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悪魔との契約
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夜中の一時。
普段はたくさんの観光客で賑わう王都でも、さすがに人が少なくなる時間だ。
俺は数日前に自分で購入した大きめのリュックを背負い、地下にある収容所入り口にやってきていた。
王都は緑水湖という湖の中に浮かぶ島にあって、王宮を筆頭に高い建物ばかりが目立っているけど、実は地下にもそれなりの施設がある。
有名なのは、王都から北の領地に抜ける地下道だ。一度だけ見に行ったけど、たくさんの店が並び、地下とは思えないほど賑やかだった。
それとは別に、国民にほとんど知られていない施設もある。俺がいま立っているこの場所もそうだ。
地下7階にあり、一般人はほぼ立ち入り禁止になっている。
王宮の施設だけあって広くてきれいだけど、空気は重苦しい。この広間の先の扉は囚人達を閉じ込めておく収容所につながっている。と言っても裁判を待つ犯罪者達が一時的に入っている場所で、本当の監獄は北西の山の奥にあるらしいけど。
『お疲れさまです』
入り口にいた警備兵のお兄さんが、俺の顔を見て手を上げた。
「よう、珍しいな。夜勤か?」
『はい。最近忙しくて、あちこちに応援に行かされてます』
「そりゃ大変だな」
警備兵のお兄さんは、25歳になったばかりの地方出身の兵士で、故郷に残してきた恋人と遠距離恋愛中らしい。
王宮の食堂で何度か顔を合わせ、プライベートな話ができるほど仲良くなった。
「今日は何の仕事なんだ?」
『今日は魔力の強くなる日なので、魔方陣の見回りと各部署の魔力測定をしています』
「へぇー、そういえば同期の奴もそんな事言ってたな」
『魔力が高いといろいろトラブルが起きるので、事前に調べてるんです』
「魔法使いも大変だな」
『30分くらいで終わるので、中を見せて貰っていいですか?』
「分かった。許可証あるか?一応申請書も書いてくれ」
俺は警備兵の休憩所に行き、許可証を渡して、慣れない異世界文字で名前を書いた。
「でかい荷物だな。何が入ってるんだ?」
『仕事の七つ道具です。あとおやつも』
「おやつまであるのか」
警備兵のお兄さんが笑ったので、俺も笑ってみせた。
『緑水カフェのハムサンドとクッキーです。たくさんあるので少し食べませんか?』
「じゃあクッキーを少し貰おうかな」
甘党のお兄さんにクッキーを渡し、代わりに収容所に続く扉の鍵を貰った。鍵はフロア別に別れていて、魔法の鍵と物理的な鍵の二つがセットになっている。
「終わったらこの部屋に返しておいてくれ」
『ありがとうございます』
警備兵のお兄さんと別れ、収容所入り口の扉の前までやってきた。
鍵を使って中に入ると、中には長い廊下といくつか扉があった。確認のため異世界辞書をひっぱり出して、扉の文字を読んでいく。
そして一番入り口から遠い場所にある扉の前に立つ。再び鍵を使いその扉を開けると、部屋の中には黒い魔方陣が一つ、ほのかに輝いていた。
夜中の一時。
普段はたくさんの観光客で賑わう王都でも、さすがに人が少なくなる時間だ。
俺は数日前に自分で購入した大きめのリュックを背負い、地下にある収容所入り口にやってきていた。
王都は緑水湖という湖の中に浮かぶ島にあって、王宮を筆頭に高い建物ばかりが目立っているけど、実は地下にもそれなりの施設がある。
有名なのは、王都から北の領地に抜ける地下道だ。一度だけ見に行ったけど、たくさんの店が並び、地下とは思えないほど賑やかだった。
それとは別に、国民にほとんど知られていない施設もある。俺がいま立っているこの場所もそうだ。
地下7階にあり、一般人はほぼ立ち入り禁止になっている。
王宮の施設だけあって広くてきれいだけど、空気は重苦しい。この広間の先の扉は囚人達を閉じ込めておく収容所につながっている。と言っても裁判を待つ犯罪者達が一時的に入っている場所で、本当の監獄は北西の山の奥にあるらしいけど。
『お疲れさまです』
入り口にいた警備兵のお兄さんが、俺の顔を見て手を上げた。
「よう、珍しいな。夜勤か?」
『はい。最近忙しくて、あちこちに応援に行かされてます』
「そりゃ大変だな」
警備兵のお兄さんは、25歳になったばかりの地方出身の兵士で、故郷に残してきた恋人と遠距離恋愛中らしい。
王宮の食堂で何度か顔を合わせ、プライベートな話ができるほど仲良くなった。
「今日は何の仕事なんだ?」
『今日は魔力の強くなる日なので、魔方陣の見回りと各部署の魔力測定をしています』
「へぇー、そういえば同期の奴もそんな事言ってたな」
『魔力が高いといろいろトラブルが起きるので、事前に調べてるんです』
「魔法使いも大変だな」
『30分くらいで終わるので、中を見せて貰っていいですか?』
「分かった。許可証あるか?一応申請書も書いてくれ」
俺は警備兵の休憩所に行き、許可証を渡して、慣れない異世界文字で名前を書いた。
「でかい荷物だな。何が入ってるんだ?」
『仕事の七つ道具です。あとおやつも』
「おやつまであるのか」
警備兵のお兄さんが笑ったので、俺も笑ってみせた。
『緑水カフェのハムサンドとクッキーです。たくさんあるので少し食べませんか?』
「じゃあクッキーを少し貰おうかな」
甘党のお兄さんにクッキーを渡し、代わりに収容所に続く扉の鍵を貰った。鍵はフロア別に別れていて、魔法の鍵と物理的な鍵の二つがセットになっている。
「終わったらこの部屋に返しておいてくれ」
『ありがとうございます』
警備兵のお兄さんと別れ、収容所入り口の扉の前までやってきた。
鍵を使って中に入ると、中には長い廊下といくつか扉があった。確認のため異世界辞書をひっぱり出して、扉の文字を読んでいく。
そして一番入り口から遠い場所にある扉の前に立つ。再び鍵を使いその扉を開けると、部屋の中には黒い魔方陣が一つ、ほのかに輝いていた。
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