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ep6.王族と神子
8ハードル高すぎる
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ヴィカさんが変な予見を残してテントを後にしたせいで、俺とアルバートとの間に気まずい空気が生まれた。さっきの話、どういう意味だろう。やっぱり形だけの結婚じゃなくて、キス以上の事をしなさいって事なのかな。それとも何か俺の知らない契約をしないといけないんだろうか。
アルバートを見ると、何か考え込んでる。ルーリーさんのことかな。昔の俺が幼なじみのアルが好きだったからって、現在のアルバートには何も関係ないのに、占術師の予見で結婚させられた挙句に全部捧げろとか無茶苦茶だよ。
食事の前にアルバートが水に布を浸して絞り、顔や手を拭いてくれる。大神殿にいる時はエリンがしてくれていたあれ。少しずつ丁寧に拭いてくれるエリンと違って、アルバートにはごしごし拭かれるけど痛くない。さっきまで呪いを払った手は少し痺れていたけど、アルバートが両手と布で包んでくれたら温かくなって痺れもなくなった。
「ありがとう」
「いや、俺にはこれくらいしか出来ないからな」
「あ、あの。さっきの事、アルバートは気にしないで。占いの言う通りにしなきゃいけないなんておかしいよ。今でも充分だよ。アルバートにはルーリーさんもいるし……」
「占術師の言うことは絶対だが……他国の占術師の言葉だと信じていいか分からないな。とりあえず食事にするか」
「うん」
ルーリーさんのことには触れずに、アルバートはテーブルに料理を並べ始めた。ポケットから出て遊んでいたおもちが当然のようにやってきて料理を物色している。
料理を食べ終わると、トイレに行くため一度だけテントの外に連れ出してもらった。サデの国の兵士たちに逃げないように見張られていて、外に出る時はアルバートとは別行動だ。落ち着かなかったけど、さすがにトイレは覗かれたりしなかった。
ここは地下なのに風が吹いていて、背の高い植物が揺れていて不思議な風景だ。今は暗くて見えないけど、小さな穴があいていて光や空気が入ってくるのかも。抜け穴があればエルトリアに出られるかな。
眺めていると兵士に急かされたので仕方なくテントに戻った。
テントではアルバートが籠の中にクッションを敷いておもちのベッドを作っていた。おもちはベッドの中に木の実や硬貨をせっせと持ち込んでいる。おもちのベッドが出来上がると、アルバートはおもちを掴んで桶に浸し水洗いしてる。
怒ったおもちに手の甲をつつかれているのに、アルバートは平気な顔をしてる。水洗いが終わると布でごしごし拭かれておもちは毛玉みたいになった。ガルーダって炎を吐く妖鳥なのに大丈夫かな……。
「カナ、次はお前」
「え? 何が」
「これで身体を拭いてやるから服を脱げ」
「い、いいよ。遠慮しとく」
「遠慮するな」
逃げようとしたのにあっさり捕まった。
「自分でやるから大丈夫!」
恥ずかしさから必死に訴えたら、アルバートは足だけ洗うことで納得してくれた。足を洗ってもらうのも正直微妙なんだけど。
靴を脱がしてもらって、桶の水に足を浸すと、アルバートが洗ってくれる。くすぐったいし汚れているから恥ずかしいし、なんだか申し訳ない気持ちになる。洗い終わったら布で包んで痛み止めの魔法をかけてくれた。
「あとは自分でするから絶対に見ないでね!」
パーテーションの奥で素早く服を脱いで、そそくさと身体の泥や汚れを拭き取る。よく見れば、小さな呪いのカケラが砂埃に混ざってくっついていた。これはアルバートも俺が拭いてあげた方がいいかもしれない。
「終わったよ」
パーテーションから顔を出すと、アルバートが上半身裸でベッドの横に座っていて、飛び上がりそうになった。いまだに肌を見るとドキドキする。
「王族といってもほとんどの財産を捨てて避難したんだろうな。質のいい着替えはなさそうだ」
「それは仕方ないよ。それより拭いてる時に気づいたんだけど、小さな呪いがくっついてた。アルにも付いてないか診てもいい?」
「頼む」
見つめられて緊張するけど、とりあえずアルバートの隣に座って、髪や肌に呪いがないか確認する。俺みたいに少量ついていたから茶色い髪の中に指を入れて払い落とす。耳と、それから首筋も。幼なじみのアルと同じような耳の形。傷はないけど、銀の耳飾りがある。
指で擦っていたら、座っていたアルバートが俺の腰に手を回した。近すぎてやりにくいけど、それ以上は何もしないから雑念を捨てて呪いを払うことに専念する。
首が終わったら今度は胸……いや、素手でアルバートの上半身を撫で回すとか、俺にはハードルが高すぎる。そもそも俺にしか呪いって見えないんだから、ただの俺のエロい欲望だと思われるかも。絶対にそんなことないのに!
「もう終わりなのか?」
「あとは布で拭くよ」
「さっきまで指だったのに?」
「神子の俺が布といったら布なの!」
「残念だ。気持ちよかったのに」
アルバートがにやにやしてる。このアルバート、絶対に幼なじみのアルよりエロいな。
アルバートを見ると、何か考え込んでる。ルーリーさんのことかな。昔の俺が幼なじみのアルが好きだったからって、現在のアルバートには何も関係ないのに、占術師の予見で結婚させられた挙句に全部捧げろとか無茶苦茶だよ。
食事の前にアルバートが水に布を浸して絞り、顔や手を拭いてくれる。大神殿にいる時はエリンがしてくれていたあれ。少しずつ丁寧に拭いてくれるエリンと違って、アルバートにはごしごし拭かれるけど痛くない。さっきまで呪いを払った手は少し痺れていたけど、アルバートが両手と布で包んでくれたら温かくなって痺れもなくなった。
「ありがとう」
「いや、俺にはこれくらいしか出来ないからな」
「あ、あの。さっきの事、アルバートは気にしないで。占いの言う通りにしなきゃいけないなんておかしいよ。今でも充分だよ。アルバートにはルーリーさんもいるし……」
「占術師の言うことは絶対だが……他国の占術師の言葉だと信じていいか分からないな。とりあえず食事にするか」
「うん」
ルーリーさんのことには触れずに、アルバートはテーブルに料理を並べ始めた。ポケットから出て遊んでいたおもちが当然のようにやってきて料理を物色している。
料理を食べ終わると、トイレに行くため一度だけテントの外に連れ出してもらった。サデの国の兵士たちに逃げないように見張られていて、外に出る時はアルバートとは別行動だ。落ち着かなかったけど、さすがにトイレは覗かれたりしなかった。
ここは地下なのに風が吹いていて、背の高い植物が揺れていて不思議な風景だ。今は暗くて見えないけど、小さな穴があいていて光や空気が入ってくるのかも。抜け穴があればエルトリアに出られるかな。
眺めていると兵士に急かされたので仕方なくテントに戻った。
テントではアルバートが籠の中にクッションを敷いておもちのベッドを作っていた。おもちはベッドの中に木の実や硬貨をせっせと持ち込んでいる。おもちのベッドが出来上がると、アルバートはおもちを掴んで桶に浸し水洗いしてる。
怒ったおもちに手の甲をつつかれているのに、アルバートは平気な顔をしてる。水洗いが終わると布でごしごし拭かれておもちは毛玉みたいになった。ガルーダって炎を吐く妖鳥なのに大丈夫かな……。
「カナ、次はお前」
「え? 何が」
「これで身体を拭いてやるから服を脱げ」
「い、いいよ。遠慮しとく」
「遠慮するな」
逃げようとしたのにあっさり捕まった。
「自分でやるから大丈夫!」
恥ずかしさから必死に訴えたら、アルバートは足だけ洗うことで納得してくれた。足を洗ってもらうのも正直微妙なんだけど。
靴を脱がしてもらって、桶の水に足を浸すと、アルバートが洗ってくれる。くすぐったいし汚れているから恥ずかしいし、なんだか申し訳ない気持ちになる。洗い終わったら布で包んで痛み止めの魔法をかけてくれた。
「あとは自分でするから絶対に見ないでね!」
パーテーションの奥で素早く服を脱いで、そそくさと身体の泥や汚れを拭き取る。よく見れば、小さな呪いのカケラが砂埃に混ざってくっついていた。これはアルバートも俺が拭いてあげた方がいいかもしれない。
「終わったよ」
パーテーションから顔を出すと、アルバートが上半身裸でベッドの横に座っていて、飛び上がりそうになった。いまだに肌を見るとドキドキする。
「王族といってもほとんどの財産を捨てて避難したんだろうな。質のいい着替えはなさそうだ」
「それは仕方ないよ。それより拭いてる時に気づいたんだけど、小さな呪いがくっついてた。アルにも付いてないか診てもいい?」
「頼む」
見つめられて緊張するけど、とりあえずアルバートの隣に座って、髪や肌に呪いがないか確認する。俺みたいに少量ついていたから茶色い髪の中に指を入れて払い落とす。耳と、それから首筋も。幼なじみのアルと同じような耳の形。傷はないけど、銀の耳飾りがある。
指で擦っていたら、座っていたアルバートが俺の腰に手を回した。近すぎてやりにくいけど、それ以上は何もしないから雑念を捨てて呪いを払うことに専念する。
首が終わったら今度は胸……いや、素手でアルバートの上半身を撫で回すとか、俺にはハードルが高すぎる。そもそも俺にしか呪いって見えないんだから、ただの俺のエロい欲望だと思われるかも。絶対にそんなことないのに!
「もう終わりなのか?」
「あとは布で拭くよ」
「さっきまで指だったのに?」
「神子の俺が布といったら布なの!」
「残念だ。気持ちよかったのに」
アルバートがにやにやしてる。このアルバート、絶対に幼なじみのアルよりエロいな。
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