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一年ぶりの異世界
8 嬉しいんです
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「うわっ……!」
驚いて羽交い締めにしてきた腕を掴む。
でもその時、日本にいた時には一度も光らなかった指輪がふわりと青い光を放った。左手がほんのり温かくなる。
「……」
この青い光、抱きしめられた腕の中の居心地、頬をくすぐった黒い髪……。どれをとっても覚えがある。
ルーシェンだ。
そう思うと嬉しくて顔がにやけた。どうにかして普通の顔を作ろうとするけど駄目だ。ニヤニヤが止まらない。
『ル……』
「遅い」
名前を呼ぼうとしたら、耳元で低い声がした。あれ?怒ってる?
「一体どこに行っていた。この俺が、わざわざ隣国の王の誘いを丁重に断って、今日に間に合うように飛竜を飛ばして帰ってきたのは誰のためだと思っている」
おそるおそる顔を上げると、ムッとした表情の、懐かしい顔があった。相変わらずイケメンだ。やばい。にやける。
「聞いているのか?シュウヘイ」
『聞いてます』
一年前に数日過ごしただけの一般人の事をちゃんと覚えていてくれたんだな。人生の汚点として、記憶の彼方に忘れ去られていてもおかしくないのに。
『もう私の事は忘れたのかと思ってました』
「そんな訳ないだろう!」
ルーシェンは俺を羽交い締めにしたまま、部屋に引きずっていった。そのままベッドにポイッと投げ飛ばされたので、とりあえず土下座することにした。
『すみませんでした!』
「何を謝っている」
怒ってるんじゃないのか?
チラ見すると、ベッド脇に仁王立ちで腕組みしていて、眉間にシワがよっている。やっぱり怒ってるな。
『一年前に、ろくにお別れも言えずに帰ってすみませんでした!今日も待たせたみたいですみませんでした!』
「その通りだ!お前のせいで俺がどんな思いをしたと思っている!」
正解だった。
そういえば王子様はプライドが高かったよな。
「何を笑っている。それが人に謝る態度か」
相変わらず不機嫌そうなルーシェンの声。
『すみません。でも……』
「でも何だ」
『会えて嬉しいんです』
申し訳なさそうな顔を取り繕うのはもう無理だ。嬉しいんだから仕方ない。だってずっと会いたかったんだ。
俺の言葉にルーシェンは絶句した。でも耳が赤くなってる。前と同じ反応だ。
『ルーシェン、耳が赤いです』
「うるさい!誰のせいだと思っている」
飛びかかられてベッドの上を逃げ回ったけど、あっさり捕まって、何だか妙にくすぐったくてゲラゲラ笑ってしまった。
「……シュウヘイ」
笑いすぎたかな。
『ルーシェン……?』
「俺も会いたかった。とても」
その真剣な声に思わずドキリとして青い瞳を覗き込むと、今度はルーシェンの方がニヤリと笑って、そのまま口づけを落とされた。
驚いて羽交い締めにしてきた腕を掴む。
でもその時、日本にいた時には一度も光らなかった指輪がふわりと青い光を放った。左手がほんのり温かくなる。
「……」
この青い光、抱きしめられた腕の中の居心地、頬をくすぐった黒い髪……。どれをとっても覚えがある。
ルーシェンだ。
そう思うと嬉しくて顔がにやけた。どうにかして普通の顔を作ろうとするけど駄目だ。ニヤニヤが止まらない。
『ル……』
「遅い」
名前を呼ぼうとしたら、耳元で低い声がした。あれ?怒ってる?
「一体どこに行っていた。この俺が、わざわざ隣国の王の誘いを丁重に断って、今日に間に合うように飛竜を飛ばして帰ってきたのは誰のためだと思っている」
おそるおそる顔を上げると、ムッとした表情の、懐かしい顔があった。相変わらずイケメンだ。やばい。にやける。
「聞いているのか?シュウヘイ」
『聞いてます』
一年前に数日過ごしただけの一般人の事をちゃんと覚えていてくれたんだな。人生の汚点として、記憶の彼方に忘れ去られていてもおかしくないのに。
『もう私の事は忘れたのかと思ってました』
「そんな訳ないだろう!」
ルーシェンは俺を羽交い締めにしたまま、部屋に引きずっていった。そのままベッドにポイッと投げ飛ばされたので、とりあえず土下座することにした。
『すみませんでした!』
「何を謝っている」
怒ってるんじゃないのか?
チラ見すると、ベッド脇に仁王立ちで腕組みしていて、眉間にシワがよっている。やっぱり怒ってるな。
『一年前に、ろくにお別れも言えずに帰ってすみませんでした!今日も待たせたみたいですみませんでした!』
「その通りだ!お前のせいで俺がどんな思いをしたと思っている!」
正解だった。
そういえば王子様はプライドが高かったよな。
「何を笑っている。それが人に謝る態度か」
相変わらず不機嫌そうなルーシェンの声。
『すみません。でも……』
「でも何だ」
『会えて嬉しいんです』
申し訳なさそうな顔を取り繕うのはもう無理だ。嬉しいんだから仕方ない。だってずっと会いたかったんだ。
俺の言葉にルーシェンは絶句した。でも耳が赤くなってる。前と同じ反応だ。
『ルーシェン、耳が赤いです』
「うるさい!誰のせいだと思っている」
飛びかかられてベッドの上を逃げ回ったけど、あっさり捕まって、何だか妙にくすぐったくてゲラゲラ笑ってしまった。
「……シュウヘイ」
笑いすぎたかな。
『ルーシェン……?』
「俺も会いたかった。とても」
その真剣な声に思わずドキリとして青い瞳を覗き込むと、今度はルーシェンの方がニヤリと笑って、そのまま口づけを落とされた。
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