立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0096.乱入者

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「素晴らしい。だが、敵以外に当てないように気を付けてくれ。」
「ガッテンでい。旦那も頑張れ。」
 火の精が黄金の仮面の周囲の動く鎧を押しやってくれたので、健は邪魔されずに本命を直接攻撃できる。魔法の短剣を握り締めて光の刃を伸ばして斬りつけたが、ガキンという音がして弾き返された。黄金の仮面は何事もないかのように詠唱を続けている。
「何かの防御壁があるな。」
 黄金の仮面のいる床には魔法陣のような模様が描かれている。だが、さっき確か動く鎧が魔法陣の中を通っていたはず。魔法陣の中に入れば攻撃できるかもしれない。健は黄金の仮面に向かって猛ダッシュする。
「邪魔するよ。」
 そう言って、どこからともなく健の前に黒い仮面が現れた。
「む、お前は洞窟にいる時に襲ってきた奴だな。」
「覚えてもらっているとは光栄だね。」
「やはり、お前も奴の仲間だったのか。」
「いやいや、勘違いされると困るな。俺が何でここにいるか教えてあげよう。君にやられた後、その分たっぷりと時間をかけてあの女を何度も何度も可愛がってやったんだ。その間もずっとムーラン様ムーラン様とうるさくてね。」
「また、くだらない戯言か。」
「まあ聞きたまえ。女にはしっかりと楽しませてもらったんで、今度はムーラン様とやらに興味が湧いてね。興味本意で来て見たら、何と君がいるじゃないか。君の姿を見たら、この右手がうずいちゃってね。」
 黒い仮面はマントの下から手袋をしている右手を出して、わざわざ手袋を外した。右手は機械仕掛けになっている。右手を動かすと機械の軋む音がする。
「どうだい、見事だろ。我ながら良い出来だと思うんだ。前とまったく遜色ない動きだよ。」
 そう言うと、黒い仮面は右手で空中を掴む仕草をしてから、掴んだ何かを健に投げつけてきた。健に向かって飛んできたのは血だらけの斧だった。回転しながら健に向かって飛んでくる重量感のある斧は、健に届く前に大きな黒い壁に当たって弾け飛んだ。いつの間にか、健の前には黒い毛むくじゃらが立っている。黒い毛むくじゃらの視線は見えないが、黒い仮面を睨みつけているのがはっきりと分かる。
「また、お前さんかい。今は相手をしてあげる暇はないんだがね。」
 黒い仮面は、大袈裟にやれやれという仕草をしている。怒り狂う黒い毛むくじゃらは両手を振り上げて黒い仮面に襲いかかる。黒い毛むくじゃらが、黒い仮面に向けて両手を振り下ろして叩きつけると床は激しい衝撃で揺れた。黒い仮面は黒い毛むくじゃらの斜め上の空中に浮かんで笑いながら声をかけてきた。
「相変わらず、すごい力だね。」
 健は超感覚を使って黒い仮面のトリックを暴こうと試みるが、この部屋では超感覚が完全に封じられていて使えないようだ。それならばと、健は魔法の短剣の光の刃を伸ばして空中にいる黒い仮面に斬りつけた。黒い仮面は余裕を持ってヒラリと身を躱す。
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