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金曜日、午前9時15分(ルーシェン編)
16 中庭②
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気合いを入れて城門の扉を押してみたものの、ギイ、という嫌な音に足がすくむ。
さっき耳を澄ましたから、門の向こうに動くものがいない事はなんとなく分かっていたけど、実際に目で見るまで安心はできない。
ゆっくりと扉を開けて内側に入る。
城門の向こうは左右の中庭に伸びる道と正面の扉に続く道に分かれていた。一瞬だけどルーシェンと一緒に走ったので何となく覚えている。
ほっとした事に何もいなかった(目に見える範囲には)
正面の扉と右の中庭、どっちに行くべきか少し悩む。左の中庭は論外だ。ゾンビには二度と会いたくない。あいつが来ないうちにさっさとルーシェンを見つけ出そう。
俺は正面の豪華な扉に向かった。
城門と同じようにゆっくりと内側に押す。
光が届く範囲に何かが見えた。誰かの足だ。
『ルーシェ……』
声をかけると同時に、あいつあんな靴履いてたか?という疑問が湧く。
扉が勝手に全開になり、数メートル先に立っている人間の後ろ姿が見えた。
兵士、に見える。
痩せていて、心なしかフラフラと揺れているような気がする。ルーシェンじゃ……ない。
これはあれだ。
お邪魔しました、と心の中で言って扉を閉めた方がいい。閉めなくても逃げた方がいい。今ならまだ気づかれてない。
足音を立てないようにそっと後ずさろうとした時だった。
カラーン
想像以上の音量で鐘の音が響いた。
ビクッとし過ぎて足がつりそうになった。フラフラしていた兵士がぴたりと動きを止める。そしてその首だけが、あり得ない回転でこちらを向いた。
『お邪魔しました!』
それ以上その場にいるのが耐えられず、俺は振り向きもせずその場を離れた。
そして右側の中庭に逃げ込む。
「……怖すぎる」
中庭は昨日城壁から何もいないことを確認済みだ。残念な中庭とか思って悪かった。ゾンビがいないだけでオアシスに感じる。
気合い入れて侵入したのに一歩も中に入れないとか、なんて情けないんだ。でもリアルお化け屋敷怖すぎる。ゾンビゲームみたいに誰か俺にショットガンをくれ。武器がフライパンって勝てる気がしない。
「ショットガン……オッサンの使ってた銃でもいいな。欲を言えばバズーカ」
「アー……」
「あー……?」
何だこの声、嫌な予感。
逃げてきた道の向こうから、低いうめき声と土を踏みしめる音がする。悪寒が一気に全身を走り抜けた。
ここにいたらヤバい。
でも城壁は高くてよじ登れない。待ち伏せして反撃……は恐怖でちびりそうなので無理だ。
中庭の奥に小さい扉を発見した俺は、考えるのを止めて扉を開け中に滑り込んだ。
さっき耳を澄ましたから、門の向こうに動くものがいない事はなんとなく分かっていたけど、実際に目で見るまで安心はできない。
ゆっくりと扉を開けて内側に入る。
城門の向こうは左右の中庭に伸びる道と正面の扉に続く道に分かれていた。一瞬だけどルーシェンと一緒に走ったので何となく覚えている。
ほっとした事に何もいなかった(目に見える範囲には)
正面の扉と右の中庭、どっちに行くべきか少し悩む。左の中庭は論外だ。ゾンビには二度と会いたくない。あいつが来ないうちにさっさとルーシェンを見つけ出そう。
俺は正面の豪華な扉に向かった。
城門と同じようにゆっくりと内側に押す。
光が届く範囲に何かが見えた。誰かの足だ。
『ルーシェ……』
声をかけると同時に、あいつあんな靴履いてたか?という疑問が湧く。
扉が勝手に全開になり、数メートル先に立っている人間の後ろ姿が見えた。
兵士、に見える。
痩せていて、心なしかフラフラと揺れているような気がする。ルーシェンじゃ……ない。
これはあれだ。
お邪魔しました、と心の中で言って扉を閉めた方がいい。閉めなくても逃げた方がいい。今ならまだ気づかれてない。
足音を立てないようにそっと後ずさろうとした時だった。
カラーン
想像以上の音量で鐘の音が響いた。
ビクッとし過ぎて足がつりそうになった。フラフラしていた兵士がぴたりと動きを止める。そしてその首だけが、あり得ない回転でこちらを向いた。
『お邪魔しました!』
それ以上その場にいるのが耐えられず、俺は振り向きもせずその場を離れた。
そして右側の中庭に逃げ込む。
「……怖すぎる」
中庭は昨日城壁から何もいないことを確認済みだ。残念な中庭とか思って悪かった。ゾンビがいないだけでオアシスに感じる。
気合い入れて侵入したのに一歩も中に入れないとか、なんて情けないんだ。でもリアルお化け屋敷怖すぎる。ゾンビゲームみたいに誰か俺にショットガンをくれ。武器がフライパンって勝てる気がしない。
「ショットガン……オッサンの使ってた銃でもいいな。欲を言えばバズーカ」
「アー……」
「あー……?」
何だこの声、嫌な予感。
逃げてきた道の向こうから、低いうめき声と土を踏みしめる音がする。悪寒が一気に全身を走り抜けた。
ここにいたらヤバい。
でも城壁は高くてよじ登れない。待ち伏せして反撃……は恐怖でちびりそうなので無理だ。
中庭の奥に小さい扉を発見した俺は、考えるのを止めて扉を開け中に滑り込んだ。
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