あ、あっ』
ゆるゆると浅い場所ばかり弄られて、意識が飛びそうだ。
目を閉じると、悪魔と呼ばれていた男の気味の悪い笑みが脳裏に浮かぶ。でも顔はどうやっても思い出せなかった。
『あ、アニキの……っ契約を、取り消……そうと、思っ……て……あっ、あ』
ゆっくりとした指の動きに合わせて、何とかそこまで言葉を繋ぐと、アニキの指の動きがピタリと止まった。
「うわっ……!」
船が強く揺れたのかと思った。でも違って、アニキに足を掴まれてひっくり返されただけだった。しかも指は入ったままだ。仰向けにされる途中で体内を擦られて足先まで快感が走る。
「無駄だ」
アニキがどこか諦めのこもった声で、それでも鋭さを失わない口調で囁く。顔を覗き込まれて、こんな時なのに格好いいな、と変な事を考えた。
「一度契約をむすべば、死ぬまで呪いは続く。俺が死んだ後、あの獣が俺を食って契約完了だ。それとも、食われて死ぬのかもな」
そこまで言うと、アニキが血で汚れ破れたシャツを脱ぎ捨てた。以前より痩せた体には、俺と同じような黒い入れ墨が存在する。
「……お前のこの印も、死ぬまで消える事はない」
アニキは俺の胸についた異世界の黒い文字にに舌を這わせた。
『あっ……あああっ!』
身体が、入れ墨の文字が、アニキの舌の感触に敏感に反応する。アニキには以前から逆らえる気がしなかったけど、こうして入れ墨に触れられると完全に抵抗する事が出来なくなった気がした。
円を描くように舌で愛撫され、同時に体内を弄る指の動きも再開された。喘ぎながら、アニキの少し伸びた髪に触れてくしゃくしゃにする。
『はあっ、ああっ……もっと』
「相変わらず淫乱だな」
アニキが少しだけ笑って、指を引き抜いた。
『ああっ、なんで……』
「契約内容を話せ。そうすればもっと気持ちよくさせてやる」
身体中にぐるぐると熱が回る。イキたい。
無意識に自身を弄ろうとして、アニキに両手をひとまとめに掴まれた。足の間にアニキの膝が割って入る。そのまま膝で袋をぐりぐりと押され呻く。
『だ、駄目です……それ、ダメ……』
「契約内容を話せ」
アニキは触って欲しい場所に触れる事無く、袋や股の間をゆっくりと撫でまわした。さっきまで与えられていた快感を急に弱い刺激に変えられて、もどかしさに泣きそうになる。
『悪魔が、契約は……変えられないって……でも、対象を、グ、リモフから……変える、事は……できる、って、あ! ひいっ!』
「……何だと!?」
アニキが袋をいきなり握り締めた。痛みはほとんどないけど潰されそうで怖い。でも今さら嘘を付けない。
『……だから、だからもう、アニキは……グリモフを狙っても、無駄です……。復讐相手を変えました』
握り潰される覚悟で言い切った。
船が揺れて光る石の瓶が転がり、光が遠ざかってアニキの顔が見えなくなった。無言のまま、ただ息遣いだけが聞こえる。
きっと怒ったはずだ。でも後悔はない。
「……代償は?」
『誰に変えたか聞かないのですか?』
アニキが暗闇で笑った気がした。
「お前だろう」
な、何であっさりバレたんだ!? 聞かれてもしばらくは誤魔化そうと思っていたのに。
「……つまり俺は、グリモフの代わりにお前を殺せば、死んで自由になれるって訳だ」
正解すぎて言葉が出ない。
口をパクパクさせる俺の胸元の入れ墨を、アニキが撫でる。逆らえない気持ちになるのは、アニキが俺の契約に関係しているからだ。
『あ、アニキは……ペットを殺しません』
「……どうだろうな」
正直自信が無かった。俺はアニキの復讐を邪魔ばかりしている。
「……で、代償は何だ。悪魔は金を取らない。金以外の何かを渡しただろう」
アニキは何を払ったんだろう。悪魔はそれについては教えてくれなかった。
『……記憶を』
「何だと?」
『悪魔は記憶を奪いました。正確には、岬修平という人間がいた事を、私とアニキ以外の人間の頭から……消しました』
アニキの動きが止まった。
「お前……恋人はどうした。石工の街の」
『きっと、私の事を忘れたと思います』
アニキに薬を飲ませた瞬間、指輪が光って砕け散った。確認する術はないけど、きっとあの時に、みんな俺の事を忘れたんだと思う。日本に住む家族も、異世界の友人も、職場で一緒に働いた仲間達も。
「……この、馬鹿が」
アニキが絞り出すように呟いた。
怒りが滲んだ声に身体が竦む。でも、それしかアニキを助ける方法が無かったんだ。
悲しみに浸る暇も無く両足を抱えられ、足の間にアニキの欲望を感じた瞬間、熱いそれで貫かれていた。
「ああっ! あっっ! ひ、ぁあああっ!」
痛み止めを飲んだから、ほとんど痛みは無いはずなのに、圧迫感と強すぎる快感で身体が苦しい。
アニキの怒りを現すように、めちゃくちゃに突かれ、揺さぶられる。胸の尖りを強く引かれ、入れ墨に爪を立てられた。
『あ、アニキ……! ごめん……なさ、い……ああっ、許して……くださ、あああっ』
気持ちいい部分を何度も擦られ、喘ぎながらうわごとのように謝る。
ふいに冷たい何かが顔にかかった。すがりつくように手を伸ばすと、アニキの頬が濡れていた。
アニキ、泣いているのかな……。
暗くて何も見えない。最奥を激しく突かれ、俺はそのうち意識を手放した。
ゆるゆると浅い場所ばかり弄られて、意識が飛びそうだ。
目を閉じると、悪魔と呼ばれていた男の気味の悪い笑みが脳裏に浮かぶ。でも顔はどうやっても思い出せなかった。
『あ、アニキの……っ契約を、取り消……そうと、思っ……て……あっ、あ』
ゆっくりとした指の動きに合わせて、何とかそこまで言葉を繋ぐと、アニキの指の動きがピタリと止まった。
「うわっ……!」
船が強く揺れたのかと思った。でも違って、アニキに足を掴まれてひっくり返されただけだった。しかも指は入ったままだ。仰向けにされる途中で体内を擦られて足先まで快感が走る。
「無駄だ」
アニキがどこか諦めのこもった声で、それでも鋭さを失わない口調で囁く。顔を覗き込まれて、こんな時なのに格好いいな、と変な事を考えた。
「一度契約をむすべば、死ぬまで呪いは続く。俺が死んだ後、あの獣が俺を食って契約完了だ。それとも、食われて死ぬのかもな」
そこまで言うと、アニキが血で汚れ破れたシャツを脱ぎ捨てた。以前より痩せた体には、俺と同じような黒い入れ墨が存在する。
「……お前のこの印も、死ぬまで消える事はない」
アニキは俺の胸についた異世界の黒い文字にに舌を這わせた。
『あっ……あああっ!』
身体が、入れ墨の文字が、アニキの舌の感触に敏感に反応する。アニキには以前から逆らえる気がしなかったけど、こうして入れ墨に触れられると完全に抵抗する事が出来なくなった気がした。
円を描くように舌で愛撫され、同時に体内を弄る指の動きも再開された。喘ぎながら、アニキの少し伸びた髪に触れてくしゃくしゃにする。
『はあっ、ああっ……もっと』
「相変わらず淫乱だな」
アニキが少しだけ笑って、指を引き抜いた。
『ああっ、なんで……』
「契約内容を話せ。そうすればもっと気持ちよくさせてやる」
身体中にぐるぐると熱が回る。イキたい。
無意識に自身を弄ろうとして、アニキに両手をひとまとめに掴まれた。足の間にアニキの膝が割って入る。そのまま膝で袋をぐりぐりと押され呻く。
『だ、駄目です……それ、ダメ……』
「契約内容を話せ」
アニキは触って欲しい場所に触れる事無く、袋や股の間をゆっくりと撫でまわした。さっきまで与えられていた快感を急に弱い刺激に変えられて、もどかしさに泣きそうになる。
『悪魔が、契約は……変えられないって……でも、対象を、グ、リモフから……変える、事は……できる、って、あ! ひいっ!』
「……何だと!?」
アニキが袋をいきなり握り締めた。痛みはほとんどないけど潰されそうで怖い。でも今さら嘘を付けない。
『……だから、だからもう、アニキは……グリモフを狙っても、無駄です……。復讐相手を変えました』
握り潰される覚悟で言い切った。
船が揺れて光る石の瓶が転がり、光が遠ざかってアニキの顔が見えなくなった。無言のまま、ただ息遣いだけが聞こえる。
きっと怒ったはずだ。でも後悔はない。
「……代償は?」
『誰に変えたか聞かないのですか?』
アニキが暗闇で笑った気がした。
「お前だろう」
な、何であっさりバレたんだ!? 聞かれてもしばらくは誤魔化そうと思っていたのに。
「……つまり俺は、グリモフの代わりにお前を殺せば、死んで自由になれるって訳だ」
正解すぎて言葉が出ない。
口をパクパクさせる俺の胸元の入れ墨を、アニキが撫でる。逆らえない気持ちになるのは、アニキが俺の契約に関係しているからだ。
『あ、アニキは……ペットを殺しません』
「……どうだろうな」
正直自信が無かった。俺はアニキの復讐を邪魔ばかりしている。
「……で、代償は何だ。悪魔は金を取らない。金以外の何かを渡しただろう」
アニキは何を払ったんだろう。悪魔はそれについては教えてくれなかった。
『……記憶を』
「何だと?」
『悪魔は記憶を奪いました。正確には、岬修平という人間がいた事を、私とアニキ以外の人間の頭から……消しました』
アニキの動きが止まった。
「お前……恋人はどうした。石工の街の」
『きっと、私の事を忘れたと思います』
アニキに薬を飲ませた瞬間、指輪が光って砕け散った。確認する術はないけど、きっとあの時に、みんな俺の事を忘れたんだと思う。日本に住む家族も、異世界の友人も、職場で一緒に働いた仲間達も。
「……この、馬鹿が」
アニキが絞り出すように呟いた。
怒りが滲んだ声に身体が竦む。でも、それしかアニキを助ける方法が無かったんだ。
悲しみに浸る暇も無く両足を抱えられ、足の間にアニキの欲望を感じた瞬間、熱いそれで貫かれていた。
「ああっ! あっっ! ひ、ぁあああっ!」
痛み止めを飲んだから、ほとんど痛みは無いはずなのに、圧迫感と強すぎる快感で身体が苦しい。
アニキの怒りを現すように、めちゃくちゃに突かれ、揺さぶられる。胸の尖りを強く引かれ、入れ墨に爪を立てられた。
『あ、アニキ……! ごめん……なさ、い……ああっ、許して……くださ、あああっ』
気持ちいい部分を何度も擦られ、喘ぎながらうわごとのように謝る。
ふいに冷たい何かが顔にかかった。すがりつくように手を伸ばすと、アニキの頬が濡れていた。
アニキ、泣いているのかな……。
暗くて何も見えない。最奥を激しく突かれ、俺はそのうち意識を手放した。
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