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金曜日、午後7時(レヴィン編)
17 角馬車ツアー
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グリモフといえばあの有名なゆるキャラ……じゃなくアニキの狙っている男だよな。
通行人のおじさんは親切に、グリモフ邸までの行き方と、その先の恋人達の庭にある魔法の門までの道を教えてくれた。
グリモフ邸にはでかい庭があり、そこから隣接する魔法の門までは、お決まりの観光ルートらしいのだ。
『ありがとうございます』
おじさんにお礼を言って、恋人達の魔法の門を目指す。うっかりアニキに出会ったりしませんように。
「……これか?」
なるほど。
グリモフ邸は確かにでかかった。ちょっとした宮殿だ。ヴァネッサさんの家より縦に長く、装飾もゴテゴテしていて、金持ってる感が半端ない。
角のある馬の引く馬車?が数台グリモフ邸の前で停まり、観光客がぞろぞろ降りてきた。
一緒にやってきたガイドさんが庭園を案内してくれるらしい。ラキ王国角馬車ツアーだな。
俺はその観光客達にくっついて、一緒に庭を見て回る事にした。
「こちらがあの有名な貴族、グリモフ様のお屋敷です。お屋敷は遠くからしか眺められませんが、お庭は少し見せていただけますよ。豪華ですからしっかりご覧になってくださいね。お庭の植物達を持ち帰ったり触ったりするのは禁止です。建物に近づくのも禁止。それではお庭を横切って、恋人達の聖地!魔法の門まで向かいましょう」
ガイドさんの言葉に観光客達から歓声が飛ぶ。
テンション高いな、と思って観光客をよく見ると、みんな手を繋いだり腕を組んだりしている。もしかして、全員恋人同士なのか?男女だけじゃなく、男同士だったり、女同士だったりするんですけど。
いやいや、女の子同士は仲がいいから手を繋ぐのなんて普通だ。男同士のふれあいだってきっと、ラキ王国では当たり前なんだ。手を繋いでいる男二人も、腰に手をまわしている男同士も、きっと普通の友達だ。普通普通。
と思っていたら、前にいた二人組の男が見つめ合い、いきなりチュッと唇を合わせた。
「……!!」
友達じゃなかった!
目の前で見てしまった。男同士のキス!恥ずかしいぞ!人前でキスなんかするな!
極力見ないようにしながら観光客の後をついていく。
そういえば、俺もリックと人前でキスしたんだった。あんな感じだったのか……。なんか下半身に来るな。
それにしてもラキ王国、本当に同性同士の恋愛に寛大なんだな。俺以外に動揺してる奴がいない。みんな自分の恋人といちゃつくのに忙しくて、人の事なんて見ていない。あれ、恋人同士じゃないの、ガイドさんと俺だけ……?
なんか、寂しいな。俺は異世界人だし旅人だ。周りを見ても、知っている奴が一人もいない。
イチャイチャツアー客達と少し距離を取りながら、改めて庭とグリモフ邸を眺める。
確かに花の咲き乱れる庭は綺麗だ。花のトンネルや迷路のような植え込みが続く。たまに妙なオブジェが建っているけど、俺には芸術的な事はさっぱり分からない。だからこの裸の男の彫刻も、アートなんだろうな。
あっちにも裸の男の彫刻が……。向こうにもある。変なポーズだ。裸の男ありすぎだろ。ちょっと引くな。
裸の男達の彫刻を見ているうちに、ツアー客とはぐれてしまった。建物がすぐ近くに見える。
もしかして、パーティーが行われているんだろうか。気になって、俺は植え込みの隙間から建物の様子を伺う事にした。
通行人のおじさんは親切に、グリモフ邸までの行き方と、その先の恋人達の庭にある魔法の門までの道を教えてくれた。
グリモフ邸にはでかい庭があり、そこから隣接する魔法の門までは、お決まりの観光ルートらしいのだ。
『ありがとうございます』
おじさんにお礼を言って、恋人達の魔法の門を目指す。うっかりアニキに出会ったりしませんように。
「……これか?」
なるほど。
グリモフ邸は確かにでかかった。ちょっとした宮殿だ。ヴァネッサさんの家より縦に長く、装飾もゴテゴテしていて、金持ってる感が半端ない。
角のある馬の引く馬車?が数台グリモフ邸の前で停まり、観光客がぞろぞろ降りてきた。
一緒にやってきたガイドさんが庭園を案内してくれるらしい。ラキ王国角馬車ツアーだな。
俺はその観光客達にくっついて、一緒に庭を見て回る事にした。
「こちらがあの有名な貴族、グリモフ様のお屋敷です。お屋敷は遠くからしか眺められませんが、お庭は少し見せていただけますよ。豪華ですからしっかりご覧になってくださいね。お庭の植物達を持ち帰ったり触ったりするのは禁止です。建物に近づくのも禁止。それではお庭を横切って、恋人達の聖地!魔法の門まで向かいましょう」
ガイドさんの言葉に観光客達から歓声が飛ぶ。
テンション高いな、と思って観光客をよく見ると、みんな手を繋いだり腕を組んだりしている。もしかして、全員恋人同士なのか?男女だけじゃなく、男同士だったり、女同士だったりするんですけど。
いやいや、女の子同士は仲がいいから手を繋ぐのなんて普通だ。男同士のふれあいだってきっと、ラキ王国では当たり前なんだ。手を繋いでいる男二人も、腰に手をまわしている男同士も、きっと普通の友達だ。普通普通。
と思っていたら、前にいた二人組の男が見つめ合い、いきなりチュッと唇を合わせた。
「……!!」
友達じゃなかった!
目の前で見てしまった。男同士のキス!恥ずかしいぞ!人前でキスなんかするな!
極力見ないようにしながら観光客の後をついていく。
そういえば、俺もリックと人前でキスしたんだった。あんな感じだったのか……。なんか下半身に来るな。
それにしてもラキ王国、本当に同性同士の恋愛に寛大なんだな。俺以外に動揺してる奴がいない。みんな自分の恋人といちゃつくのに忙しくて、人の事なんて見ていない。あれ、恋人同士じゃないの、ガイドさんと俺だけ……?
なんか、寂しいな。俺は異世界人だし旅人だ。周りを見ても、知っている奴が一人もいない。
イチャイチャツアー客達と少し距離を取りながら、改めて庭とグリモフ邸を眺める。
確かに花の咲き乱れる庭は綺麗だ。花のトンネルや迷路のような植え込みが続く。たまに妙なオブジェが建っているけど、俺には芸術的な事はさっぱり分からない。だからこの裸の男の彫刻も、アートなんだろうな。
あっちにも裸の男の彫刻が……。向こうにもある。変なポーズだ。裸の男ありすぎだろ。ちょっと引くな。
裸の男達の彫刻を見ているうちに、ツアー客とはぐれてしまった。建物がすぐ近くに見える。
もしかして、パーティーが行われているんだろうか。気になって、俺は植え込みの隙間から建物の様子を伺う事にした。
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