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新婚旅行
4 仕事っぽいな
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飛行船の動力部は浮島の中央部分にあって、最下層にあるとばかり思ってたから意外だった。そうだよな、ガレー船とかそういう船じゃないよな。
動力部のある部屋には、中央にまるい石版とそこに彫られた魔法陣があって、所々に魔法石が埋められている。基本の魔法陣を梅子さんに少しだけ習ったから、その魔法陣が高度な技術と呪文の構成でできていて、頭のいい人が作ったものだと分かる。それに魔法石の配置が綺麗だ。
「私は魔法関連部の設計課に所属しています。ホレスと申します。ミサキ様、今後とも宜しくお願いいたします」
そう言って一礼したのは、痩せた髪の長い男だった。長いローブを着ていて、ローブの色は緑。たしか緑は国王軍所属だったよな。
口調は丁寧だけど、なんとなく俺のことなんてこれっぽっちも敬っていないのが伝わってきた。オーラの色は赤だ。どこかで見たような色と形だな。
『よろしくお願いします』
にっこり笑って手を差し出すと、俺の左手を怪訝そうな表情で見つめている。左利きじゃないから戸惑ってるのか? それとももしかしてあれか? 妖精さんが見えてるのか?
「王子様の婚約者殿に触れることは出来ません。お許しを」
にこやかに告げられて、結局妖精さんが見えているのかどうなのか全然分からなかった。
こっちの世界にも少しくらい霊感のあるやつがいてもいいのにな。霊媒師とかいたら、妖精さんを除霊して欲しいのに。
どうやって操縦しているのか興味深々で尋ねたら、ホレスは意気揚々と話しだし、会話に専門用語が多すぎて理解するのを断念した。ホレスは研究者らしくて語り出すと止まらない。もう少し飛行機か船っぽい操縦だと思ったのに、全然そんなこともなかった。
動力部屋を後にしながら、気になったことを譲二さんに聞いてみる。
『ルーシェンの婚約者だと、触っちゃ駄目な感じなんですか?』
フィオネさんにはいつも注意されてたけど、抱きついたり跳びついたりが駄目なんだと思ってた。そういえば許可があるまで目も合わせちゃいけなかったよな。勝手に触ると罪になったりするのか? まさかな。
でも譲二さんは真顔で言った。
「非常事態を除けば、お許しがない限りミサキ様に触れる事はできません」
げげっ。
絶句した俺を見て、ポリムが付け足す。
「ミサキ様、私たち侍女や侍従は別ですわ。ミサキ様のお世話を任されているのですもの。私はミサキ様のお顔にも髪にも触れることができますのよ!」
なんだか目眩がしてきたぞ。
子供の頃から知らないおばちゃん達に撫で回されたり、同級生と追いかけっこしながら生きてきた俺なのに、触っちゃ駄目なのか。俺からはいいんだよな。それも駄目?
俺はまだまだこの世界の身分制度っていうものを理解していなかった。
それとも王子様という立場のすごさを分かってなかったのかな。俺はもっとフレンドリーな感じの王太子妃でいたいんだけど。
悩みながら歩いていると、フィオネさんと出会った。探していたらしい。
「ミサキ様、夕食までお時間がございます。その間に明日到着する赤砂の街の文化と治めている一族についてお教えしますのでこちらへどうぞ」
『分かりました』
この仕事っぽい感じはなんだろう。新婚旅行ってもっと気楽なものだと思ってたよ。
そう思っていた俺だけど、この先新婚旅行が気楽どころかとんでもない旅行に変貌する事に、この時はまだ気づいていなかった。
動力部のある部屋には、中央にまるい石版とそこに彫られた魔法陣があって、所々に魔法石が埋められている。基本の魔法陣を梅子さんに少しだけ習ったから、その魔法陣が高度な技術と呪文の構成でできていて、頭のいい人が作ったものだと分かる。それに魔法石の配置が綺麗だ。
「私は魔法関連部の設計課に所属しています。ホレスと申します。ミサキ様、今後とも宜しくお願いいたします」
そう言って一礼したのは、痩せた髪の長い男だった。長いローブを着ていて、ローブの色は緑。たしか緑は国王軍所属だったよな。
口調は丁寧だけど、なんとなく俺のことなんてこれっぽっちも敬っていないのが伝わってきた。オーラの色は赤だ。どこかで見たような色と形だな。
『よろしくお願いします』
にっこり笑って手を差し出すと、俺の左手を怪訝そうな表情で見つめている。左利きじゃないから戸惑ってるのか? それとももしかしてあれか? 妖精さんが見えてるのか?
「王子様の婚約者殿に触れることは出来ません。お許しを」
にこやかに告げられて、結局妖精さんが見えているのかどうなのか全然分からなかった。
こっちの世界にも少しくらい霊感のあるやつがいてもいいのにな。霊媒師とかいたら、妖精さんを除霊して欲しいのに。
どうやって操縦しているのか興味深々で尋ねたら、ホレスは意気揚々と話しだし、会話に専門用語が多すぎて理解するのを断念した。ホレスは研究者らしくて語り出すと止まらない。もう少し飛行機か船っぽい操縦だと思ったのに、全然そんなこともなかった。
動力部屋を後にしながら、気になったことを譲二さんに聞いてみる。
『ルーシェンの婚約者だと、触っちゃ駄目な感じなんですか?』
フィオネさんにはいつも注意されてたけど、抱きついたり跳びついたりが駄目なんだと思ってた。そういえば許可があるまで目も合わせちゃいけなかったよな。勝手に触ると罪になったりするのか? まさかな。
でも譲二さんは真顔で言った。
「非常事態を除けば、お許しがない限りミサキ様に触れる事はできません」
げげっ。
絶句した俺を見て、ポリムが付け足す。
「ミサキ様、私たち侍女や侍従は別ですわ。ミサキ様のお世話を任されているのですもの。私はミサキ様のお顔にも髪にも触れることができますのよ!」
なんだか目眩がしてきたぞ。
子供の頃から知らないおばちゃん達に撫で回されたり、同級生と追いかけっこしながら生きてきた俺なのに、触っちゃ駄目なのか。俺からはいいんだよな。それも駄目?
俺はまだまだこの世界の身分制度っていうものを理解していなかった。
それとも王子様という立場のすごさを分かってなかったのかな。俺はもっとフレンドリーな感じの王太子妃でいたいんだけど。
悩みながら歩いていると、フィオネさんと出会った。探していたらしい。
「ミサキ様、夕食までお時間がございます。その間に明日到着する赤砂の街の文化と治めている一族についてお教えしますのでこちらへどうぞ」
『分かりました』
この仕事っぽい感じはなんだろう。新婚旅行ってもっと気楽なものだと思ってたよ。
そう思っていた俺だけど、この先新婚旅行が気楽どころかとんでもない旅行に変貌する事に、この時はまだ気づいていなかった。
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