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一年ぶりの異世界
6 本来の距離
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『え……婚約?』
あのルーシェンが?
「だから噂よ。それをあなたに訊こうと思ったんじゃない」
「上司から何かそれらしい話聞いてないかい?」
『何も……』
如月は何も話してなかった。
それとも、俺が今日来たばかりだから話さなかっただけかな。一般人に話す事じゃないから黙ってるのかもしれない。俺は異世界人だし、あれから一年たっているんだもんな。俺の知らない間にいろいろ状況だって変わってるよな。
「なんだ~知らないのね」
「王宮で働いていても、やっぱり王族の情報は簡単には手に入らないのね」
「きっと下っ端なのよ」
……地味に傷つく事言うなぁ。
「私は王子様を信じるわ。ルーシェン王子様はみんなの王子様よ!」
「そうね!あんな女には渡さないわ」
「姫がどんな人かよく知らないけどね!」
ファンの団結力はどこの世界でも凄いな。
入っていけない空気だ。なんだか圧倒されるぞ。
「それじゃ、あたし達はここでよく集会を開いてるから、またいい情報があれば教えてちょうだい」
おばさんにそう言われて、ファンクラブの集団から離れた。
いい情報か……。
会おうと思っても会えないのに。
呪いの村にいた時間が特別だっただけで、本来ならこれが当然の距離なんだよな。王子様だから、政略結婚とかもあるだろうし。
分かってたけど、なんだか落ち込む。ルーシェン、今幸せなんだろうか。ちゃんと幸せならいいんだけどな。
噴水広場のベンチで、おばさんに貰ったパンもどきを口に入れ、ジュースを飲む。パンもどきは美味しいけど、ジュースなんだこれ!?野菜みたいな味がするぞ。残そうかと思ったけど、遠くでおばさんが見ているからそうもいかない。むせながらこってり野菜のジュースを飲み干した。給料もらえても、この野菜みたいなジュースは買わない事にしよう。
パンを食べおわった頃、団結していたファン達から歓声が上がった。
何事かとそっちを見ると、みんな空を見上げて手を振っている。
「あ、王子様だ!」
広場を歩いていた子供が叫ぶ。
俺も空を見上げると、十頭くらいの飛竜が上空を飛行してこっちに向かって来るのが見えた。
先頭に近い場所にいる一頭だけが白い色をしている。俺も乗せて貰った事があるルーシェンの飛竜だ。
いろいろな事を思い出して……何だかよく分からない感情がこみ上げてきた。
自分で思っていたよりずっと、俺はルーシェンに会いたかったらしい。小さくて姿はよく分からないけど、会えて嬉しい。
「おーい!ルーシェンー!!俺、やっと帰ってきたぞー!!」
遠すぎて聞こえないと分かっていたけど、広場にいたみんなと一緒に俺もその飛竜に向かって叫んだ。
あのルーシェンが?
「だから噂よ。それをあなたに訊こうと思ったんじゃない」
「上司から何かそれらしい話聞いてないかい?」
『何も……』
如月は何も話してなかった。
それとも、俺が今日来たばかりだから話さなかっただけかな。一般人に話す事じゃないから黙ってるのかもしれない。俺は異世界人だし、あれから一年たっているんだもんな。俺の知らない間にいろいろ状況だって変わってるよな。
「なんだ~知らないのね」
「王宮で働いていても、やっぱり王族の情報は簡単には手に入らないのね」
「きっと下っ端なのよ」
……地味に傷つく事言うなぁ。
「私は王子様を信じるわ。ルーシェン王子様はみんなの王子様よ!」
「そうね!あんな女には渡さないわ」
「姫がどんな人かよく知らないけどね!」
ファンの団結力はどこの世界でも凄いな。
入っていけない空気だ。なんだか圧倒されるぞ。
「それじゃ、あたし達はここでよく集会を開いてるから、またいい情報があれば教えてちょうだい」
おばさんにそう言われて、ファンクラブの集団から離れた。
いい情報か……。
会おうと思っても会えないのに。
呪いの村にいた時間が特別だっただけで、本来ならこれが当然の距離なんだよな。王子様だから、政略結婚とかもあるだろうし。
分かってたけど、なんだか落ち込む。ルーシェン、今幸せなんだろうか。ちゃんと幸せならいいんだけどな。
噴水広場のベンチで、おばさんに貰ったパンもどきを口に入れ、ジュースを飲む。パンもどきは美味しいけど、ジュースなんだこれ!?野菜みたいな味がするぞ。残そうかと思ったけど、遠くでおばさんが見ているからそうもいかない。むせながらこってり野菜のジュースを飲み干した。給料もらえても、この野菜みたいなジュースは買わない事にしよう。
パンを食べおわった頃、団結していたファン達から歓声が上がった。
何事かとそっちを見ると、みんな空を見上げて手を振っている。
「あ、王子様だ!」
広場を歩いていた子供が叫ぶ。
俺も空を見上げると、十頭くらいの飛竜が上空を飛行してこっちに向かって来るのが見えた。
先頭に近い場所にいる一頭だけが白い色をしている。俺も乗せて貰った事があるルーシェンの飛竜だ。
いろいろな事を思い出して……何だかよく分からない感情がこみ上げてきた。
自分で思っていたよりずっと、俺はルーシェンに会いたかったらしい。小さくて姿はよく分からないけど、会えて嬉しい。
「おーい!ルーシェンー!!俺、やっと帰ってきたぞー!!」
遠すぎて聞こえないと分かっていたけど、広場にいたみんなと一緒に俺もその飛竜に向かって叫んだ。
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