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木曜日、午前6時(リック編)
3 魔法医者
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今度は物音で目が覚めた。
ベッド脇で人の動き回る音がする。
誰かが俺の寝てる部屋に入ってきたみたいだ。目を開けて気配をたどると、見たこともない長身の男が鞄から何かを取り出していた。こいつ誰だ?
男は長いストレートの髪を後ろで無造作に結び、動きやすそうな長い丈の服を着ている。
なんとなく服装や髪形から、危険な人間じゃない気がする。
「あ、目が覚めました?」
俺の視線に気づいたのか、男は振り返るとにかっと笑った。
「……ここは?」
「異国の方って言うのは本当みたいですね。私の言ってること分かりますか?」
『分かります』
「すいませんね。ちょっと重症の方の治療にあたってたものですから。盗賊に襲われたなんて、災難でしたね。あ、私は医者です。医者のマイクです」
『……私の名前は岬修平です。ここはどこですか?リックは?』
盗賊の仲間には見えなかったけど、医者と聞いてますます安心した。
「ここは兵士たちが利用する砦の一つですよ。四つの街の中間にあります。傷ついた兵士たちが休養をとったり、捕まえた盗賊を王都に送る前に収容する場所があります。リックは別の部屋で休んでますよ」
『そうですか。良かった』
「それにしても驚きました」
『え?』
マイクは俺に液体の入った瓶を差し出した。柔らかいストローみたいなチューブがセットになってる。
「お薬です。どうぞ」
素直に飲むと、母さんの残り物カレーみたいな味がした。体に良さそうだ……。
「実はリックと私は従兄弟なんですよ。リックがあなたを連れてきて、治療してくれと必死に言われた時には驚きました。あのリックにもようやく仲のいい友達が出来たんだと、感動しましたよ。昔から他人とは距離を置いてばかりで、全然打ち解けない子だったんで」
マイクは良く喋る男だった。
従兄弟のリックが本当に心配だったんだろうな。なんだかいたたまれない。俺だってリックには酷いことをしたのに……。
黙ってカレー味の薬を飲んでいると、マイクがベッド脇にやって来た。飲み終わった薬の瓶を受けとる。
「偉いですね。この薬は苦手な人が多いんです。調子はどうですか?」
『体が重くて動きません』
「盗賊に薬を飲まされたそうですね。おそらく媚薬の類いだと思います。でも、量も少ないですし、一回きりですから後遺症はないですよ」
『良かった……』
そっか。媚薬だったのか……。
媚薬ってあんな感じなのか。二度と飲みたくない。自分が自分じゃないみたいだった。
「体が重いのは、酷使しすぎたせいでしょうね。今から魔法で治しますから、そうすれば楽になりますよ」
魔法!?
そうか、ここは異世界だった。
魔法で治療って初体験だ。ちょっと興奮してきた。
「では失礼しますね」
『え?』
マイクはおもむろに俺の寝ているベッドに乗ると、体にかかっていたシーツを剥ぎ取った。
「大丈夫です。リラックスしていてください」
いやいや、俺、全裸なんですけど!
人が動けないのをいいことに、馬乗りになって裸を凝視とか……。セクハラだ!この変態医者!
と思ったけど、マイクは大真面目な顔をして、特に動じている様子もない。え、何これ俺がおかしいのかな?魔法で治療ってこれが普通?
『あの……何か着る物を』
マイクは俺の声なんて聞こえてないみたいだ。
手を動かして、何かブツブツ言いだした。仕方なく、かろうじて動かせる手で股間を隠してみた。
何か他に隠せるものはないか……横を見て手作り人形が目に入ったけど、こんな物で隠したらこっちが変態だろ。
マイクは俺の頭の上あたりに両手をかざしている。
「頭の痛みはありますか?」
『は、はい』
「では痛みを取っていきますね」
胡散臭い……。
これが異世界じゃなかったら、完全に詐欺か何かだと思うところだ。せめてマイクが女の人だったら嬉しいのに。
あれ……?
猜疑心に満ちた目で睨んでいると、何だか頭がほわんと暖かくなってきた。頭痛がすっと引いていく気がする。
そのうちマイクが俺のこめかみあたりに手を置き、ぐりぐりとこすりだした。
うへー。変な絵だと思うが気持ちいい。
それから目や頬、首筋に暖かい手が移動する。姉ちゃんがはまってたリンパマッサージってこんなやつだろうか。こんなに気持ちいいなら俺もはまりそうだ。魔法治療、あなどれないな。
「痛っ!」
「あ、すいません。大丈夫ですか?」
『い、痛いです。痛い!』
マイクの手が肩に移動し、急に痛みが走った。
「ここ、けっこう傷がひどいですね。ちょっと我慢してくださいね」
ギャーッ!
熱いし痛いぞ!何だったんださっきまでの気持ち良さは。
マイクが手を置いているのは、ラウルに噛みつかれて、アニキにしつこく刺激されたあの傷口だった。ラウルよりアニキより痛い!股間を押さえて暴れる俺をよそに、マイクは淡々と魔法治療を続けた。
「はい。かなりきれいに治りましたよ」
異世界だろうと医者は医者だな。こういう所は容赦ない。
「けっこうひどくされてますね」
『え?』
「傷だらけで、うっ血のあとがあちこちにあります」
そうだっただろうか……あんまり覚えていない。
ラウルが激しかったのは覚えてるが、盗賊相手の時は緊張と、その後は薬のせいで、自分の体なのにどんな目にあったのかよく分からなかった。
でも人にそう言われると、恥ずかしくて顔に血が上る。
自業自得とはいえ、俺が女の子なら、お嫁に行けない体にされたって泣いてもいい場面のような気がする。
マイクが治してくれるからまだマシか……。これで綺麗な体?に戻れるなら、痛みくらい我慢するべきだろうな。
「あうっ!」
と思った瞬間、マイクが俺の両方の乳首に触れた。
「こことか、完全に切れてますよ」
「あっ、ああっ!」
マイクが乳首をぐりぐりする!痛くないけど我慢は無理だ!これ、本当に治療か!?
ベッド脇で人の動き回る音がする。
誰かが俺の寝てる部屋に入ってきたみたいだ。目を開けて気配をたどると、見たこともない長身の男が鞄から何かを取り出していた。こいつ誰だ?
男は長いストレートの髪を後ろで無造作に結び、動きやすそうな長い丈の服を着ている。
なんとなく服装や髪形から、危険な人間じゃない気がする。
「あ、目が覚めました?」
俺の視線に気づいたのか、男は振り返るとにかっと笑った。
「……ここは?」
「異国の方って言うのは本当みたいですね。私の言ってること分かりますか?」
『分かります』
「すいませんね。ちょっと重症の方の治療にあたってたものですから。盗賊に襲われたなんて、災難でしたね。あ、私は医者です。医者のマイクです」
『……私の名前は岬修平です。ここはどこですか?リックは?』
盗賊の仲間には見えなかったけど、医者と聞いてますます安心した。
「ここは兵士たちが利用する砦の一つですよ。四つの街の中間にあります。傷ついた兵士たちが休養をとったり、捕まえた盗賊を王都に送る前に収容する場所があります。リックは別の部屋で休んでますよ」
『そうですか。良かった』
「それにしても驚きました」
『え?』
マイクは俺に液体の入った瓶を差し出した。柔らかいストローみたいなチューブがセットになってる。
「お薬です。どうぞ」
素直に飲むと、母さんの残り物カレーみたいな味がした。体に良さそうだ……。
「実はリックと私は従兄弟なんですよ。リックがあなたを連れてきて、治療してくれと必死に言われた時には驚きました。あのリックにもようやく仲のいい友達が出来たんだと、感動しましたよ。昔から他人とは距離を置いてばかりで、全然打ち解けない子だったんで」
マイクは良く喋る男だった。
従兄弟のリックが本当に心配だったんだろうな。なんだかいたたまれない。俺だってリックには酷いことをしたのに……。
黙ってカレー味の薬を飲んでいると、マイクがベッド脇にやって来た。飲み終わった薬の瓶を受けとる。
「偉いですね。この薬は苦手な人が多いんです。調子はどうですか?」
『体が重くて動きません』
「盗賊に薬を飲まされたそうですね。おそらく媚薬の類いだと思います。でも、量も少ないですし、一回きりですから後遺症はないですよ」
『良かった……』
そっか。媚薬だったのか……。
媚薬ってあんな感じなのか。二度と飲みたくない。自分が自分じゃないみたいだった。
「体が重いのは、酷使しすぎたせいでしょうね。今から魔法で治しますから、そうすれば楽になりますよ」
魔法!?
そうか、ここは異世界だった。
魔法で治療って初体験だ。ちょっと興奮してきた。
「では失礼しますね」
『え?』
マイクはおもむろに俺の寝ているベッドに乗ると、体にかかっていたシーツを剥ぎ取った。
「大丈夫です。リラックスしていてください」
いやいや、俺、全裸なんですけど!
人が動けないのをいいことに、馬乗りになって裸を凝視とか……。セクハラだ!この変態医者!
と思ったけど、マイクは大真面目な顔をして、特に動じている様子もない。え、何これ俺がおかしいのかな?魔法で治療ってこれが普通?
『あの……何か着る物を』
マイクは俺の声なんて聞こえてないみたいだ。
手を動かして、何かブツブツ言いだした。仕方なく、かろうじて動かせる手で股間を隠してみた。
何か他に隠せるものはないか……横を見て手作り人形が目に入ったけど、こんな物で隠したらこっちが変態だろ。
マイクは俺の頭の上あたりに両手をかざしている。
「頭の痛みはありますか?」
『は、はい』
「では痛みを取っていきますね」
胡散臭い……。
これが異世界じゃなかったら、完全に詐欺か何かだと思うところだ。せめてマイクが女の人だったら嬉しいのに。
あれ……?
猜疑心に満ちた目で睨んでいると、何だか頭がほわんと暖かくなってきた。頭痛がすっと引いていく気がする。
そのうちマイクが俺のこめかみあたりに手を置き、ぐりぐりとこすりだした。
うへー。変な絵だと思うが気持ちいい。
それから目や頬、首筋に暖かい手が移動する。姉ちゃんがはまってたリンパマッサージってこんなやつだろうか。こんなに気持ちいいなら俺もはまりそうだ。魔法治療、あなどれないな。
「痛っ!」
「あ、すいません。大丈夫ですか?」
『い、痛いです。痛い!』
マイクの手が肩に移動し、急に痛みが走った。
「ここ、けっこう傷がひどいですね。ちょっと我慢してくださいね」
ギャーッ!
熱いし痛いぞ!何だったんださっきまでの気持ち良さは。
マイクが手を置いているのは、ラウルに噛みつかれて、アニキにしつこく刺激されたあの傷口だった。ラウルよりアニキより痛い!股間を押さえて暴れる俺をよそに、マイクは淡々と魔法治療を続けた。
「はい。かなりきれいに治りましたよ」
異世界だろうと医者は医者だな。こういう所は容赦ない。
「けっこうひどくされてますね」
『え?』
「傷だらけで、うっ血のあとがあちこちにあります」
そうだっただろうか……あんまり覚えていない。
ラウルが激しかったのは覚えてるが、盗賊相手の時は緊張と、その後は薬のせいで、自分の体なのにどんな目にあったのかよく分からなかった。
でも人にそう言われると、恥ずかしくて顔に血が上る。
自業自得とはいえ、俺が女の子なら、お嫁に行けない体にされたって泣いてもいい場面のような気がする。
マイクが治してくれるからまだマシか……。これで綺麗な体?に戻れるなら、痛みくらい我慢するべきだろうな。
「あうっ!」
と思った瞬間、マイクが俺の両方の乳首に触れた。
「こことか、完全に切れてますよ」
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