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魔物の島
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現れた黒い影は、アニキをずっと見張っていたあの黒い獣だった。
「クソが……!」
アニキは魔法銃を黒い獣に向ける。俺は咄嗟にアニキの腕を掴んでそれを阻止した。
『待ってください!』
「何しやがる」
『味方かもしれません』
さっきあの黒い獣は俺を食べなかった。それどころか、アニキの場所まで運んでくれた気がする。アニキや俺を殺すならもっと前に出来ていたはずだ。
「そんな筈がないだろうが」
アニキは俺の妨害をものともせず、魔法銃を黒い獣に向けて撃った。
だけど火炎放射のような魔法弾は、黒い獣に当たっても何の傷もつける事なくかき消えた。轟音はしたけど。
もしかして……高いお金出したのにこの武器おもちゃなのか? 二発に一発はハズレっていうルーレット的な武器とか? 俺、武器詐欺にあったのか?
そんな事を考えて呆然としていると、アニキが舌打ちして
「やはり無駄か……」
と呟いた。
え? 無駄って何?
『これ高かったんですけど……』
「……あれは普通の生き物じゃねえ。悪魔との契約で生まれた使い魔みたいなものだ。俺の憎悪と苦痛で成長する」
アニキは俺の言葉を華麗にスルーした。なるほど使い魔だから銃が効かないのか。……ていうか、憎悪と苦痛で成長!? あの黒い獣、滅茶苦茶でかいんですけど。
『アニキ……遅くなってすみません!』
「抱きつくな、邪魔だ」
俺とアニキを高い位置から見下ろしていた黒い獣は、無傷のまま優雅に跳躍した。そして急降下してきた翼竜を鋭い爪のある前足で叩き落とす。そのまま翼竜の細い首に噛みついた。
『ヒィー!』
「騒ぐな」
怖い。怖すぎる。
巨大獣対巨大獣の戦う映画を見ているみたいだ。巻き添えをくわないよう祈るしかない。地響きと轟音が伝わって体が震える。
……それにしてもアニキの憎悪、超強いな。
翼竜を次々となぎ倒す黒い獣にだんだん興奮してきたぞ。それに巨大だけど、カラスと戦う猫に見えない事もない。
翼竜達は黒い獣にかなわないと判断したのか、翼や体に傷を負ったまま飛び去って行った。残されたのは、俺とアニキだけだ。
黒い獣は相変わらず無傷のままアニキを見た。アニキも獣を睨む。
「どうした。ようやく俺を喰う気になったのか?」
アニキが満身創痍のくせに黒い獣を挑発する。獣はそれには乗らず、再びスフィンクスのようにどかりと座り込んだ。
俺はようやく痺れが取れたので、歩いて座る獣の鼻先に近づいていった。
「おい、ミサキ! よせ……!」
『大丈夫です』
アニキの憎悪だと思うと、最初ほど怖くなくなっていた。そっと鼻先に触ると、使い魔なのにはっきりと少し固くて艶のある毛並みが分かる。
『お願いがあります。私とアニキを、船まで運んでくれませんか?』
そう言うと、巨大な舌で顔をベロリと舐められた。
「クソが……!」
アニキは魔法銃を黒い獣に向ける。俺は咄嗟にアニキの腕を掴んでそれを阻止した。
『待ってください!』
「何しやがる」
『味方かもしれません』
さっきあの黒い獣は俺を食べなかった。それどころか、アニキの場所まで運んでくれた気がする。アニキや俺を殺すならもっと前に出来ていたはずだ。
「そんな筈がないだろうが」
アニキは俺の妨害をものともせず、魔法銃を黒い獣に向けて撃った。
だけど火炎放射のような魔法弾は、黒い獣に当たっても何の傷もつける事なくかき消えた。轟音はしたけど。
もしかして……高いお金出したのにこの武器おもちゃなのか? 二発に一発はハズレっていうルーレット的な武器とか? 俺、武器詐欺にあったのか?
そんな事を考えて呆然としていると、アニキが舌打ちして
「やはり無駄か……」
と呟いた。
え? 無駄って何?
『これ高かったんですけど……』
「……あれは普通の生き物じゃねえ。悪魔との契約で生まれた使い魔みたいなものだ。俺の憎悪と苦痛で成長する」
アニキは俺の言葉を華麗にスルーした。なるほど使い魔だから銃が効かないのか。……ていうか、憎悪と苦痛で成長!? あの黒い獣、滅茶苦茶でかいんですけど。
『アニキ……遅くなってすみません!』
「抱きつくな、邪魔だ」
俺とアニキを高い位置から見下ろしていた黒い獣は、無傷のまま優雅に跳躍した。そして急降下してきた翼竜を鋭い爪のある前足で叩き落とす。そのまま翼竜の細い首に噛みついた。
『ヒィー!』
「騒ぐな」
怖い。怖すぎる。
巨大獣対巨大獣の戦う映画を見ているみたいだ。巻き添えをくわないよう祈るしかない。地響きと轟音が伝わって体が震える。
……それにしてもアニキの憎悪、超強いな。
翼竜を次々となぎ倒す黒い獣にだんだん興奮してきたぞ。それに巨大だけど、カラスと戦う猫に見えない事もない。
翼竜達は黒い獣にかなわないと判断したのか、翼や体に傷を負ったまま飛び去って行った。残されたのは、俺とアニキだけだ。
黒い獣は相変わらず無傷のままアニキを見た。アニキも獣を睨む。
「どうした。ようやく俺を喰う気になったのか?」
アニキが満身創痍のくせに黒い獣を挑発する。獣はそれには乗らず、再びスフィンクスのようにどかりと座り込んだ。
俺はようやく痺れが取れたので、歩いて座る獣の鼻先に近づいていった。
「おい、ミサキ! よせ……!」
『大丈夫です』
アニキの憎悪だと思うと、最初ほど怖くなくなっていた。そっと鼻先に触ると、使い魔なのにはっきりと少し固くて艶のある毛並みが分かる。
『お願いがあります。私とアニキを、船まで運んでくれませんか?』
そう言うと、巨大な舌で顔をベロリと舐められた。
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