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ending
2 平凡な毎日
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***
日本に戻ってから数ヵ月が過ぎた。
俺の周りでは、相変わらず何事もなく時間が過ぎていった。
バイトは結局クビにはならなかった。
友人が、俺が風邪で倒れていたらしいと店長に話してくれた事もあるけど、本当の所はおそらく人手が足りないからだ。かなり説教はされたけど。
あれから康哉にいくら電話をしても、メールを送っても、康哉から返事がくる事はなかった。
実家に電話してみても
「康哉さんは海外に留学されました」
とお手伝いさんに言われるだけ。
康哉の借りていたアパートの部屋は、いつの間にか引き払われていた。
車を持っている友達に頼んで、昼間にあの廃屋まで連れて行ってもらったけど、康哉の車も廃屋も何も無かった。俺が道を間違えたのかもしれない。
両親には会っていないから分からないけど、誰も康哉がいなくなった事を、気にも止めていない。
(俺がいなくなっても、きっとあの人達は困らない)
そう言って悲しい顔をしていた康哉を思い出した。
大学に通いながらバイトをして、たまに友達と遊んだりする毎日。
屋根のある場所で眠れるし、食べ物も水もすぐに手に入る。危険な動物に怯えて暮らす事もない平和な毎日。それでも心の中にある寂しさは埋められ無かった。異世界の事なんて誰も信じないから、誰かと寂しさを分かち合う事も出来なかった。
一人の夜、携帯に収められている写真を見ると、泣いてしまいそうになる。
ラウルと一緒に写った写真、オッサンとメアリーの後ろ姿、リックの驚いた顔、ルーシェンと白い飛竜の写真、ついでにアニキのハメ撮り写真(結局全部は削除出来なかった)
異世界も、そこに住む人達も懐かしいし恋しい。今頃気づくなんて俺は大馬鹿だ。
サラリーマンになって、結婚して平凡な家庭を築くなんて俺にはもう無理なんだ。
コンパや飲み会に行って可愛い女の子を見ても、以前のように付き合いたいとは思えなくなっていた。誰とも番号を交換せず、二次会にも参加せずアパートに帰り一人で眠る。
寂しい夜に思い出す事と言えば、誰かの腕に抱かれて、背後から貫かれる気持ち良さだけ。噛みつかれたり舐められたりして、めちゃくちゃに揺さぶられたいのに、それは叶わない。結局一人で自分を慰め、朝になって自己嫌悪に陥る。
そんな日々の繰り返しだった。
日本に戻ってから数ヵ月が過ぎた。
俺の周りでは、相変わらず何事もなく時間が過ぎていった。
バイトは結局クビにはならなかった。
友人が、俺が風邪で倒れていたらしいと店長に話してくれた事もあるけど、本当の所はおそらく人手が足りないからだ。かなり説教はされたけど。
あれから康哉にいくら電話をしても、メールを送っても、康哉から返事がくる事はなかった。
実家に電話してみても
「康哉さんは海外に留学されました」
とお手伝いさんに言われるだけ。
康哉の借りていたアパートの部屋は、いつの間にか引き払われていた。
車を持っている友達に頼んで、昼間にあの廃屋まで連れて行ってもらったけど、康哉の車も廃屋も何も無かった。俺が道を間違えたのかもしれない。
両親には会っていないから分からないけど、誰も康哉がいなくなった事を、気にも止めていない。
(俺がいなくなっても、きっとあの人達は困らない)
そう言って悲しい顔をしていた康哉を思い出した。
大学に通いながらバイトをして、たまに友達と遊んだりする毎日。
屋根のある場所で眠れるし、食べ物も水もすぐに手に入る。危険な動物に怯えて暮らす事もない平和な毎日。それでも心の中にある寂しさは埋められ無かった。異世界の事なんて誰も信じないから、誰かと寂しさを分かち合う事も出来なかった。
一人の夜、携帯に収められている写真を見ると、泣いてしまいそうになる。
ラウルと一緒に写った写真、オッサンとメアリーの後ろ姿、リックの驚いた顔、ルーシェンと白い飛竜の写真、ついでにアニキのハメ撮り写真(結局全部は削除出来なかった)
異世界も、そこに住む人達も懐かしいし恋しい。今頃気づくなんて俺は大馬鹿だ。
サラリーマンになって、結婚して平凡な家庭を築くなんて俺にはもう無理なんだ。
コンパや飲み会に行って可愛い女の子を見ても、以前のように付き合いたいとは思えなくなっていた。誰とも番号を交換せず、二次会にも参加せずアパートに帰り一人で眠る。
寂しい夜に思い出す事と言えば、誰かの腕に抱かれて、背後から貫かれる気持ち良さだけ。噛みつかれたり舐められたりして、めちゃくちゃに揺さぶられたいのに、それは叶わない。結局一人で自分を慰め、朝になって自己嫌悪に陥る。
そんな日々の繰り返しだった。
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