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実技試験
7 悲鳴
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***
「本当にいいのかい……?」
シンは暗い夢の中にいた。
聞いているのはジオ先生だ。
だが、いつもの優しそうな先生とは違って、その表情は苦痛に満ちていた。
「いまさらそんな事を聞いてどうする。どうせ選択肢は三つしかないんだ。そしてこの者には選ぶ権利は無い」
冷たく言い放ったのは学園の理事長だ。長い白銀の髪は暗い視界の中でもよく目立った。
「まだ子供よ」
隣にセラさんがいる。今と違って分厚い眼鏡をかけているけれど、シンにはすぐに分かった。
「君にはこの化け物が子供に見えるのか」
化け物というのは、どうやら自分の事をさしているらしい。シンの身体は相変わらず動かなかったが、見れば魔法陣の中央に座らされていて、足枷の他に身体にまとわりつく魔法の呪文が見えた。まるで蜘蛛の巣の中に座っているみたいだ。
「選択肢は三つだ。一つ目はここで殺す。二つ目は拘束して魔物研究所に送る。三つ目は魔力と記憶を奪い監禁する。それ以外にはない」
理事長が続けた。
「殺せば王宮や魔物研究所から苦情が来るだろうから、できれば避けたいところだが、そのまま生かしておくには危険だ」
「研究所に送るなんて……酷すぎるわ」
「三つ目の選択肢でいいだろう」
知っている声がして、誰かが歩いてきた。
その姿を見て、シンは衝撃を受けた。シンの父親だ。後ろにいるのは兄アルフレッドの先生をしていたジェイク。
「監禁場所は騎士団で用意する。ユーシス殿も皆もそれでいいか」
「ダレンが言うならそれに従うとしよう。では、魔力と記憶を封印させてもらうよ」
理事長はそう言うと、魔法陣の中に座っていたシンに近づき、額に手を置いた。
***
「うわぁぁぁ‼︎」
気がついた時、シンは悲鳴を上げていた。
魔力を封印される時の割れるような頭の痛みを思い出していた。
腕をバタバタさせ、必死で頭を押さえる。獏の鼻に手が当たり、一気に痛みが引いた。
急に視界が開けたような気がした。プツリと何かが切れたような音がして、シンは自分が解放された事を知った。獏からではなく、理事長の魔法から。
蜘蛛の巣のような魔法が、シンの全身に絡みついて額の上の一点に収束していたのをはじめて知った。それはあっという間に獏に吸収される。封印の魔法が無くなり、あふれ出る魔力が大量に獏に吸収されていった。
「あああ……」
悲鳴が止められずに喉からこぼれ、涙がいくつも両目を伝った。
父さんは、本当の父さんじゃ無かった。母さんも、兄さんも……。
僕を監禁していただけなんだ。理事長に命令されて。
その事実がシンの心をボロボロに傷つけ、涙が止められない。
ジオ先生も、セラさんも僕の事を知っていた。でも僕は化け物なんかじゃない……。
魔力を封印されていたのに、兄のため家族のために魔法使いになりたいと必死に勉強していたなんて。
「兄さん……」
だが、突如シンの身体の上に乗っていた獏が叫び声を上げ、身体を震わせる。もともと大きかった身体はさらに大きくなり、メキメキと音がして黒い翼と長い尾が出現し始めた。
獏の首は長くなり、太い角と牙を持つ、獏とは似ても似つかない姿に変貌しようとしていた。それはまさに化け物と形容するに相応しい姿だった。
「本当にいいのかい……?」
シンは暗い夢の中にいた。
聞いているのはジオ先生だ。
だが、いつもの優しそうな先生とは違って、その表情は苦痛に満ちていた。
「いまさらそんな事を聞いてどうする。どうせ選択肢は三つしかないんだ。そしてこの者には選ぶ権利は無い」
冷たく言い放ったのは学園の理事長だ。長い白銀の髪は暗い視界の中でもよく目立った。
「まだ子供よ」
隣にセラさんがいる。今と違って分厚い眼鏡をかけているけれど、シンにはすぐに分かった。
「君にはこの化け物が子供に見えるのか」
化け物というのは、どうやら自分の事をさしているらしい。シンの身体は相変わらず動かなかったが、見れば魔法陣の中央に座らされていて、足枷の他に身体にまとわりつく魔法の呪文が見えた。まるで蜘蛛の巣の中に座っているみたいだ。
「選択肢は三つだ。一つ目はここで殺す。二つ目は拘束して魔物研究所に送る。三つ目は魔力と記憶を奪い監禁する。それ以外にはない」
理事長が続けた。
「殺せば王宮や魔物研究所から苦情が来るだろうから、できれば避けたいところだが、そのまま生かしておくには危険だ」
「研究所に送るなんて……酷すぎるわ」
「三つ目の選択肢でいいだろう」
知っている声がして、誰かが歩いてきた。
その姿を見て、シンは衝撃を受けた。シンの父親だ。後ろにいるのは兄アルフレッドの先生をしていたジェイク。
「監禁場所は騎士団で用意する。ユーシス殿も皆もそれでいいか」
「ダレンが言うならそれに従うとしよう。では、魔力と記憶を封印させてもらうよ」
理事長はそう言うと、魔法陣の中に座っていたシンに近づき、額に手を置いた。
***
「うわぁぁぁ‼︎」
気がついた時、シンは悲鳴を上げていた。
魔力を封印される時の割れるような頭の痛みを思い出していた。
腕をバタバタさせ、必死で頭を押さえる。獏の鼻に手が当たり、一気に痛みが引いた。
急に視界が開けたような気がした。プツリと何かが切れたような音がして、シンは自分が解放された事を知った。獏からではなく、理事長の魔法から。
蜘蛛の巣のような魔法が、シンの全身に絡みついて額の上の一点に収束していたのをはじめて知った。それはあっという間に獏に吸収される。封印の魔法が無くなり、あふれ出る魔力が大量に獏に吸収されていった。
「あああ……」
悲鳴が止められずに喉からこぼれ、涙がいくつも両目を伝った。
父さんは、本当の父さんじゃ無かった。母さんも、兄さんも……。
僕を監禁していただけなんだ。理事長に命令されて。
その事実がシンの心をボロボロに傷つけ、涙が止められない。
ジオ先生も、セラさんも僕の事を知っていた。でも僕は化け物なんかじゃない……。
魔力を封印されていたのに、兄のため家族のために魔法使いになりたいと必死に勉強していたなんて。
「兄さん……」
だが、突如シンの身体の上に乗っていた獏が叫び声を上げ、身体を震わせる。もともと大きかった身体はさらに大きくなり、メキメキと音がして黒い翼と長い尾が出現し始めた。
獏の首は長くなり、太い角と牙を持つ、獏とは似ても似つかない姿に変貌しようとしていた。それはまさに化け物と形容するに相応しい姿だった。
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