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魔物の島
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小さな船は意外と近代的な造りをしていた。完全に壊れているから、船としてはもう使えないだろうけど、避難部屋の機能は果たしてくれそうだ。
船内には何の生き物の気配もしない。じめじめして暗い事を除けばそれなりに快適だ。
リュックから光る石の入った瓶を出して最低限の灯りを確保すると、汚れたマントを脱いで干す。
顔の汚れを拭き取り、荷物から飲み水と保存食を取り出して口にした。
水と保存食は5日分。
でも、この島で5日間も生きのびられる気はしなかった。遅くても2日以内にはアニキを見つけ出して脱出したい。
苦労して手に入れた島の地図を出し、眺めた。この島には、中央に山があり、そのまわりを森が囲っている。
「転移した場所がこの岩場で、廃船のある海岸はここ……という事は……」
どういうルートで島を回るのがいいか真剣に悩む。翼竜から身を隠すには森に入るのが良さそうだけど、森は森で怖い生き物がいるんだろうな。
それにアニキが森の中にいるような気がしない。アニキは荒れ地とか岩場とか、開けた場所にいるイメージだ。あくまでもイメージだけど。
「川……」
地図には一本の川が書きこまれていた。
囚人は手ぶらでこの島に送り込まれる。俺が囚人なら、生き残る為にまず水を確保しようと思うんじゃないだろうか。比較的ここから近くにあるし、まず川に行ってみようと思った。
少しだけ休憩してから、再び荷物をまとめた。
船の壊れかけた扉から外の様子を伺う。翼竜も他の生き物も見えない。
マントを深くかぶり、俺は船の甲板から暗いピンクの砂浜に飛び降りた。
岩と岩の間に身を隠しながらじりじりと進む。空気は生ぬるく、湿度を含んでいた。
一時間くらい進んだだろうか。岩場が終わり、景色が一変した。
「何だ……ここ」
ボコボコと温泉が湧き出るような水音がする。何かが腐ったような匂いが立ちこめていた。
沼地だ。
茶色の沼のあちこちから、巨大生物の肋骨のような物がトンネルのように突き出ている。博物館で見るなら興奮出来る骨も、実際に出くわすと洒落にならないくらい気持ち悪い。
沼なんて地図に載ってたか?
方向間違えたんだろうか。
不安に思いながら、とにかく沼を迂回する事にした。森に入らない程度に内陸部に入ろうと、向きを変える。
歩きだそうとして足が止まった。
得体のしれない生き物が森から這い出してこっちにやって来ている。見た目は猿みたいだ。でも四足歩行で手足が長く、歩く姿は蜘蛛のようだ。
俺は岩陰に身を潜めて、蜘蛛猿に見付からないよう息を殺した。
船内には何の生き物の気配もしない。じめじめして暗い事を除けばそれなりに快適だ。
リュックから光る石の入った瓶を出して最低限の灯りを確保すると、汚れたマントを脱いで干す。
顔の汚れを拭き取り、荷物から飲み水と保存食を取り出して口にした。
水と保存食は5日分。
でも、この島で5日間も生きのびられる気はしなかった。遅くても2日以内にはアニキを見つけ出して脱出したい。
苦労して手に入れた島の地図を出し、眺めた。この島には、中央に山があり、そのまわりを森が囲っている。
「転移した場所がこの岩場で、廃船のある海岸はここ……という事は……」
どういうルートで島を回るのがいいか真剣に悩む。翼竜から身を隠すには森に入るのが良さそうだけど、森は森で怖い生き物がいるんだろうな。
それにアニキが森の中にいるような気がしない。アニキは荒れ地とか岩場とか、開けた場所にいるイメージだ。あくまでもイメージだけど。
「川……」
地図には一本の川が書きこまれていた。
囚人は手ぶらでこの島に送り込まれる。俺が囚人なら、生き残る為にまず水を確保しようと思うんじゃないだろうか。比較的ここから近くにあるし、まず川に行ってみようと思った。
少しだけ休憩してから、再び荷物をまとめた。
船の壊れかけた扉から外の様子を伺う。翼竜も他の生き物も見えない。
マントを深くかぶり、俺は船の甲板から暗いピンクの砂浜に飛び降りた。
岩と岩の間に身を隠しながらじりじりと進む。空気は生ぬるく、湿度を含んでいた。
一時間くらい進んだだろうか。岩場が終わり、景色が一変した。
「何だ……ここ」
ボコボコと温泉が湧き出るような水音がする。何かが腐ったような匂いが立ちこめていた。
沼地だ。
茶色の沼のあちこちから、巨大生物の肋骨のような物がトンネルのように突き出ている。博物館で見るなら興奮出来る骨も、実際に出くわすと洒落にならないくらい気持ち悪い。
沼なんて地図に載ってたか?
方向間違えたんだろうか。
不安に思いながら、とにかく沼を迂回する事にした。森に入らない程度に内陸部に入ろうと、向きを変える。
歩きだそうとして足が止まった。
得体のしれない生き物が森から這い出してこっちにやって来ている。見た目は猿みたいだ。でも四足歩行で手足が長く、歩く姿は蜘蛛のようだ。
俺は岩陰に身を潜めて、蜘蛛猿に見付からないよう息を殺した。
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