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土曜日、午後6時
20 やっぱり俺の予想は正しかった
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ルーシェンの飛竜は、魔法の炎を避けて逆方向から王宮に向かっていた。俺が出てきた庭園とは真逆の方向だ。王宮は上層階でも広い。普通は上に行くほど狭くなりそうなものなのに、でこぼことよくわからない建物がくっついていて、これでよく下に落ちないと思う。
『ルーシェンが領地に向かった時にはアルマはいなかったんですか?』
飛竜に乗って移動している間に、気になっていた事を聞いてみた。
「昨日シュウヘイと別れた後、すぐに部下を連れてアルマの住む屋敷に向かったんだが、屋敷にいたのは使用人一人だった」
『魔法村がなくなったことに気づいて、逃げられたんでしょうか?』
「いや……」
『いや?』
「最初はそう思ったんだが、使用人の話では、アルマは二年ほど前に亡くなったという事だ」
『え!?』
「調べたが本当だった。埋葬された形跡もあるし、墓も存在していた」
『ではあれは別人ですか?』
「そうとも言えない。使用人の話では、アルマは生前から不老不死や若返りの魔術の研究を重ねていたそうだ。実際に屋敷の中には魔方陣や呪文がいたるところに書き込まれていた。村人に話を聞いたところ、アルマが死んで数日が過ぎた夜中、墓場の方から奇妙な音が聞こえてきたそうだ。それ以降夜になると、気味の悪い笑い声や、村の中を歩き回る足音が聞こえるそうだ。アルマによく似た女が、森をさ迷っている所を見た者もいた」
ホ、ホラーじゃないか!
「確認の為、部下と墓を掘り起こしたんだが、棺の中から大量の蛇が出現した。切り捨てると骨と髪の毛に変化したから呪術の一種だろう。どうした?シュウヘイ、顔色が悪いぞ」
こ、怖いぃぃ…。
墓を暴くのも怖いけど、死んだはずの女の人に、トイレでばったり会っちゃったよ!もう一人でトイレ行けない!
「しかし哀れだな。死んでなお、これほど王位に執着するとは」
『……アルマは王族でもないのに、なんでそんなに王位に執着するんでしょうか』
「分からない。アルマとは昔、王家主宰の食事会で何度か顔を会わせた事があるが、その時もダンスを申し込まれたり、自慢話を聞かされたり、指輪についてあれこれと質問されたくらいで、特に国政について興味があるようには思えなかった」
「……」
それはつまり、国政に興味があった訳じゃなくて……。
「権力とは、それほど人の心を狂わせるという事か」
いや、哀しそうにため息ついてるけど、多分権力がどうこうの問題じゃなくて、ただの女性問題だから。アルマは王子のストーカーだから。やっぱり俺の予想は正しかった!
如月が、女の人はみんなルーシェンの指輪を狙ってたって言ってたよな。そういえば俺、アルマの前でルーシェンの指輪投げたんだった。今思えば大それた事をしてしまった。アルマがキレるのも無理はないな。
「どうした?シュウヘイ。俺の顔に何かついているのか」
この爽やかな笑顔にアルマも騙されたんだろうな。
『いえ、何も』
「非常事態じゃなければ、このまま浮島まで飛行して、朝までシュウヘイと二人で過ごしたい所なのに、残念だ」
そう言ってニヤニヤしているルーシェン、全然非常事態だと思ってないだろ。
『ルーシェンが領地に向かった時にはアルマはいなかったんですか?』
飛竜に乗って移動している間に、気になっていた事を聞いてみた。
「昨日シュウヘイと別れた後、すぐに部下を連れてアルマの住む屋敷に向かったんだが、屋敷にいたのは使用人一人だった」
『魔法村がなくなったことに気づいて、逃げられたんでしょうか?』
「いや……」
『いや?』
「最初はそう思ったんだが、使用人の話では、アルマは二年ほど前に亡くなったという事だ」
『え!?』
「調べたが本当だった。埋葬された形跡もあるし、墓も存在していた」
『ではあれは別人ですか?』
「そうとも言えない。使用人の話では、アルマは生前から不老不死や若返りの魔術の研究を重ねていたそうだ。実際に屋敷の中には魔方陣や呪文がいたるところに書き込まれていた。村人に話を聞いたところ、アルマが死んで数日が過ぎた夜中、墓場の方から奇妙な音が聞こえてきたそうだ。それ以降夜になると、気味の悪い笑い声や、村の中を歩き回る足音が聞こえるそうだ。アルマによく似た女が、森をさ迷っている所を見た者もいた」
ホ、ホラーじゃないか!
「確認の為、部下と墓を掘り起こしたんだが、棺の中から大量の蛇が出現した。切り捨てると骨と髪の毛に変化したから呪術の一種だろう。どうした?シュウヘイ、顔色が悪いぞ」
こ、怖いぃぃ…。
墓を暴くのも怖いけど、死んだはずの女の人に、トイレでばったり会っちゃったよ!もう一人でトイレ行けない!
「しかし哀れだな。死んでなお、これほど王位に執着するとは」
『……アルマは王族でもないのに、なんでそんなに王位に執着するんでしょうか』
「分からない。アルマとは昔、王家主宰の食事会で何度か顔を会わせた事があるが、その時もダンスを申し込まれたり、自慢話を聞かされたり、指輪についてあれこれと質問されたくらいで、特に国政について興味があるようには思えなかった」
「……」
それはつまり、国政に興味があった訳じゃなくて……。
「権力とは、それほど人の心を狂わせるという事か」
いや、哀しそうにため息ついてるけど、多分権力がどうこうの問題じゃなくて、ただの女性問題だから。アルマは王子のストーカーだから。やっぱり俺の予想は正しかった!
如月が、女の人はみんなルーシェンの指輪を狙ってたって言ってたよな。そういえば俺、アルマの前でルーシェンの指輪投げたんだった。今思えば大それた事をしてしまった。アルマがキレるのも無理はないな。
「どうした?シュウヘイ。俺の顔に何かついているのか」
この爽やかな笑顔にアルマも騙されたんだろうな。
『いえ、何も』
「非常事態じゃなければ、このまま浮島まで飛行して、朝までシュウヘイと二人で過ごしたい所なのに、残念だ」
そう言ってニヤニヤしているルーシェン、全然非常事態だと思ってないだろ。
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