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土曜日、午前11時30分(レヴィン編)
5 賭け
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浴室を出ると、再び丸い板のある部屋に連れていかれ、どこかに移動する。
一瞬逆らってみたものの、無駄な抵抗だった。金縛りこそないけど、部下にガッチリ体を押さえつけられている。
この部下、風呂場でグリモフと一緒に俺の醜態を見ていたんだよな。心なしか牢から連れ出された時より接触が多い気がする。
「到着~」
そうこうしているうちに、何処かに辿り着いた。
ざわつく大勢の人々の声が耳に入ってくる。光り輝くカラフルな何かが、天井をゆったりと飛び回っていて目がチカチカした。
ようやく目が慣れてきてぎょっとする。
大広間に着飾った人々が集まっていた。異様なのは、みんな仮面を付けて顔を隠している所だ。顔を隠していない人たちは俺と同じ、キラキラした首輪に下着同然の姿で、飲み物を運んだり雑用をこなしたりしていた。
広間のあちこちに巨大水槽が点在していて、ちょっとオシャレかつ怪しげな雰囲気を醸し出している。水槽には水が半分くらい入っていて、一応陸地もある。ペンギンなんかが住んでそうだ。残念ながら一匹も見当たらないけど。
「皆様、パーティーは楽しんでいるかしら」
グリモフの登場にギャラリーが道をあけた。太った仮面男が声をかけてくる。
「今回の商品もなかなか良かったよ」
「気に入っていただけて良かったわ~」
商品?
パーティーって、何かを売りさばくのが目的なのか。でも、どうせろくな商品じゃないんだろうな。盗品とか。
「彼も商品かね?まだ奴隷が残っていたとは嬉しいね」
やっぱりろくな商品じゃなかった!
仮面男の、仮面の下から覗く視線が怖い。
「あら、こんなチビ猿に興味が?この子は残念ながら違うのよ。これから始まる出し物の主役なの」
「それは残念だ。異国風の顔立ちだから、是非私の奴隷にしたかったが……。もしかして賭けの対象になるのかね?……よほどグリモフ殿の不興を買ったらしいな。若いのに勿体ない」
怖い会話が繰り広げられている!
「大丈夫ですわ。また新しい奴隷を仕入れておきますからね~」
グリモフは俺を引きずるように、巨大水槽の一つに連れていった。
脇に設置されている階段で、水槽の天井部分に上がれるらしい。嫌な予感しかしない。
「皆様~!これから楽しい賭けの始まりよ!今日の主役はこの子。どれだけの時間生き残れるか、よく考えてちょうだい~」
紅い唇の大男が悪魔に見えてきた。
「放せ!このオカマ野郎!」
部下は有無を言わさない力で、俺を階段の上に引きずっていった。
水槽への入り口は鉄格子によく似た扉で、グリモフはそこからのびる鎖と、俺のキラキラ首輪を繋ぐ。
「頑張れば掛け金も上がるから、すぐに死んだりしちゃ駄目よ」
グリモフは俺にそう言い残すと、部下と一緒に階段を降りていった。
「は・な・せーー!!」
わめく俺を無視して、広間では賭けが始まろうとしていた。
聞きたくもないのに
「彼は活きがいいから、少しは期待できそうだ」とか
「一瞬で終わりよ」
などという物騒な会話が聞こえる。
俺の人生、こんな所で終わりなのか…?
アニキでもいい。誰か助けてくれないかと会場を見回しても、仮面を被っているせいで誰の姿も分からなかった。
「アニキーー!ルーシェーーン!康哉ぁぁー!如月ーー!」
思い付く限りの名前を叫んでいる時だった。
ふいに誰かに呼ばれたような気がして下を見る。背の低い男が音もなく階段を登ってきていた。ギャラリーから死角になる位置で置物のように立ち止まる。
「……情報はいらんかね?」
じ、ジジイ……。
声をかけてきたのは、地蔵のような外見の、骨占いの爺だった。
一瞬逆らってみたものの、無駄な抵抗だった。金縛りこそないけど、部下にガッチリ体を押さえつけられている。
この部下、風呂場でグリモフと一緒に俺の醜態を見ていたんだよな。心なしか牢から連れ出された時より接触が多い気がする。
「到着~」
そうこうしているうちに、何処かに辿り着いた。
ざわつく大勢の人々の声が耳に入ってくる。光り輝くカラフルな何かが、天井をゆったりと飛び回っていて目がチカチカした。
ようやく目が慣れてきてぎょっとする。
大広間に着飾った人々が集まっていた。異様なのは、みんな仮面を付けて顔を隠している所だ。顔を隠していない人たちは俺と同じ、キラキラした首輪に下着同然の姿で、飲み物を運んだり雑用をこなしたりしていた。
広間のあちこちに巨大水槽が点在していて、ちょっとオシャレかつ怪しげな雰囲気を醸し出している。水槽には水が半分くらい入っていて、一応陸地もある。ペンギンなんかが住んでそうだ。残念ながら一匹も見当たらないけど。
「皆様、パーティーは楽しんでいるかしら」
グリモフの登場にギャラリーが道をあけた。太った仮面男が声をかけてくる。
「今回の商品もなかなか良かったよ」
「気に入っていただけて良かったわ~」
商品?
パーティーって、何かを売りさばくのが目的なのか。でも、どうせろくな商品じゃないんだろうな。盗品とか。
「彼も商品かね?まだ奴隷が残っていたとは嬉しいね」
やっぱりろくな商品じゃなかった!
仮面男の、仮面の下から覗く視線が怖い。
「あら、こんなチビ猿に興味が?この子は残念ながら違うのよ。これから始まる出し物の主役なの」
「それは残念だ。異国風の顔立ちだから、是非私の奴隷にしたかったが……。もしかして賭けの対象になるのかね?……よほどグリモフ殿の不興を買ったらしいな。若いのに勿体ない」
怖い会話が繰り広げられている!
「大丈夫ですわ。また新しい奴隷を仕入れておきますからね~」
グリモフは俺を引きずるように、巨大水槽の一つに連れていった。
脇に設置されている階段で、水槽の天井部分に上がれるらしい。嫌な予感しかしない。
「皆様~!これから楽しい賭けの始まりよ!今日の主役はこの子。どれだけの時間生き残れるか、よく考えてちょうだい~」
紅い唇の大男が悪魔に見えてきた。
「放せ!このオカマ野郎!」
部下は有無を言わさない力で、俺を階段の上に引きずっていった。
水槽への入り口は鉄格子によく似た扉で、グリモフはそこからのびる鎖と、俺のキラキラ首輪を繋ぐ。
「頑張れば掛け金も上がるから、すぐに死んだりしちゃ駄目よ」
グリモフは俺にそう言い残すと、部下と一緒に階段を降りていった。
「は・な・せーー!!」
わめく俺を無視して、広間では賭けが始まろうとしていた。
聞きたくもないのに
「彼は活きがいいから、少しは期待できそうだ」とか
「一瞬で終わりよ」
などという物騒な会話が聞こえる。
俺の人生、こんな所で終わりなのか…?
アニキでもいい。誰か助けてくれないかと会場を見回しても、仮面を被っているせいで誰の姿も分からなかった。
「アニキーー!ルーシェーーン!康哉ぁぁー!如月ーー!」
思い付く限りの名前を叫んでいる時だった。
ふいに誰かに呼ばれたような気がして下を見る。背の低い男が音もなく階段を登ってきていた。ギャラリーから死角になる位置で置物のように立ち止まる。
「……情報はいらんかね?」
じ、ジジイ……。
声をかけてきたのは、地蔵のような外見の、骨占いの爺だった。
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