赤い髪の騎士と黒い魔法使い

カム

文字の大きさ
上 下
38 / 87
魔法書の秘密

3 兄ばなれ

しおりを挟む
「それじゃあね、兄さん。怪我しないでね」

 手を振るシンと別れて、アルフレッドはバンブーカフェを後にした。
 図書館を出た途端、よく知った男に飛びつかれる。

「よっ、アルフ!見たぞお前、あれが噂の弟か」
「騒ぐな。まとわりつくな」

 飛びついてきたのは金髪爆発ヘアーの男、幼なじみのレオンハルトだ。
そもそもアルフレッドに気軽に飛びついてくる男は彼くらいしかいない。

 レオンハルトはアルフレッドと同じAクラスで、名前の横のナンバーは25。この順位に関して、アルフレッドは入学後からずっと疑問に思っていた。そして何度も

「お前が25なんて信じられないな」
「何でだよ」
「お前みたいな馬鹿が、25って。親の権力で順位を操作しただろ」
「知らねーよ。でも親父ならやりかねないな。アハハ。結局、騎士に頭の良さは必要ないって事なんじゃねえの?」
「そう……なのかもな」
という会話を交わしていた。

「お前、何でここにいるんだよ」
「いや、アルフが大好き~~な弟の顔が一度見たくてさ。でも全然似てないんだなー。髪の色、真っ黒だぜ? お前の赤も強烈だけど、黒もすげえな。魔法に失敗したのか?」

 レオンハルトが言うと、アルフレッドが蹴りを入れてきたので、咄嗟にかわす。

「何怒ってんだよ。怖っ」
「お前にだって妹がいるから分かるだろう。あのませた妹を侮辱されたらキレるだろ?」

 アルフレッドの言う通り、レオンハルトには妹がいた。口が悪くてませた妹だが、年が離れているためレオンハルト含め家族全員で溺愛している。

「確かに……そう言われると嫌だな。俺が悪かったよ、アルフ」

 素直に謝ると、アルフレッドはため息をついた。

「弟が……会う回数を減らしてもいいと言ってきた。兄の俺が邪魔なんだろうか」
「え? もしかしてショックなのか?」
「シンは今まで俺のことが一番好きで、どこにいくにもついてきてたのに、魔法使いの友達もできて楽しそうにしてた。もう俺は必要ないんじゃないかと思うと寂しいんだよ」

 いつでも自信に溢れている学年一位の男が、弟の兄離れで落ち込んでいる姿がおかしくてレオンハルトは必死に笑いをこらえた。

「元気出せって。お前が忙しいから気を使ってんじゃないのか? 友達できたんなら良かったじゃないか」

 慰めてはみたけど、アルフレッドにはあまり響いてなさそうだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

わるいむし

おととななな
BL
新汰は一流の目を持った宝石鑑定士である兄の奏汰のことをとても尊敬している。 しかし、完璧な兄には唯一の欠点があった。 「恋人ができたんだ」 恋多き男の兄が懲りずに連れてきた新しい恋人を新汰はいつものように排除しようとするが…

愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる

すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。 第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」 一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。 2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。 第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」 獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。 第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」 幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。 だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。 獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。

あの夜の過ちから

誤魔化
BL
 とある仮面舞踏会の夜。  お互いの正体を知らぬままに熱い一夜を過ごした皇子と側近の2人。  翌朝に側近の男はその衝撃の事実に気づき、証拠隠滅を図ろうとするが、一方で気づかない殿下は「惚れた」と言って当の本人に正体の分からない”あの夜の人”を探すように頼む。  絶対にバレたくない側近(色男) VS 惚れた仮面の男を見つけ出したい殿下(色男)のBL。側近の男、一応転生者です。  側近「どうしてこうなったーッ!」

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...