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水曜日、午後10時(リック編)
3 自然と一体になろう
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「……」
思ったよりヘビーな理由だった。
こういう時、気の効いた言葉を言えたためしがない。俺は幽霊にしかいじめられたことがないからな……。
「ミサキ様、やることもないですし、眠かったら寝ていいですよ。僕は起きてますから」
黙っていると、リックが気をきかせてそう言ってくれた。
『交代で寝ましょう』
「そういう訳には……」
『眠くなったら起こしてください』
「分かりました」
俺は横になっているケビンにもたれかかった。
ケビンは天然の毛布だ。ちょっと獣くさいが、俺がもたれても怒りもしないし、ケビンの毛が多少カピカピになったのは俺の涙や汗や鼻水のせいだから、贅沢は言えない。眠れる時に寝ておいた方がいいだろうしな。
横になって目を閉じる。
野宿でも一人じゃないから昨日より安心して眠れる。ケビンの手綱にくくりつけておいた、幸運の?手作り人形は枕にちょうどいい。子供に渡す時間はなかったけど、これはこれで意外と使えるかもな。人形を抱えて寝る男……リックは引いてるかもしれないが、安眠の為には多少の犠牲はつきものだ。
……その前にトイレ行きたいな。
『リック』
「眠れないんですか?」
『トイレ行きたいんですけど』
「……どうぞそのあたりで」
『……暗いので怖いです』
リックは黙って光る瓶を差し出した。
別に俺は気にしないから、ついてきてくれてもいいのに。
リックの方が嫌なんだろうな。ラウルと小屋にいた時は、俺もそんな面倒な事は嫌だった。あの時は小屋の中だったから気分が大きくなってたんだな。
物音にびくびくしながら、俺は一人瓶を片手に岩場を歩いていった。
光る瓶のおかげで、丘のそばにちょっとした崖があるのを発見した。灯りがなければ足を踏み外すかもしれず、危ないところだった。
しかしなかなかいい感じの場所だな。
誘惑には勝てず、俺は誰もいないのをいいことに、崖の上に立つ小便小僧のようにその場で用を足す事にした。一度やってみたかったんだ。昼間だったらもっと良かったな。
はー……。
俺が出したものが暗闇の中に吸い込まれていく。すごい解放感だ。俺は今、自然と一体になっている(気がする)
童心に帰るってこういう事だな。昔から成長してない気もするが。
けっこう溜まってたかも。
だらだら立ちションしていると、どこからか声が聞こえた気がして思わず尿が止まりそうになった。
「……?」
空耳か?
「……雨が降ってきたぜ……」
「ああ?気のせいだろ?……」
「そんなはずはない。確かに上から……」
……誰かいる。
今度こそ驚いて止まった(というより終わった)確かに崖下から、風に乗って誰かの声(それも複数)が聞こえてきた。
隊長達かな?
いや、聞いた事のない声だった。
あせって異世界ズボンを戻し、リックのもとに戻ろうと振り返って何かに衝突した。
「ぶへ!」
ぶつかったのは毛長ラクダのケビンだった。いつから背後に!
「ケビン……!驚かすなよ!」
小声で抗議したが、ケビンは悪びれもせず俺にすり寄ってきた。まさか、置いて行かれたと思ってついて来たのか?
「お前かわいいな」
妙に感動してケビンの首を撫でていると、ふいにさっきよりもっとはっきりと誰かの声が聞こえて俺は状況を思い出した。
「……おい。何か音がするぞ」
「上からだ……」
「獲物か?」
獲物!?
今、獲物って言ったよな?翻訳ミスじゃないよな?
俺は光る瓶を服の間に入れて光を隠し、ケビンと一緒にそっと岩の後ろに隠れて息を殺した。
思ったよりヘビーな理由だった。
こういう時、気の効いた言葉を言えたためしがない。俺は幽霊にしかいじめられたことがないからな……。
「ミサキ様、やることもないですし、眠かったら寝ていいですよ。僕は起きてますから」
黙っていると、リックが気をきかせてそう言ってくれた。
『交代で寝ましょう』
「そういう訳には……」
『眠くなったら起こしてください』
「分かりました」
俺は横になっているケビンにもたれかかった。
ケビンは天然の毛布だ。ちょっと獣くさいが、俺がもたれても怒りもしないし、ケビンの毛が多少カピカピになったのは俺の涙や汗や鼻水のせいだから、贅沢は言えない。眠れる時に寝ておいた方がいいだろうしな。
横になって目を閉じる。
野宿でも一人じゃないから昨日より安心して眠れる。ケビンの手綱にくくりつけておいた、幸運の?手作り人形は枕にちょうどいい。子供に渡す時間はなかったけど、これはこれで意外と使えるかもな。人形を抱えて寝る男……リックは引いてるかもしれないが、安眠の為には多少の犠牲はつきものだ。
……その前にトイレ行きたいな。
『リック』
「眠れないんですか?」
『トイレ行きたいんですけど』
「……どうぞそのあたりで」
『……暗いので怖いです』
リックは黙って光る瓶を差し出した。
別に俺は気にしないから、ついてきてくれてもいいのに。
リックの方が嫌なんだろうな。ラウルと小屋にいた時は、俺もそんな面倒な事は嫌だった。あの時は小屋の中だったから気分が大きくなってたんだな。
物音にびくびくしながら、俺は一人瓶を片手に岩場を歩いていった。
光る瓶のおかげで、丘のそばにちょっとした崖があるのを発見した。灯りがなければ足を踏み外すかもしれず、危ないところだった。
しかしなかなかいい感じの場所だな。
誘惑には勝てず、俺は誰もいないのをいいことに、崖の上に立つ小便小僧のようにその場で用を足す事にした。一度やってみたかったんだ。昼間だったらもっと良かったな。
はー……。
俺が出したものが暗闇の中に吸い込まれていく。すごい解放感だ。俺は今、自然と一体になっている(気がする)
童心に帰るってこういう事だな。昔から成長してない気もするが。
けっこう溜まってたかも。
だらだら立ちションしていると、どこからか声が聞こえた気がして思わず尿が止まりそうになった。
「……?」
空耳か?
「……雨が降ってきたぜ……」
「ああ?気のせいだろ?……」
「そんなはずはない。確かに上から……」
……誰かいる。
今度こそ驚いて止まった(というより終わった)確かに崖下から、風に乗って誰かの声(それも複数)が聞こえてきた。
隊長達かな?
いや、聞いた事のない声だった。
あせって異世界ズボンを戻し、リックのもとに戻ろうと振り返って何かに衝突した。
「ぶへ!」
ぶつかったのは毛長ラクダのケビンだった。いつから背後に!
「ケビン……!驚かすなよ!」
小声で抗議したが、ケビンは悪びれもせず俺にすり寄ってきた。まさか、置いて行かれたと思ってついて来たのか?
「お前かわいいな」
妙に感動してケビンの首を撫でていると、ふいにさっきよりもっとはっきりと誰かの声が聞こえて俺は状況を思い出した。
「……おい。何か音がするぞ」
「上からだ……」
「獲物か?」
獲物!?
今、獲物って言ったよな?翻訳ミスじゃないよな?
俺は光る瓶を服の間に入れて光を隠し、ケビンと一緒にそっと岩の後ろに隠れて息を殺した。
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