84 / 88
服従と抵抗
13 悩み
しおりを挟む
「お前の弟ってかわいいよな」
着替えの時一緒になったレオンハルトにいわれて、アルフレッドは耳を疑った。
「何だよ、急に」
「いや、この間学園祭の準備していて会ったんだ。疲れ切ってて、こっそり回復魔法かけてもらった」
「おい」
「そう怒るなよ」
魔法は消耗品だ。シンは五つ星の魔物に襲われ魔力を吸い取られている。貴重な回復魔法を重傷でもないレオンハルトに使ったと聞いて少しムッとした。だが、シンらしいとも思う。シンは昔から優しい性格をしている。兄の友人の頼みを断れなかったのだろう。
「その時に思ったんだ。優しいし、顔だってよく見ればかわいいし、お前が可愛がるのも、ユーリって奴が気に入ってるのも分かるなって」
「シンは昔からかわいい。お前らの見る目がないだけだ。でも、だからといってべたべたするな」
「何でだよ。弟が誰と付き合おうと本人の自由だろ」
レオンハルトはそこまで言って口をつぐんだ。アルフレッドの機嫌が悪くなったのがわかったからだ。この間カフェでユーリとシンが手を繋いでいるところを見てから、アルフレッドはずっと機嫌が悪い。ユーリとシンが付き合っているという噂も流れていて、機嫌の悪さに拍車をかけている。
「そんなに気になるなら本人に聞いてみろよ」
「いや……」
あの時ユーリはシンの頬にキスをしていた。ページ交換というものもしていたし、シンがユーリをどう思っているのかは聞かなくてもなんとなく察しがつく。だが、アルフレッドにはそれをはっきりと聞く勇気はなかった。いくら学年一強い騎士候補生でも、精神面までは強くなれないようだ。
学年が上がれば、大半の魔法使いは進級できずに落第すると聞いていたが、いっそシンが落第して学園を去り、ずっとアルフレッドの家で暮らせばいいのにとすら思う。そんなことを思う自分は最低だが、このままユーリとシンが付き合い続けることだけは阻止出来る。
アルフレッドの悩みはもう一つあった。最近やたらと王族や貴族の偉い人々が手紙を送ってきたり、面会を求めてくる。みんなアルフレッドを自分の家の騎士として雇いたいのだろう。在学中に優秀な騎士候補生を勧誘するのはよくある話だ。その中に、王家のサーシャ姫の従者からの手紙が何通か届いている。
(サーシャ姫か)
一度王宮で会っただけなのに、アルフレッドのことを気に入ったらしい。アルフレッドの方は正直顔もろくに覚えていないというのに。
『貴方の姿が目に焼き付いています。またお会いすることはできませんか?』
手紙にはそう書かれていて、他のどんな貴族の勧誘よりアルフレッドの悩みの種になっていた。アルフレッドはシン以外に誓いをたてるつもりはなかったが、それを家族にも友人にも伝える事が出来なかった。卒業すれば嫌でも誰かの騎士にならなければならない。その時までにどうすればいいのか、アルフレッドにはまだ答えを見つけられないでいた。
着替えの時一緒になったレオンハルトにいわれて、アルフレッドは耳を疑った。
「何だよ、急に」
「いや、この間学園祭の準備していて会ったんだ。疲れ切ってて、こっそり回復魔法かけてもらった」
「おい」
「そう怒るなよ」
魔法は消耗品だ。シンは五つ星の魔物に襲われ魔力を吸い取られている。貴重な回復魔法を重傷でもないレオンハルトに使ったと聞いて少しムッとした。だが、シンらしいとも思う。シンは昔から優しい性格をしている。兄の友人の頼みを断れなかったのだろう。
「その時に思ったんだ。優しいし、顔だってよく見ればかわいいし、お前が可愛がるのも、ユーリって奴が気に入ってるのも分かるなって」
「シンは昔からかわいい。お前らの見る目がないだけだ。でも、だからといってべたべたするな」
「何でだよ。弟が誰と付き合おうと本人の自由だろ」
レオンハルトはそこまで言って口をつぐんだ。アルフレッドの機嫌が悪くなったのがわかったからだ。この間カフェでユーリとシンが手を繋いでいるところを見てから、アルフレッドはずっと機嫌が悪い。ユーリとシンが付き合っているという噂も流れていて、機嫌の悪さに拍車をかけている。
「そんなに気になるなら本人に聞いてみろよ」
「いや……」
あの時ユーリはシンの頬にキスをしていた。ページ交換というものもしていたし、シンがユーリをどう思っているのかは聞かなくてもなんとなく察しがつく。だが、アルフレッドにはそれをはっきりと聞く勇気はなかった。いくら学年一強い騎士候補生でも、精神面までは強くなれないようだ。
学年が上がれば、大半の魔法使いは進級できずに落第すると聞いていたが、いっそシンが落第して学園を去り、ずっとアルフレッドの家で暮らせばいいのにとすら思う。そんなことを思う自分は最低だが、このままユーリとシンが付き合い続けることだけは阻止出来る。
アルフレッドの悩みはもう一つあった。最近やたらと王族や貴族の偉い人々が手紙を送ってきたり、面会を求めてくる。みんなアルフレッドを自分の家の騎士として雇いたいのだろう。在学中に優秀な騎士候補生を勧誘するのはよくある話だ。その中に、王家のサーシャ姫の従者からの手紙が何通か届いている。
(サーシャ姫か)
一度王宮で会っただけなのに、アルフレッドのことを気に入ったらしい。アルフレッドの方は正直顔もろくに覚えていないというのに。
『貴方の姿が目に焼き付いています。またお会いすることはできませんか?』
手紙にはそう書かれていて、他のどんな貴族の勧誘よりアルフレッドの悩みの種になっていた。アルフレッドはシン以外に誓いをたてるつもりはなかったが、それを家族にも友人にも伝える事が出来なかった。卒業すれば嫌でも誰かの騎士にならなければならない。その時までにどうすればいいのか、アルフレッドにはまだ答えを見つけられないでいた。
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~
カニ蒲鉾
BL
『ラウ…かわいい僕のラウル…この身体の事は絶対に知られてはいけない僕とラウル二人だけの秘密』
『は、い…誰にも――』
この国には魔力を持つ男が通うことを義務付けられた全寮制魔法学校が存在する。そこに新入生として入学したラウルは離れ離れになっていた大好きで尊敬する義兄リカルドと再び一緒の空間で生活できることだけを楽しみにドキドキワクワク胸を膨らませていた。そんなラウルに待つ、新たな出会いと自分の身体そして出生の秘密とは――
圧倒的光の元気っ子ラウルに、性格真反対のイケメン二人が溺愛執着する青春魔法学園ファンタジー物語
(受)ラウル・ラポワント《1年生》
リカ様大好き元気っ子、圧倒的光
(攻)リカルド・ラポワント《3年生》
優しいお義兄様、溺愛隠れ執着系、策略家
(攻)アルフレッド・プルースト《3年生》
ツンデレ俺様、素行不良な学年1位
(友)レオンハルト・プルースト《1年生》
爽やかイケメン、ラウルの初友達、アルの従兄弟

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる