One week

カム

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土曜日、午後11時30分

1 嫌な予感がしたんだ

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 「なあ……」

 前を歩く幼なじみに声をかける。

「もう帰ろうぜ」

 幼なじみはくるりと振り返ると、悪魔のような笑顔で俺の言葉を却下した。

「ただの家だろ?そんな怖がるなよ」
「怖がってねーよ!!」


 土曜日、午後11時30分。

 俺と幼なじみは山の中の廃屋に向かっていた。


***

 何でこんな事になったんだろう。

 いつものように幼なじみの康哉こうやがやって来て、免許取ったばかりの康哉とドライブに出かけて。
気づいたら何故か山奥にいた。

 道に迷ったのかと冷や汗の止まらない俺に対して康哉はいつも冷静だ。
路肩に車を止めると腕時計を見て時刻を確認した。

「この先にある廃屋……誰も住んでないのに時々灯りがつくらしいぜ」
「へー……」

 もしかして迷子になったわけじゃなく、ここが目的地だったのか?

「動く人影が窓から見えたり」
「誰かが無断で住んでるんじゃないのか?」
「でも誰もいないんだ」
「……気のせいだろ。動物の影とか」
「それを今から二人で確かめよう」
「俺、そういうの全然興味ないから!」

 むしろ今すぐ帰りたい。
康哉は俺がオカルトとかホラーとか大嫌いな事知ってて、たびたびこういう事を言ってくる。

「じゃ、俺一人で行ってくる。修平は車で待ってろよ」
「ま、待て!」

 こんな山奥の車の中に置き去りにする気か!?
焦って康哉の腕を掴むと、康哉はにやりと笑った。

「じゃ、一緒に行くか?」

 

 そんなわけで、今俺は行きたくもない廃屋に向かって康哉の後を歩いている。


 空は曇っていて月も星も見えない。
それでも、歩いていく康哉の姿はなんとなく分かる。

 歩くこと数分、目の前に木造らしき建物が見えてきた。
木造の建物は物置小屋と一軒家がくっついているが、建物全体は小さい。
死んだばーちゃんちをボロくしたような雰囲気だ。
昔の家ってみんなこんな感じなのか?
暗くてよく見えないが、今にも壊れそうな気がする。
誰も住んでなさそうだ。

「暗いな」

 康哉の言うとおり、廃屋には何一つ灯りなんてついてなかった。
周囲を照らすのは康哉の持っている携帯電話の明かりだけだ。

「な!灯りがついてるなんて嘘なんだよ。都市伝説だ。帰ろうぜ!」

早口でまくしたてながら康哉の服を引っ張った。
だが、康哉は恐ろしい事に廃屋の入り口と思われる扉に手をかけた。

ギィー

「ひーっ!」
「うわ、びっくりした。修平、いきなり叫ぶなよ」
「びっくりしたのはお前だ!入るな!不法侵入だ!」
「誰もいないから大丈夫だろ」

康哉はあっさりと建物の中に入っていった。
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