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水曜日、午前2時(リック編)
1 悪夢
しおりを挟む廊下の先に灯りが洩れている。
「康哉!」
俺は前を歩く男の背中に叫んだ。
「そっちに行くな!」
この暗い場所は、俺達が異世界に来るきっかけになった廃屋だ。あの時も真っ暗で、嫌な予感がして、背中がぞくぞくした。
「帰れなくなるぞ!」
俺の声を無視して、康哉の背中は廊下の向こうに消える。
「くそっ……!お前とは絶交だ。泣いてもしらねーぞ!」
恐怖をまぎらわせるために、大声で言いながら康哉の後を追う。廊下を曲がった先も、暗くて長い廊下が続いていた。ずっと先に康哉の背中がかろうじて見える。
……あの廃屋、こんなに広かったかな?
水曜日、午前2時
俺は終わりの見えない悪夢の中にいた。
「待てって!」
俺は廊下を走り、康哉が消えた部屋の前にたどり着くと、勢いよく扉を開けた。
……あれ?
その部屋は俺の想像と違っていた。魔方陣もソファーもなく、もっと広い。
最初に見えたのはテーブルと椅子だった。テーブルは、よく金持ちが使っているような長くて何人も座れるあれだ。一番奥に一つ、空いた椅子がぽつんと置かれている。その空いた椅子だけが、うすぼんやりとした灯りに照らされているが、あとは真っ暗だ。
ぞくぞくと背中に寒気が走った。この部屋にはたくさんの誰かがいる……。
真っ暗でよく見えないが、みんな椅子に誰かが座るのを待ってるんだ。何故か漠然とそう思う。
ふらふらと、俺より先に部屋に入った康哉が一つ空いた椅子に座ろうとしている。
「待てよ!」
思わずその手を掴んで引きとめた。
「……え?」
振り向いた男の顔を見て、その時はじめて気づいた。康哉じゃない。
そいつは黒い髪を長くのばして、頭の後ろで一つに結んでいる。ポニーテールというよりはどこかの侍みたいに見えた。男は驚いた顔でこっちを見たが、すぐにその端正な顔を歪めると、はっきりした声で俺に
「助けてくれ」
と言った。
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