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水曜日、午後10時(リック編)
9 回避行動
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「ミサキ様!」
遠くでリックの声が聞こえる。
ポタリと何かが顔にかかる感触も。俺は今、どうしてるんだ?
ペチペチと頬を叩かれた気がして目を開けた。目の前にリックの顔がある。泣いてるのか?頭がぼんやりして何も考えられない。
リックのずっと後ろに赤い光が見える。あれは何だろう、火事かな?それでこんなに暑いのか。
「ミサキ様!……しっかりしてください。起き上がれますか?」
俺は岩場に寝ていたみたいだ。
リックの言葉に頷いてゆっくりと立ち上がる。何だかふらふらするし背中も痛い。慌てて俺を支えたリックの手首は擦れて血が滲んでいた。
『どうしたんですか?』
気を失う前の事がなかなか思い出せなかった。何があったんだ?盗賊はどこに行った?ここにいるのはリックと俺の二人だけみたいだ。
いや……暗くてよく見えないけど、空に赤い光が飛びかっている。あれは何だろう?
「早く……早く逃げましょう。こちらへ」
リックが手に持ったマントを俺にかけてくれる。そういえば全裸だった。全然寒くないけど。むしろあつい。
『水……』
無性に喉が渇く。なんか俺、変だ。
「馬たちを探すまでもう少し待ってください。荷物の中に水がありますから」
『赤い光が……』
「王都の討伐チームが、盗賊を追ってるんです。ミサキ様、ここにいると戦いに巻き込まれます。危険ですから早く……!」
リックに腕を捕まれて、背筋にぞくぞくとしたものが走った。体が熱い。
なんだこれ。
自分でも意味が分からないけど、無性に誰かにキスしたい。
俺は腕を伸ばしてリックを抱き寄せると、驚愕の表情を浮かべるリックにかまわず、その唇に自分の唇を押しつけた。
自分から誰かにキスするのなんて、何カ月、いや何年振りだろう。そんな衝動すっかり忘れてた。
リックの唇は柔らかくて甘くて……俺は夢中になって味わった。心というより体が喜んでる気がする。もっと気持ち良くなりたい。頭の中がその感情だけに支配される。舌を絡めて、唾液を味わって、リックの体温に触れていたいし、もっと触ってもらいたい。
でも、ぐっと肩辺りを押されて我に返った。
「ミ……ミサキ様……何するんですか……」
リックが涙目でこっちを睨んでる。
『ご……ごめん、リック。喉が渇いて……』
「あなたは喉が渇いたら人にキスするんですか……?」
リックの手がわなわなしている。
あ、これは何ていうか……かなり怒ってるな。それはそうだよな、人見知りで誰かに触られるの嫌いなんだから。
キスされるなんてきっと……すごく嫌な事だろうな…。それも好きでも何でもない、むしろ嫌いなタイプの男に。
『……ごめんなさい』
「水を探すまで待ってください」
リックは怒っていたけど、俺の手を振りほどこうとはしなかった。
俺を支えたままゆっくりと歩き出す。謝ったし、落ち込みそうなくらい自分の行動に幻滅していたけど……それでも喉の渇きと体の熱さは全然収まらなかった。
むしろキスしたせいでひどくなった気がする。俺を支えるために腰にまわされたリックの手の感触が、歩くたびに振動と一緒に何かを伝えてくる。
倒れた時にすっかり萎えていたはずの俺の息子は完全に元気になって、痛いくらいに存在を主張している。マントの下は裸で元気いっぱいって、俺は変態みたいだ。そしてさっきから頭を占めている事も、変態とそう変わりない。
『ごめん……リック』
「ミサキ様?」
俺はリックの手を振りほどいた。
ふらつく足に力を入れ、リックと距離をとる。
『馬は一人で探してください』
それだけ告げると、リックとは逆方向に走った。
「ミサキ様!」
驚いたリックの声が背後から聞こえて来たけど、足を止めるわけにはいかない。
俺は今、何だかおかしくなってる。
それがさっき飲まされた薬のせいなのか何なのか分からなかったけど、このさいそんな事はどうでもいい。このまま一緒にいると、またキスしたり……それ以上の事まで要求してしまう。
リックがショックを受けないように、必死で盗賊の要求に応えたのに、その俺がリックにトラウマを植え付けてどうするんだ。今までの苦労が台無しだ。
無我夢中で走った俺は、何かにつまづいて暗闇の中派手に転んだ。
「……っ」
痛みはあまり感じなかった。
爆音も赤い光も遠ざかって、まわりは静かだ。聞こえるのは自分の荒い息の音だけ。
「……はあっ……はっ」
マントの下に手を伸ばし、全く萎える気配のない自身を掴む。
ピリピリとした疼きが体を襲った。体が熱い。これ以上我慢できない。痛みでも何でもいいから、気を失うまで出しつくしてしまいたい。
俺は岩場に突っ伏したまま、半ば冷たい岩に押しつけるようにしながら必死で息子を慰めた。
遠くでリックの声が聞こえる。
ポタリと何かが顔にかかる感触も。俺は今、どうしてるんだ?
ペチペチと頬を叩かれた気がして目を開けた。目の前にリックの顔がある。泣いてるのか?頭がぼんやりして何も考えられない。
リックのずっと後ろに赤い光が見える。あれは何だろう、火事かな?それでこんなに暑いのか。
「ミサキ様!……しっかりしてください。起き上がれますか?」
俺は岩場に寝ていたみたいだ。
リックの言葉に頷いてゆっくりと立ち上がる。何だかふらふらするし背中も痛い。慌てて俺を支えたリックの手首は擦れて血が滲んでいた。
『どうしたんですか?』
気を失う前の事がなかなか思い出せなかった。何があったんだ?盗賊はどこに行った?ここにいるのはリックと俺の二人だけみたいだ。
いや……暗くてよく見えないけど、空に赤い光が飛びかっている。あれは何だろう?
「早く……早く逃げましょう。こちらへ」
リックが手に持ったマントを俺にかけてくれる。そういえば全裸だった。全然寒くないけど。むしろあつい。
『水……』
無性に喉が渇く。なんか俺、変だ。
「馬たちを探すまでもう少し待ってください。荷物の中に水がありますから」
『赤い光が……』
「王都の討伐チームが、盗賊を追ってるんです。ミサキ様、ここにいると戦いに巻き込まれます。危険ですから早く……!」
リックに腕を捕まれて、背筋にぞくぞくとしたものが走った。体が熱い。
なんだこれ。
自分でも意味が分からないけど、無性に誰かにキスしたい。
俺は腕を伸ばしてリックを抱き寄せると、驚愕の表情を浮かべるリックにかまわず、その唇に自分の唇を押しつけた。
自分から誰かにキスするのなんて、何カ月、いや何年振りだろう。そんな衝動すっかり忘れてた。
リックの唇は柔らかくて甘くて……俺は夢中になって味わった。心というより体が喜んでる気がする。もっと気持ち良くなりたい。頭の中がその感情だけに支配される。舌を絡めて、唾液を味わって、リックの体温に触れていたいし、もっと触ってもらいたい。
でも、ぐっと肩辺りを押されて我に返った。
「ミ……ミサキ様……何するんですか……」
リックが涙目でこっちを睨んでる。
『ご……ごめん、リック。喉が渇いて……』
「あなたは喉が渇いたら人にキスするんですか……?」
リックの手がわなわなしている。
あ、これは何ていうか……かなり怒ってるな。それはそうだよな、人見知りで誰かに触られるの嫌いなんだから。
キスされるなんてきっと……すごく嫌な事だろうな…。それも好きでも何でもない、むしろ嫌いなタイプの男に。
『……ごめんなさい』
「水を探すまで待ってください」
リックは怒っていたけど、俺の手を振りほどこうとはしなかった。
俺を支えたままゆっくりと歩き出す。謝ったし、落ち込みそうなくらい自分の行動に幻滅していたけど……それでも喉の渇きと体の熱さは全然収まらなかった。
むしろキスしたせいでひどくなった気がする。俺を支えるために腰にまわされたリックの手の感触が、歩くたびに振動と一緒に何かを伝えてくる。
倒れた時にすっかり萎えていたはずの俺の息子は完全に元気になって、痛いくらいに存在を主張している。マントの下は裸で元気いっぱいって、俺は変態みたいだ。そしてさっきから頭を占めている事も、変態とそう変わりない。
『ごめん……リック』
「ミサキ様?」
俺はリックの手を振りほどいた。
ふらつく足に力を入れ、リックと距離をとる。
『馬は一人で探してください』
それだけ告げると、リックとは逆方向に走った。
「ミサキ様!」
驚いたリックの声が背後から聞こえて来たけど、足を止めるわけにはいかない。
俺は今、何だかおかしくなってる。
それがさっき飲まされた薬のせいなのか何なのか分からなかったけど、このさいそんな事はどうでもいい。このまま一緒にいると、またキスしたり……それ以上の事まで要求してしまう。
リックがショックを受けないように、必死で盗賊の要求に応えたのに、その俺がリックにトラウマを植え付けてどうするんだ。今までの苦労が台無しだ。
無我夢中で走った俺は、何かにつまづいて暗闇の中派手に転んだ。
「……っ」
痛みはあまり感じなかった。
爆音も赤い光も遠ざかって、まわりは静かだ。聞こえるのは自分の荒い息の音だけ。
「……はあっ……はっ」
マントの下に手を伸ばし、全く萎える気配のない自身を掴む。
ピリピリとした疼きが体を襲った。体が熱い。これ以上我慢できない。痛みでも何でもいいから、気を失うまで出しつくしてしまいたい。
俺は岩場に突っ伏したまま、半ば冷たい岩に押しつけるようにしながら必死で息子を慰めた。
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