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実技試験
1 チーム分け
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数日後にせまった実技試験に向けて、チームのメンバーが発表される日が来た。
魔法使い候補生達は、合同の敷地内にある屋内闘技場にゾロゾロと歩いていく。実技試験はどの学年でも行われるが、上級生達はもう終えていて、今回は一年生だけだ。シンとハンスもナタリー達と一緒に闘技場に向かっていた。
「全チームの名前が貼り出されてるんですって。緊張するわよね。イケメン騎士様と同じチームになったら恋が生まれるかも」
はしゃいでいるナタリーを横目にハンスは拗ねた表情をしている。
「試験に出会いなんて求めるなよ」
「ハンスもモテたりして。騎士って基本的に魔法使いが好きみたいだよ。先輩達の話では実技試験でたくさんカップルが成立するんですって。それもそうよね。危険な任務を一緒にこなすんだから」
「オイラはモテなくてもいいんだよ。試験でいい成績取らなきゃいけないんだから」
「嘘ばっかり。カッコいい髪型とか研究してるくせに」
それは多分ナタリーに良いところ見せようとしてるんだと思うけど……と思ったがシンは口に出さずに、二人のやりとりを眺めていた。
シンは結局Aクラスの魔法使いに魔法書をボロボロにされた事も、魔法書が黒かった事も、二人には何も話さなかった。
今シンが持っている魔法書は、最初と同じ赤い色だ。それはジオ先生が目眩しの為に赤色のカバーをつけてくれたためで、破損したページも数ページしかなかったので、誰にも気付かれなかった。無くした一ページは結局見つからずじまいだ。
あの出来事はシンの心に重くのしかかっていたが、シンは気持ちを切り替えて、実技試験で高い得点をとることを目標にしていた。
この試験で高い点を取れば、来年にはもっと順位をあげる事ができるし、兄と同じチームになれるチャンスも巡ってくる。そうすれば誰もシンをいじめなくなるだろう。
屋内闘技場に到着すると、すでにAクラスやBクラスの生徒は掲示板を見て、チーム別に移動している所だった。シンも真ん中あたりの掲示板に自分の名前と番号を探す。
ようやく見つけたシンのチームに知り合いの名前は無かったが、Cクラスの騎士一人とDクラスの騎士二人、それにEクラスの魔法使いで構成されていた。
「シン、どうだった? オイラのチーム、なんかヤバいんだけど」
「ヤバいって?」
「EとかFとかそんな奴らばっかり。これじゃたいした成果出せそうにないよ」
「大丈夫だよ、ハンス。実技試験では怪我をしないようにして、小物でもたくさん魔物を退治すればいいんだから」
「そうだけどさ……」
ぐちぐち言うハンスを慰めていると、ナタリーがはしゃぎながら戻って来た。
「私のチーム、Bクラスの騎士様がいるの。順位も52番だって。仲良くならなくちゃ」
そんなナタリーを見て、ハンスはますます重いため息をついた。
兄はどのチームなのだろうと、シンが成績上位者の掲示板に近づくと、そのチームは一番最初に掲示されていた。
兄と、それからユーリがいる。
分かりやすい事に、そのチームは騎士の上位三人と魔法使い上位二名で構成されていた。それ以外のチームの順位は比較的バラバラなのに、このチームだけは毎年決まっているというのは本当らしい。
シンはユーリが心の底から羨ましかった。魔法使いとしての実力も高く、将来有望でいつも兄のそばにいる。入学試験の時の実力から考えて、自分がユーリのようになれるとはとても思えなかった。
魔法使い候補生達は、合同の敷地内にある屋内闘技場にゾロゾロと歩いていく。実技試験はどの学年でも行われるが、上級生達はもう終えていて、今回は一年生だけだ。シンとハンスもナタリー達と一緒に闘技場に向かっていた。
「全チームの名前が貼り出されてるんですって。緊張するわよね。イケメン騎士様と同じチームになったら恋が生まれるかも」
はしゃいでいるナタリーを横目にハンスは拗ねた表情をしている。
「試験に出会いなんて求めるなよ」
「ハンスもモテたりして。騎士って基本的に魔法使いが好きみたいだよ。先輩達の話では実技試験でたくさんカップルが成立するんですって。それもそうよね。危険な任務を一緒にこなすんだから」
「オイラはモテなくてもいいんだよ。試験でいい成績取らなきゃいけないんだから」
「嘘ばっかり。カッコいい髪型とか研究してるくせに」
それは多分ナタリーに良いところ見せようとしてるんだと思うけど……と思ったがシンは口に出さずに、二人のやりとりを眺めていた。
シンは結局Aクラスの魔法使いに魔法書をボロボロにされた事も、魔法書が黒かった事も、二人には何も話さなかった。
今シンが持っている魔法書は、最初と同じ赤い色だ。それはジオ先生が目眩しの為に赤色のカバーをつけてくれたためで、破損したページも数ページしかなかったので、誰にも気付かれなかった。無くした一ページは結局見つからずじまいだ。
あの出来事はシンの心に重くのしかかっていたが、シンは気持ちを切り替えて、実技試験で高い得点をとることを目標にしていた。
この試験で高い点を取れば、来年にはもっと順位をあげる事ができるし、兄と同じチームになれるチャンスも巡ってくる。そうすれば誰もシンをいじめなくなるだろう。
屋内闘技場に到着すると、すでにAクラスやBクラスの生徒は掲示板を見て、チーム別に移動している所だった。シンも真ん中あたりの掲示板に自分の名前と番号を探す。
ようやく見つけたシンのチームに知り合いの名前は無かったが、Cクラスの騎士一人とDクラスの騎士二人、それにEクラスの魔法使いで構成されていた。
「シン、どうだった? オイラのチーム、なんかヤバいんだけど」
「ヤバいって?」
「EとかFとかそんな奴らばっかり。これじゃたいした成果出せそうにないよ」
「大丈夫だよ、ハンス。実技試験では怪我をしないようにして、小物でもたくさん魔物を退治すればいいんだから」
「そうだけどさ……」
ぐちぐち言うハンスを慰めていると、ナタリーがはしゃぎながら戻って来た。
「私のチーム、Bクラスの騎士様がいるの。順位も52番だって。仲良くならなくちゃ」
そんなナタリーを見て、ハンスはますます重いため息をついた。
兄はどのチームなのだろうと、シンが成績上位者の掲示板に近づくと、そのチームは一番最初に掲示されていた。
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分かりやすい事に、そのチームは騎士の上位三人と魔法使い上位二名で構成されていた。それ以外のチームの順位は比較的バラバラなのに、このチームだけは毎年決まっているというのは本当らしい。
シンはユーリが心の底から羨ましかった。魔法使いとしての実力も高く、将来有望でいつも兄のそばにいる。入学試験の時の実力から考えて、自分がユーリのようになれるとはとても思えなかった。
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